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リサーチペーパー 第9号
タイトル
労働市場における世代効果の頑健性 −完全失業率の趨勢と所得分布を考慮して−
著者 (原稿執筆時の所属)
太田 聰一 (慶應義塾大学経済学部教授)
玄田 有史 (東京大学社会科学研究所教授)
刊行年月
2007年9月
要旨
本稿では、リサーチペーパー第8号「失業率上昇がもたらす若年就業への持続的影響 について−労働市場の世代効果に関する再検証−」で得られた労働市場の世代効果に関する主要結果の頑健性を検討した。学校を卒業して就職する時点の失業率が高かった世代ほど、その後も持続的に低位の実質賃金水準にあるという労働市場の世代効果は、失業率の上昇局面と下降局面にかかわらず観察された。また新しい世代では潜在的な経験年数が短いことの影響を考慮し、経験年数が10年以上の世代のみに限定した分析からも 世代効果は改めて観察された。さらに学歴による世代効果の相違のなかに、所得分布における労働者の位置づけの影響が含まれる可能性を考慮し、Quantile regression による検討も行った。その結果、低学歴者が多く含まれる低賃金層に位置する人々ほど、不況期 に正規雇用の機会に恵まれず、その後も低賃金を継続せざるを得ない状況にあるという解釈と整合的な結果が得られた。
キーワード:完全失業率、世代効果、所得分布、Quantile regression