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統計Today No.70
世界に貢献する「Statistics Japan」
総務省統計局総務課長 佐伯 修司
はじめに
社会経済がグローバル化する中で、国際比較が可能な統計が必要不可欠となってきています。また、今年、2013年は、国際統計協会(International Statistical Institute : ISI)などが、幅広い人々に統計学への理解・関心を深めてもらうために指定した「国際統計年」でもあります。
そこで、今回は、国際会議の開催、技術協力等様々な形で国際的な関わりを持っている統計局の最近の国際貢献について、御紹介いたします。
(国際統計年) http://www.stat.go.jp/info/meetings/pdf/tokeinen.pdf |
国際会議の開催
統計局では、国際的な統計の改善・発展に寄与するため、国際会議を積極的に開催しています。
昨年度の「第13回東アジア統計局長会議」に続き、今年度(2013年度)は「第28回フォールブルグ・グループ会合」を10月に開催しました。この会合は、サービス産業に関する各国統計局等の専門家が知見を交換する場として1986年に創設されたものです。日本は、1987年の初会合以来、毎回参加しており、日本での開催は2003年に続き2回目となります。
開催国には「ホストカントリー・デイ」の時間が割り当てられることから、自国の統計をアピールする機会を持つことができ、日本は「多様化するサービス産業に対する統計的アプローチ」などに関する発表を行いました。このような時間を持てることでも、日本で開催する意義はあると思います。
また、会議のプログラムの中で和服を着た参加者に対し、外国の方々が男女問わず強い関心を示していました。このような反応を見ますと、統計に関する貢献で日本を印象付けるのが大事であるとともに、文化的な側面から日本を印象付けるのも見逃せないことだと実感いたしました。
さらに、今回の会合では、米国から来日する予定だった議長及び他の参加者が、米国議会の与野党対立の影響で予算が成立しなかったため、開催直前になって、来日できなくなるというハプニングがありました。その際、副議長のマイケル氏(オーストラリア)と日本の参加者は議長と連携をとり、議長についてはマイケル氏が代理を務め、米国参加者の発表については日本の参加者が中心となって代役を務めるなどの活躍を見せました。このような状況をみますと、単に会合に参加しただけではなく、この国際的なグループの一員として、しっかりと土台を固めていることを確認できた出来事であったと感じました。
来年度以降も、「第27回人口センサス会議」、「第14回オタワ・グループ会合」(物価統計に関する会合)などを順次開催していきます。そして、日本の存在感を示すとともに、国際統計に関する整備・発展に貢献していきたいと思います。
(第28回フォールブルグ・グループ会合) http://www.stat.go.jp/info/meetings/vg2013/gaiyou.htm |
![]() 会議風景 |
![]() 文化交流風景 |
国際協力
対外的な協力については、各国からの要請に応じて、様々な取組を行っています。
中国に対しては、1982年人口センサス実施に係る全面的な技術協力や1986年から研修生の受入れ等の支援を行ってきました。また、韓国に対しては、1990年人口センサスの集計に係る助言・提言、1986年から研修生の受入れ、1989年から韓国統計庁の上級職員を対象に統計調査実務に関する研究の場の提供等を行ってきました。
さらに、インドネシア、ベトナムなど数多くの開発途上国に対して、その国の統計を実施するために統計専門家を派遣しています。多くの場合はJICAの国際協力計画の一環として各国に派遣されます。現在実施しているカンボジア政府統計能力向上計画は、2005年に始まり約10年間にわたる技術協力を行っています。その間、同国の2008年人口センサス、2011年経済センサスを成功に導くという貢献を行っています。2012年には、これまでのプロジェクトの貢献に対して、勲章が授与されました。また、先日の11月25日には2013年中間年人口調査の結果が公表されましたが、これも同プロジェクトの一環であります。
このようにして作成された社会の情報基盤としての統計データや統計を作成するためのノウハウは、今後、関係国の発展に大きく貢献していくものと期待されます。
(カンボジアプロジェクト) http://www.stat.go.jp/info/meetings/index4.htm |
2011年カンボジア経済センサス確報公表式典
幅広い国際交流
統計局では、SIAP及びJICAの研修員を始め、日本の統計に興味のある諸外国・国際機関の来局希望者の受入れも行っています。今年度は、今後の予定も含めて約15件の来局対応をすることになっています。テーマは各々が望むものにしたがって、担当者からの説明、意見交換等を行い、お互いの情報を交換するとともに、親交を深めています。加えて、140有余年にわたる日本の統計の歴史に触れていただくために、来局者の統計資料館見学も行っています。
(来局実績:最近の国際協力) http://www.stat.go.jp/info/meetings/index2.htm |
前国連統計部長ポール・チュン博士の来局(前列左)
また、中国及び韓国とは、上述の国際協力のほか、約30年間にわたり、二国間交流を行っており、今年度は5月に訪日・韓国統計視察団をお迎えし、11月に訪中・日本統計視察団を派遣しました。今後は、更に交流相手国を探り、親密な関係を広げ、世界に貢献していきたいと思っています。
日本への期待
日本の統計と世界の統計という観点で見ますと、今年は大きな出来事がありました。それは、川崎茂元統計局長(現日本大学教授)が国際公的統計協会(International Association for Official Statistics: IAOS)会長に日本人として初めて就任したことです。国際公的統計協会(IAOS)は、公的統計に関する世界的な学術団体であり、世界の国々の公的統計の発展と普及に尽力している組織です。この会長就任は川崎氏のこれまでの国際的な活躍を踏まえたものであるとともに、公的統計の改善や発展に対する日本のこれまでの国際貢献が高く評価されている証でもあり、今後の期待の現れでもあると思います。
就任挨拶をする川崎IAOS会長
おわりに
最近の統計に関する動向には、地理空間情報と公的統計の統合、ICTの進展に伴う統計データの高度利用など、新たな課題が提起されています。我が国では、統計GIS機能の強化、API機能による統計データの高度利用環境の構築などの取組を行っており、それらの分野でも国際貢献が可能であると思います。私達統計局は、政府統計の中核的機関「Statistics Japan」として、今まで以上に国際貢献にまい進してまいりたいと思います。
(平成25年12月13日)