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統計Today No.72
共同住宅の空き家 約460万戸 について分析
−平成20年住宅・土地統計調査からの推計−
総務省統計局統計調査部国勢統計課長 岩佐 哲也
近年、少子高齢化の進展や人口移動の変化などにより、我が国の空き家の数は増加の一途をたどっており、平成20年では、757万戸で、全国の住宅の13%を占めています(図表1)。このため、管理が行き届いていない空き家が、防災、衛生、景観等の生活環境に影響を及ぼすという社会問題が起きています。また、少子高齢化が進展する中、空き家の有効的な利用のための対応が各地において必要となっています。
総務省統計局の住宅・土地統計調査(http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.htm)では、空き家については、調査員が外観等から調査し、空き家の種類(別荘等の二次的住宅、売却用の住宅、賃貸用の住宅及びその他の住宅)ごとに、外観等から判断できる建物の属性(建て方、構造、腐朽破損の有無など)に関する結果を提供しています。
今回、空き家が社会にもたらすこうした影響に鑑み、平成20年調査のデータを用いて、特に空き家の比重が高い共同住宅の空き家について、調査対象となった空き家と同じ建物内にある、他の居住世帯の情報などを基に、新たに住宅の属性(所有の種類、建築時期及び床面積)に関する指標を推計しました。
空き家の現状
空き家の数は、調査の度に増加し、昭和63年に394万戸だったところ、平成20年では757万戸と、この20年間で2倍近くになっています。
また、空き家率でみると、平成10年に1割を超え11.5%となり、その後、5年ごとに1ポイントずつ上昇しています。(図表1)
平成20年結果について、空き家の種類、建て方別にみると「賃貸用の住宅」と「その他の住宅」(世帯が長期にわたって不在の住宅、建て替えのために取り壊すこととなっている住宅等)が、全体の90%を占めています。
また、「賃貸用の住宅」を建て方別にみると、共同住宅の割合が90%近くになっています。(図表2)
共同住宅の空き家に係る推計結果
共同住宅の「賃貸用の住宅」及び「その他の住宅」(以下、「賃貸用等空き家」という。)をまとめた上で、同一建物内の類似性を考慮し、以下の住宅の属性に関する結果を推計しました。
- 所有の種類(民営、民営以外)・・・全国、都道府県
- 建築時期・・・全国
- 床面積・・・全国
【所有の種類別空き家数】
賃貸用等空き家の431万戸について、所有の種類別にみると、民営の空き家が342万戸で、79%、民営以外(公営、公社、給与住宅等)の空き家が75万戸で、17%となっており、民営の空き家が民営以外に比べ4.5倍以上の大きな値になっています。(図表3)
【建築時期別空き家数】
また、これらを建築時期別にみると、民営の空き家は、昭和56年〜平成12年に建てられた住宅が115万戸と比較的多く、この20年間に建てられた住宅の空き家数が、民営の空き家全体の34%となっています。ただし、建築時期が不詳の空き家も144万戸(42%)と多く、留意する必要もあります。
一方で、民営以外の空き家についてみると、昭和55年以前に建てられた住宅が36万戸で、民営以外の空き家全体の48%と、約半数を占めています。また、平成13年以降に建てられた住宅については6万戸で8%と、割合としては小さいものとなっています。(図表4)
【床面積別空き家数】
次に、床面積別にみると、民営の空き家については、30平方メートル未満の住宅が96万戸で最も多く、民営の空き家全体の28%を占めています。次に多いのが30〜49平方メートルの76万戸(22%)で、この二つの区分を合わせた50平方メートル未満の住宅が、民営の空き家全体の半数を占めており、面積規模の小さい住宅が多くなっています。逆に面積規模の大きい70平方メートル以上の住宅は12万戸で、全体の3.5%となっています。ただし、床面積が不詳の空き家も116万戸(34%)と多く、留意する必要もあります。
一方で、民営以外の空き家についてみると、30〜49平方メートルの住宅が最も多く、28万戸、次に多いのが、50〜69平方メートルの21万戸となっており、この二つの区分で全体の64%を占めています。また、30平方メートル未満の住宅は、15万戸(19%)で、民営の同区分と比べ、低い割合になっています。(図表5)
【所有の種類、都道府県別民営の空き家の割合】
北海道・東北では、岩手県を除き、いずれの県でも全国平均(79%)を上回っています。特に宮城県では88%と、全国平均よりかなり高い割合となっています。
関東では、茨城県と千葉県で全国平均を下回っていますが、いずれもおおむね全国平均に近い割合になっています。
北陸では、新潟県で83%、石川県では87%と、この2県で全国平均より高い割合となっています。
中部では、静岡県、愛知県、三重県といった太平洋に面した各県で全国平均を下回っていて、特に愛知県と三重県では、それぞれ75%、74%と、低い割合となっています。
近畿では、大阪府と奈良県を除いて、いずれも全国平均より低い割合となっていて、滋賀県で66%、兵庫県で70%と、この2県が全国平均を大きく下回っています。
中国・四国では、岡山県、広島県、山口県が69%〜71%で、全国平均よりかなり低い割合となっています。また、徳島県、愛媛県、高知県では、85%〜86%となっていて、全国平均より高い割合となっています。
九州・沖縄では、熊本県で86%、沖縄県では87%と、この2県で全国平均より高い割合となっています。
日本全体でみると、東日本では一部を除き全国平均に近い割合の県が多く、西日本では、全国平均より高い県と低い県との差が出る傾向が見られます。(図表6)
おわりに
平成25年調査の結果については、今年の7月に速報結果を公表する予定です。結果の公表後、空き家については、今回と同様の推計・提供を行う予定です。(平成25年住宅・土地統計調査(確報集計結果)からの推計を公表しました。)
また、住環境問題として、空き家対策の重要性は年々高まるものと考えています。今後とも住宅・土地統計調査において、我が国の空き家に関する状況が適切に把握できるよう取り組んでいきたいと考えております。
※本稿における推計値の算出について
○所有の種類、建築時期、床面積の判別
空き家と同一建物内に居住世帯のある住宅がある場合は、当該住宅の所有の種類、建築時期、床面積の情報を基に、空き家の所有の状況を統一的に決定しました。
また、所有の種類及び床面積については、居住世帯のある住宅の情報から判別が不能で決定できない場合、当該共同住宅の建物がある平成22年国勢調査の調査区情報を参考に決定しました。
上記により決定できない場合は不詳としました。
「住宅・土地統計調査」とは
総務省統計局が、全国約350万住戸・世帯を対象に、5年に1度実施している基幹統計調査で、空き家についても調査の対象としています。
(平成26年2月6日)