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統計Today No.96
ネットショッピングの実態を探る!!
〜家計消費状況調査 調査開始から3か月間の結果より〜
総務省統計局統計調査部消費統計課調査官 佐藤 朋彦
はじめに
インターネットを通じた財(商品)やサービスの購入(以下「ネットショッピング」という。)が急速に普及しており、「統計Today No.76」(http://www.stat.go.jp/info/today/076.htm)でも紹介しましたように、その額は毎年増加し、ネットショッピングを利用した世帯の割合も大幅に上昇(注1)しています。
このような状況を踏まえ、ネットショッピングの実態を正確かつ詳細に把握するため、総務省統計局では家計調査を補完する「家計消費状況調査」において、今年(2015年)の1月からネットショッピングの内訳についての調査を開始(注2)しました。
今回設定した内訳は22項目に分かれており、贈答品の購入、デジタルコンテンツのダウンロード、ホテルや航空券のネット予約など、従前は回答者の意識に入りにくかった財(商品)やサービスの購入も内訳項目として区分し、把握できるようにしています。
そこで、2015年1月から3月までの3か月間の結果を基に、世帯主の年齢階級別に見た1か月間のネットショッピングの支出総額とその内訳の特徴を紹介いたします。
(注1) 家計消費状況調査の結果でみると、二人以上の世帯においてネットショッピングをした世帯の割合は、2002年はわずか5.3%だったが、2014年は25.1%と約5倍になっており、直近では4世帯に1世帯が利用している。
(注2) 家計消費状況調査では調査開始以降2014年12月までは、ネットショッピングの1世帯当たり平均の総額のみを調査してきた。なお、ネットショッピングについては2015年1月に調査内容及び調査票を変更した。これにより、それまでは調査世帯の回答者の意識に入りにくかったものも含めインターネットによる購入について広く把握できるようになったため、ネットショッピングの1世帯当たり平均の総額については2014年12月以前の結果と時系列で比較する際は注意が必要である。
インターネットを利用した支出総額
最初に二人以上の世帯において、世帯主の年齢階級別に1か月間のネットショッピング額を見ると、40歳未満(12,288円)、40歳代(11,662円)、50歳代(12,729円)は12,000円前後となっています。一方、高齢層は60歳代が7,565円、70歳以上が4,114円と60歳未満の世帯に比べて少なくなっています。(表1)
この違いの主たる要因は、ネットショッピングを利用した世帯の割合の違いによるもので、同割合は40歳未満が46.2%と最も高く、年齢階級が高くなるに従って低下しています。70歳以上でみるとその割合は11.4%と全体の1割程度にすぎませんが、ネットショッピングを利用した世帯に限定した1か月間のネットショッピング額では、70歳以上が35,695円と最も多くなっています。(表1、図1)
表1 世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間のインターネットを利用した支出(二人以上の世帯)
図1 世帯主の年齢階級別インターネットを通じて注文をした世帯当たり
1か月間のインターネットを利用した支出総額(二人以上の世帯)
インターネットを利用した支出の主な内訳
二人以上の世帯全体におけるネットショッピングの内訳をみると、「旅行関係費」の支出が20.0%と最も高く、次いで「食料」が14.4%、「衣類・履物」が11.3%、「家電・家具」が10.6%となっています。(表2)
これを世帯主の年齢階級別に比較してみると、いくつかの興味深い特徴が見えてきます。ここでは、それらのうち「旅行関係費」、「衣類・履物」、「医薬品・健康食品」の3つについて、紹介しましょう。
表2 世帯主の年齢階級別インターネットを利用した支出の内訳構成比(二人以上の世帯)
(1)リタイア前後の60歳代で高い「旅行関係費」の割合
ネットショッピングに占める旅行関係費の構成比(二人以上の世帯全体の平均は20.0%)を見ると、60歳代が26.4%と最も高く、次いで50歳代が19.4%、70歳以上が19.0%と、世帯主が職場から一度リタイアする前後で旅行関係費の割合が高くなり、それがネットショッピングにも表れていることが分かります。(図2-1)
なお、インターネット上での決済か否かで分けてみると、旅行関係費におけるインターネット上での決済割合(二人以上の世帯全体の平均は 66.5%[=13.3/20.0])は、50歳代が71.4%と最も高くなっています。
図2-1 世帯主の年齢階級別インターネットを利用した支出総額に占める「旅行関係費」の割合(二人以上の世帯)
(2)40歳未満の若年層で高い「衣類・履物」の割合
衣類・履物(二人以上の世帯全体の平均は11.3%)では、40歳未満が15.2%と最も高く、次いで40歳代が14.5%となっています。一方、高齢層の60歳代と70歳以上は共に8.7%で、若年層の半分程度です。
さらに衣類・履物の内訳(3項目)を見てみると、「履物・その他の衣類」において若年層と高齢層の差が大きく、40歳未満が6.5%であるのに対して、60歳代と70歳代は共に1.9%となっています。(図2-2)
これは、「履物・その他の衣類」には子供用の衣類なども含まれていますので、若年層ではこれらを中心にインターネットで購入している割合が高いのではないかと思われます。
図2-2 世帯主の年齢階級別インターネットを利用した支出総額に占める「衣料・履物」の割合(二人以上の世帯)
(3)70歳以上の高齢層で高い「医薬品・健康食品」の割合
医薬品・健康食品(二人以上の世帯全体の平均は4.6%)では、高齢層と若年層の差が大きく、70歳以上が7.4%と最も高くなっており、次いで60歳代が5.1%、50歳代が4.9%となっています。一方、40歳未満は2.6%と70歳以上の3分の1程度の割合です。
次に医薬品と健康食品に分けて見てみると、各年齢階級とも健康食品の割合の方が高くなっています。また、年齢間の差は医薬品に比べて健康食品の方が大きく、高齢層の健康志向の強さが伺われます。(図2-3)
図2-3 世帯主の年齢階級別インターネットを利用した支出総額に占める「医薬品・健康食品」の割合(二人以上の世帯)
まとめ
以上のように、ネットショッピングの内訳を世帯主の年齢階級別に比較してみると、項目ごとに特徴が見られ、今回紹介した以外にも家電などで違いが表れています。
最近はスーパーマーケットなどでも食品や日用品を中心にインターネット販売に力を入れ始めています。これに伴い、店頭へ出向いたり、重量のある商品を持ち帰ったりするのが難しい「乳幼児のいる世帯」や「高齢者のいる世帯」などでもネットショッピングが増えていくとみられることから、今後も購入内訳も含めたその動向が注目されます。
なお、今回紹介しました内容は、調査を開始した2015年1月から3月までの3か月分の結果に基づくものです。ネットショッピングの内訳を調べるに当たって、モニターを使った事前の研究調査の結果では、贈答品の割合が高くなっていました(注3)。したがって、ネットショッピングの内訳の全体像を把握するには、お中元やお歳暮の時期を含んだ12か月(1年)分のデータが集まったところで、改めて見てみる必要があります。
今後、調査がさらに進むに従って、ネットショッピングに関するより詳しい情報が得られるようになりますので、御期待ください。
(注3) 日本統計学会 第82回大会(平成26年9月13日〜16日)で報告
詳しくは大会での報告資料(http://www.stat.go.jp/training/2kenkyu/pdf/gakkai/toukei/2014/itikawa.pdf(PDF:453KB))を参照
(平成27年7月17日)