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統計Today No.26
世界と日本の若者人口
前総務省統計局統計調査部長(現内閣府公益認定等委員会事務局長) 駒形 健一
日本は本格的な人口減少社会に入っており、特に、若者の数が減っています。では、世界ではどうなっているのでしょう。若者人口(ここでは、15〜29歳のことをいう。)は、新たな労働力の担い手であり、家族形成などを通じて住宅や乗用車、家電など大きな消費需要をもたらす人口でもあります。若者人口がどうなっていくのかは、経済的な観点からも注目されるところです。未来の活力の源泉である若者人口が今後どうなっていくのか、以下では、世界と日本の若者の人口の現状と将来について見てみたいと思います。
http://www.un.org/esa/population/unpop.htm
1 世界の若者人口の増加にブレーキ
国際連合(以下「国連」という。)の推計によると、世界の若者人口は、現在17億7千万人で、世界の人口69億人の約4分の1を占めています。その動きを見てみると、この30年間で6億人近く急速に増えたものの、発展途上国の近年の出生率低下を背景に(影響により)、今後は頭打ちとなり、今世紀半ばころには逆に減少していくと予想されています。(図1)
若者人口の分布を世界の地域別に見てみると、図2の円グラフにあるとおり、東アジア、南アジアなど、アジアが60%を占めていることが分かります(日本は1.1%)。これは、中国、インドなどの人口大国の影響が大きいためです。しかし、今後は、出生率が依然として高いアフリカ諸国が急速に増えていき、2040年には世界の若者人口の4分の1を占めることが予想されています。
2 東アジアと東南アジアでは若者人口が減少
日本を取り巻く東アジアと東南アジアの若者人口は、2010年を境に減少を始め、今後10年間だけで、5億3千万人から4億8千万人へと、5千万人近く、9%減少することが、国連の推計により予想されています。(図3)これは中国の少子化の影響が最も大きいのですが、日本、韓国のみならず東南アジアの動きも少なからず影響しています。つまり、日本、韓国、香港などの出生率の低い傾向が東南アジアの新興国にも広がることにより、今まで増加していた東南アジアの若者人口が2015年をピークに減少に転じるとみられているからです。東アジアと東南アジアでは、2010年以降、若者人口が減少する時代が到来することになります。
3 日本の若者はどうなる?
日本の若者人口は、今から40年前、1970年の「大阪万国博覧会」のころがピークとなっており、その後、第2次ベビーブーム世代が若者となるころの1993年に2番目のピークを迎えた後、減少をし続けています。最近の10年間をみても2640万人から2050万人へと600万人近く減少しています。大都市圏はそれほど減少していないと思われるかもしれませんが、図4のとおり、東京圏で163万人減少するなど、3大都市圏で312万人(22%)減少しており、全国と同じスピード(率)で減少しています。
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm
さらに、図5の年齢別人口のグラフから分かるとおり、30歳未満の日本の人口は歳が若くなるにつれて減っており、よほどの状況の変化がなければ、今後も若者が減少していくことが容易に予想されます。
4 子供と女性の海外流出
日本の人口の動きを、海外との関係で観察してみると、人口推計のデータから日本人が海外流出していることが分かります。年齢層別に日本人の社会移動(国外への流出、国内への流入)を見てみると、図6のように、10歳未満の子供で年2万3千人程度の人口の流出超過がみられるほか、20歳前後の流出も目立っています。こうした若い世代での流出は将来の若者人口の減少を更に加速させる原因となります。
また、30代〜40代で日本女性の流出超過が多い(しかも日本男性よりも多い)のが目を引きます。流出の原因としては、家族で海外に赴任することのほか、外国籍の配偶者の母国に里帰りする、単身で海外に勤務することなどが考えられます。
こうした日本人の海外への流出超過の現象は、企業活動のグローバル化や日本女性の国際化などが背景にあると思われます。日本人の人口流出を上回る海外からの外国人の流入がなければ、日本の人口は高齢化による自然減少に加えて社会減少も伴うことになり、今後の人口減少に一層拍車が掛かることになります。
現在、「2010年ラウンド世界人口・住宅センサス」が世界223か国で実施されており、7月11日の「世界人口デー」を期して国連からメッセージが発信されています。日本では、この10月に国勢調査を実施します。日本にとっても、世界にとっても、人口はとても重要な統計です。皆さんの御理解と調査への御回答をよろしくお願いします。
(平成22年8月2日)
国連人口基金事務局長からのメッセージ
http://www.unfpa.or.jp/news/ed/ed2010/msg100711.html
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長メッセージ
http://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/2818/
「世界の統計」
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm