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統計Today No.121
「統計ダッシュボードの提供開始」〜統計データを身近に
総務省統計局統計利用推進課長 柿原 謙一郎
統計データを手に入れる方法
皆さんは、統計データを見てみたい、手に入れたいと思ったときに、最初にアクセスするのはどんなところですか。
コンピュータが登場したおよそ70年前では、統計データは、ほとんどが統計報告書といった紙媒体に記録されており、図書館などで統計報告書を閲覧して目的のデータを探すという方法しかありませんでした。
その後のコンピュータの発達などにより、統計データの電算処理が急速に進み、フロッピーディスクやCD-ROM、DVDなどといったいわゆる電磁的記録媒体に記録された統計データをコンピュータの画面を通して見るという方法も広まっていきました。
さらに、今から約20年前から世界中に急速に広まっていったインターネットの登場により、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末の画面から、様々な統計データを閲覧したり、入手したりする方法が一般的になってきました。一方で、統計データを作成する機関が多数あり、それぞれの機関が様々な種類の統計データをそれぞれのウェブサイトで提供するようになってしまい、利用者が必要な統計データを、利用者自身が探しにくくなるといった状況も生まれてきました。
政府においては、平成20年に、それまで各府省がそれぞれのウェブサイトで提供していた統計データを一元的に提供するポータルサイトを開設しました。「政府統計の総合窓口」(e-Stat)と呼ばれるこのサイトにアクセスすれば、政府統計の統計データを利用することが可能となりました。一方で、このサイトは、統計調査ごとに利用することが基本的な構造となっており、統計データを利用するためには、統計データの出典となる統計調査の名称やその調査事項についてのある程度の知識が必要となっていました。
このような状況の中、統計局では、より多くの方に統計データを身近な形で利用してもらえるよう、「統計ダッシュボード」を開発し、平成29年5月から運用を開始しました。
統計ダッシュボードとは
自動車や飛行機の運転席には、その運転に必要な速度メーターなどの様々な計器が一覧できるように配置されており、「ダッシュボード」(計器盤)と呼ばれています。
統計ダッシュボードとは、主要な統計データの最新の情報を一覧できるようにしたものです。
図 統計ダッシュボードのトップ画面
統計ダッシュボードの特徴
統計ダッシュボードには三つの特徴があります。
一つ目は、各府省等が作成する主要な統計のデータについて、グラフ等により、視覚的に分かりやすく提供するという点です。特に、よく使われる統計データについては、基本的なグラフをあらかじめ作成し、提供しております。なお、現在利用可能な統計データについては、表のとおりとなっています。
二つ目は、統計データについて、時系列や地域別に配慮しているという点です。統計データごとに過去から最新のデータまで用意しているので、経年変化がすぐに分かります。また、地域別の結果が公表されるものについては、全国値のみならず、都道府県別、市町村別といった日本国内の地域別のデータや各国のデータを用意しており、地域比較や各国比較がすぐにできます。
三つ目は、簡単な操作で利用可能という点です。グラフを閲覧するために必要な操作は、見たい統計データと月次、年などの周期、都道府県等の地域を選択するといった、ごく簡単なものです。また、統計調査や調査事項といった統計の知識を特別お持ちでない方であっても、直感的な操作で必要な統計データにたどりつけるよう工夫をしております。
分野 | 統計データ | グラフタイトル |
---|---|---|
国土・気象 | 総面積、森林面積、自然公園面積 など | − |
人口・世帯 | 総人口、出生数、出入国者数 など | 人口、出生・死亡、出入国者、世帯数、一般世帯数 |
労働・賃金 | 就業者数、完全失業率、現金給与総額 など | 労働者、正規・非正規の職員・従業員、失業率と求人倍率、給与、総実労働時間、賃金指数、過去1年間の就業異動 |
農林水産業 | 農業産出額、農家数、耕地面積、漁獲量 など | − |
鉱工業 | 鉱工業生産指数、製造工業稼働率指数、工業用水量 など | 鉱工業、製造工業生産能力指数 |
商業・サービス業 | サービス産業売上高、小売業販売額 など | 3次産業、サービス産業の売上高、サービス産業の事業従事者数、小売業販売額 |
企業・家計・経済 | 企業倒産件数、消費者物価指数、消費支出、国内総生産 など | 機械受注、企業倒産、個人企業、金融市場、物価、為替相場、 マネーストック、国内企業物価と輸出入物価、消費者物価指数、消費者物価地域差指数、景気動向、消費支出、家計消費指数、 世帯収入、平均消費性向、国内総生産(円表示)、国内総生産(米ドル表示)、GDPデフレーター、県民経済計算、事業所数、従業者数、貯蓄・負債、耐久消費財所有数量 |
住宅・土地・建設 | 新設住宅着工戸数、公共工事受注額、住宅数、1住宅当たり延べ面積 など | 住宅着工、工事受注額、住宅数 |
エネルギー・水 | 電灯使用電力量、ガソリン販売量、上水道給水人口 など | − |
運輸・観光 | 新車販売台数、輸送人員、道路平均交通量、延べ宿泊者数、客室稼働率 など | 新車販売台数、延べ宿泊者数 |
情報通信・科学技術 | 電話加入数、テレビ放送受信契約数 など | − |
教育・文化・スポーツ・生活 | 小学校数、幼稚園在園者数、重要文化財指定件数、スポーツ行動者率、睡眠の平均時間 など | 学校数、生徒数、未就学児施設、生活時間 |
行財政 | 行政投資総額、納税義務者数、衆議院議員選挙投票率 など | − |
司法・安全・環境 | 弁護士数、刑法犯認知件数、救急出動件数、ごみ総排出量 など | − |
社会保障・衛生 | 後期高齢者医療費、介護老人福祉施設数、病院数、医療施設、医師数 など | 医療施設数、医療従事者数 |
国際 | 経常収支、金融収支 など | 国際収支(円表示)、国際収支(米ドル表示) |
その他 | 雇用力、稼ぐ力 | 地域の産業・雇用創造チャート |
今後に向けて
統計ダッシュボードについては、様々な場面での活用が想定されます。例えば、地方公共団体においては、地方公共団体の現状や時系列変化の分析、全国や他の地域の状況把握と比較が容易になります。民間企業においては、統計データをビジネスや地域の視点から活用し、新たなアイデアを創出することが可能となります。教育現場においては、統計データを用いた分析事例の紹介や演習等、より実践的な授業を実施するということも考えられます。
今後、統計ダッシュボードで提供するデータの拡充を図り、利便性を更に向上させていきたいと考えておりますので、利用者の皆様からの御意見をお待ちしております。頂いた御意見を参考にしながら、より良いシステム作りを進めていく予定です。
(平成29年5月26日)