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消費者物価指数に関するQ&A(回答)
の項目は、政府統計の総合窓口「e-Stat」掲載の統計表です。
【A 消費者物価指数の概要について】
A-1 消費者物価指数とはどのようなものですか。
消費者物価指数は、全国の世帯が購入する各種の財・サービスの価格の平均的な変動を測定するものです。すなわち、ある時点の世帯の消費構造を基準に、これと同等のものを購入した場合に必要な費用がどのように変動したかを指数値で表しています。
このように、消費者物価指数は純粋な価格の変化を測定することを目的とするため、世帯の生活様式や嗜好の変化などに起因する購入商品の種類、品質又は数量の変化に伴う生活費の変動を測定するものではないことに留意する必要があります。
A-2 消費者物価指数はいつから作られているのですか。
消費者物価指数は、第二次世界大戦直後の昭和21年(1946年)に初めて作られ、当時の激しいインフレーションを計測するために使われました。その後、昭和27年(1952年)に、小売物価統計調査で調査された小売価格から指数を作成するようになりました。
なお、各指数系列における時系列比較が可能な範囲については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「第6 新・旧指数の接続(PDF:498KB)」を御覧ください。
A-3 指数の基準年とは何ですか。
消費者物価指数は、基準となる年の物価を100として、その時々の物価を比較計算した数値となっています。この、物価の基準となる時点のことを「指数の基準時」と呼んでいます。
また、消費者物価指数は、ある時点の消費構造(品目ごとの支出割合)をウエイトとして、個々の品目の価格指数を加重平均して算出しています(B-1参照)。この、ウエイトに採用した年次のことを、「ウエイトの参照年次」と呼んでいます。
現在、日本の消費者物価指数のうち毎月公表している公式系列については、「指数の基準時」と「ウエイトの参照年次」を共に2020年の1年間としており、これを「基準年」と呼んでいます。
なお、基準年は、西暦年の末尾が0と5の年を基準時として、5年ごとに改定(基準改定)しています。その際、併せて指数に採用する品目などの見直しも行っています(D-1参照)。
A-4 消費者物価指数は、どのように利用されているのですか。
物価は、経済活動が活発となり需給がひっ迫してくると上昇率が高まり、経済活動が停滞し需給が緩むと上昇率が低下する傾向があります。このため、消費者物価指数は「経済の体温計」とも呼ばれており、経済政策を的確に推進する上で極めて重要な指標となっています。家計調査やGDP統計における家計消費支出など他の重要な経済指標を実質化するためのデフレーターとしても利用されています。また、国民年金や厚生年金などでは、物価変動に応じて実質的な給付水準を見直すことが法律によって定められており、この物価の動きを示す指標として消費者物価指数が使われています。さらに、日本銀行が金融政策における判断材料として使用しているほか、賃金、家賃や公共料金改定の際の参考に使われるなど、官民を問わず幅広く利用されています。
A-5 消費者物価の基調をみるためにどのような指標が用いられていますか。
消費者物価の基調をみるために、「生鮮食品を除く総合」指数や「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」指数が用いられることがあります。「生鮮食品」は天候要因で値動きが激しいこと、「エネルギー」(ガソリン、電気代等)は海外要因で変動する原油価格の影響を直接受けることから、これらの一時的な要因や外部要因を除くことが消費者物価の基調を把握する上で有用とされています。このほか、アメリカ等諸外国で重視されている指標と同様のものとして「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」指数が用いられることがあります。
なお、「生鮮食品を除く総合」指数は「コア」指数と呼ばれる場合があります。また、このほかにも、「コアコア」指数と言われている指標などがありますが、生鮮食品のほかにエネルギーなどを除く様々な指標に対して様々な名称が用いられているようですので、それらの指標を利用する際は、定義等を御確認ください。
[参考]
系列 | 生鮮食品を除く総合 | 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合 |
---|---|---|---|
除外している品目 | 生鮮食品 | 生鮮食品 | 食料(酒類を除く)※1 |
電気代 都市ガス代 プロパンガス 灯油 ガソリン |
電気代 都市ガス代 プロパンガス 灯油 ガソリン |
||
総合を10000とした 場合のカバレッジ |
9604 | 8892 | 6781 |
※1 総合から除かれる食料は、米類、生鮮食品、鶏卵、菓子類など、酒類以外の食料すべてです。
【B 消費者物価指数の作成方法について】
B-1 消費者物価指数は、どのように作られているのですか。
消費者物価指数の作成に当たっては、まず世帯が購入する財・サービスのうち、世帯の消費支出上一定の割合を占める重要なものを品目として選びます。次に、この家計消費支出割合に基づいて指数の計算に用いる各品目のウエイトを求めます。なお、家計消費支出割合は家計調査の結果などを用います。
各品目の価格は、主に毎月の小売物価統計調査によって調査したものを用います。
指数の計算は、調査市町村別の平均価格を用いて(※)個々の品目の指数(基準年=100)を計算し、これらをウエイト(家計の消費支出に占める割合)により加重平均して、中分類、10大費目、総合などの指数を計算します。
現在の消費者物価指数の基準年は2020年ですが、基準年は5年ごとに改定(基準改定)しています(D-1参照)。
指数に採用する品目とそのウエイトはこの基準改定に合わせて見直しを行っています。2020年基準で指数に採用している品目は582品目です。なお、基準改定後に新製品の急速な普及や消費パターンの急激な変化があった場合には、基準改定以外の年においても品目の見直しを行うこととしています(E-1参照)。
※電気代や診療代、通信料(携帯電話)などの74品目については、料金体系が多様であり、価格も購入条件によって異なります。これらの品目については、価格変動を的確に指数に反映させるため、小売物価統計調査による価格のほか品目ごとに典型的な利用事例をモデルケースとするなどにより設定した計算式(モデル式)を用いて月々の指数を算出しています。
モデル式による指数の作成方法については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「付1 モデル品目の計算方法」に掲載されています。
B-2 日本の消費者物価指数の作成方法は主要国と同じですか。
消費者物価指数については、国際労働機関(International Labour Organization: ILO)が国際基準を作成しています。平成15年(2003年)12月にジュネーヴで開催された第17回国際労働統計家会議では、消費者物価指数に関する現行の国際基準が決議として採択されました。また、消費者物価指数に関する国際的なマニュアルとして「消費者物価指数マニュアル:概念と方法(Consumer Price Index Manual : Concepts and Methods)」が作成され、IMFのホームページでも公開されています。
日本の消費者物価指数では、他の主要国と同様に基本的にこの国際基準に沿って作成しています。
B-3 指数の計算に採用する品目は、どのように決められていますか。
消費者物価指数で採用している品目は、世帯の消費支出上一定の割合を占める重要なものから構成されており、582の品目があります。世帯が購入する無数の種類の財・サービスは、その機能や価格の動き等の類似性によりまとめられ、各品目に分類されることになります。
この品目の中には、品質、規格、容量などの銘柄(スペック)が異なる複数の商品が含まれています。消費者物価指数の作成に当たっては、各品目について、その品目を代表すると考えられる銘柄(スペック)を「基本銘柄」として指定し、毎月、原則としてこの「基本銘柄」に該当する商品の価格を調査します(価格調査に当たっては、「基本銘柄」に該当する商品の中から、各調査店舗で最も売れている製品等を選定し、その価格を継続して調査します。)。
品目は5年に1度の基準改定の際に、直近の家計調査結果に基づいて見直しが行われます。ちなみに、2020年の基準改定では、ノンアルコールビール、ドライブレコーダーや葬儀料などを品目に追加しました(D-1参照)。
なお、基準改定後に新製品の急速な普及や消費パターンの急激な変化があった場合には、基準改定以外の年においても品目の見直しを行うこととしています(E-1参照)。
B-4 商品の出回りに季節性のある衣料品などの指数はどのように作成しているのですか。衣料品の夏物、冬物などは、季節に合わせて価格を調査しているようですが、調査していない月の指数はどのように計算しているのですか。
小売物価統計調査では、1年のある時期に出回りが全くない又は出回りが非常に少ないため、現実に調査できない月がある品目(衣料品の夏物、冬物など)については、出回りのある月を調査月として価格を調査しています。このような品目の調査されない月(非調査月)において、これを除外して上位類の指数を計算すると、その品目のウエイトは類内の他の品目に比例的に配分されることになるため、結果的に各月のウエイトの年平均が本来の年平均ウエイトと異なるという問題が生じます。このため、衣料品等の季節品目の非調査月の指数については、直近の調査期間の平均指数を次の調査開始の前月まで当てはめる(保合(もちあい)する)こととしています。
B-5 持家の帰属家賃とは何ですか。
住宅や土地の購入は、財産の取得であり消費支出ではないことから、消費者物価指数に含まれていませんが、持家に住んでいる世帯(持家世帯)が、自分が所有する住宅からのサービスを現実に受けていることは確かです。そこで、何らかの方法で持家世帯の住宅費用を測れないかという問題がでてきます。
持家世帯が住んでいる住宅を借家だと仮定すれば、そのサービスに対し当然家賃を支払わなければなりません。そこから、持家の住宅から得られるサービスに相当する価値を見積もって、これを住宅費用とみなす考え方が成り立ちます。このような考え方に基づいて、持家を借家とみなした場合支払われるであろう家賃(これを「持家の帰属家賃」といいます。)を消費者物価指数に算入しています。
指数の計算に当たっては、総務省で実施している全国家計構造調査において推計された持家の帰属家賃額を基に、住宅の構造及び規模ごとにウエイトを求め、それに対応する持家の帰属家賃の価格変動は、小売物価統計調査で調査している民営借家の家賃の価格変動を用いています。
このように、消費者物価指数には、土地や住宅の購入費そのものは含めていませんが、帰属家賃方式により持家世帯の住宅費用を算入しています。 なお、この帰属家賃方式は、多くの主要国で消費者物価指数のほか国民経済計算(SNA)でも用いられています。
【C 結果の利用について】
C-1 結果はいつ頃公表されるのですか。
消費者物価指数は、全国の前月分指数を、原則として毎月19日を含む週の金曜日の午前8時30分に公表しています。また、東京都区部の当月分指数の中旬速報値を、原則として毎月26日を含む週の金曜日の午前8時30分に公表しています。速報値は、翌月の全国指数の公表と同時に確報値に更新しています。
なお、12月分公表時には年平均指数を、3月分公表時には年度平均指数を、それぞれ公表しています。
C-2 消費者物価指数では季節調整値を公表していますか。
消費者物価指数のような月次統計には、例えば、衣料品の価格が季節の初めには高値で、季節の終わり近くになるとセールなどで値下がりするといった、季節的な要因で毎年同じような動きをするものがあり、これを季節変動と呼んでいます。
消費者物価指数では、このような季節変動を除去した季節調整値を、「総合」、「生鮮食品を除く総合」、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」などの8系列について公表しています。
ただし、季節調整値は過去の指数から計算した平均的な季節変動を基に調整するため、授業料や診療代など特定の月の価格変動が他の月にも影響して、実際に価格変動がない月でも季節調整値が変動する場合があります。
一方、こうした季節性の除去は、1年前の同じ月と比較した、前年同月比をみることによっても可能です。前年同月比は価格変動がない限り1年間は変動することがありません。このため、消費者物価指数では物価のすう勢を表すものとして前年同月比をよく用いています。
なお、値動きの大きい生鮮食品や、電気・ガス料金などの改定月の価格変動については、前月比が消費者の実感に近いと考えられることなどから、季節調整を行わない前月比についても併せて公表しています。
[参考]
消費者物価指数における季節調整については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「第7 季節調整(PDF:414KB)」にも掲載されています。
【D 基準改定について】
D-1 消費者物価指数の基準改定は何のために行うのですか。
消費者物価指数は、ある時点の世帯の消費構造を基準に、これと同等のものを購入した場合に必要な費用がどのように変化したかを表しています。他方、世帯の消費構造は、新しい財・サービスの出現や、し好の変化とともに次第に変化していきます。このため、基準年を一定の周期で新しくする「基準改定」を行い、指数に採用する品目とそのウエイトなどを見直します。日本の消費者物価指数は、5年ごとに改定され、西暦の末尾が0と5の年を基準年としています。国際的にみても5年程度の周期で基準改定を行っている国が多く、日本では平成22年(2010年)の統計委員会の答申(総務省) で、他の経済指数を含めて5年周期の改定が適当とされ、企業物価指数などの物価指数を始め、鉱工業生産指数などの数量指数も含めて、大半の指数が5年ごとに基準改定されています。
直近では、令和3年(2021年)8月に2020年基準への切替えを行いました。
D-2 消費者物価指数の基準改定の間隔が5年と長いため、基準年に固定したウエイトでは消費構造の急速な変化を反映しないということはないですか。
消費者物価指数では、家計調査結果による支出割合を基に作成されたウエイトを5年ごとに更新する公式系列のほかに、消費構造の変化の影響を確認するため、毎年ウエイトを更新して作成するラスパイレス連鎖基準方式による指数を参考指数として公表しています(H-1参照)。
なお、消費者物価指数では、5年ごとのウエイトの違いによる差をみるためパーシェ・チェックを行っています。その結果は、「パーシェ・チェックの結果について(PDF:253KB)」を御覧ください。
D-3 基準改定の時、新旧指数はどのように接続しているのですか。
消費者物価指数では、基準改定によって採用する品目や計算に用いるウエイトを新しいものに更新するため、改定前と改定後の指数は厳密には内容が異なります。しかしながら、長期的な物価変動を時系列的に分析できるようにするため、基準改定時においては、新旧指数を接続する処理を行っています。
新旧指数の接続は、基準年における旧基準と新基準の年平均指数値(新基準は100)の比で、旧基準の指数を換算することにより行っています。接続処理は項目ごとにそれぞれ独立に行い、接続した指数による上位類指数の再計算はしていません。なお、変化率(前月比、前年同月比、前年比及び前年度比)については、接続した指数により再計算することなく、各基準年において公表された値をそのまま用いることとしています。また、各基準の基準年の1月の前月比、1〜12月の前年同月比、前年比及び前年度比についても、旧基準の指数によって計算されたものを用いています。
D-4 基準改定によって前年同月比や寄与度にどのような影響がありますか。
基準改定によって、前年同月比や寄与度(総合指数の前年同月比などの変化率に対する各品目の影響度)に新旧基準で差が生じることがあります。この要因としては「ウエイト効果」や「リセット効果」などがあります。
(ウエイト効果)
「ウエイト効果」とは、ウエイトの更新に伴う影響のことです。
新基準でウエイトが小さくなると寄与度も絶対値で小さくなり、新基準でウエイトが大きくなると寄与度も絶対値で大きくなります。
ウエイト効果による新旧基準間の寄与度の差の符号は次のようになります。
ウエイトの差 (新基準-旧基準) |
前年同月比 (旧基準) |
寄与度の差 (新基準-旧基準) |
---|---|---|
縮小(-) | プラス(+) | 押し下げ(-) |
マイナス(-) | 押し上げ(+) | |
拡大(+) | プラス(+) | 押し上げ(+) |
マイナス(-) | 押し下げ(-) |
(リセット効果)
「リセット効果」とは、指数の基準時の更新に伴う影響のことです。
旧基準の指数が新基準の指数よりも高いと寄与度は絶対値で小さく、旧基準の指数が新基準の指数よりも低いと寄与度は絶対値で大きくなる傾向があります。
リセット効果による新旧基準間の寄与度の差の符号は次のようになります。
前年同月指数の差 (新基準-旧基準) |
前年同月比 (旧基準) |
寄与度の差 (新基準-旧基準) |
---|---|---|
下方シフト(-) | プラス(+) | 押し下げ(-) |
マイナス(-) | 押し上げ(+) | |
上方シフト(+) | プラス(+) | 押し上げ(+) |
マイナス(-) | 押し下げ(-) |
(その他)
上記のほかには、「モデル式効果」(モデル品目の計算方法の改定及び内部ウエイトの改定などの影響)や「品目改定効果」(指数に採用する品目の追加及び廃止などによる影響)があります(モデル品目については、B-1参照)。
ウエイト効果やリセット効果などの影響の計算方法については、「2020年基準改定による遡及結果について(PDF:251KB)」(付録1)を御覧ください。
D-5 前年同月比について、2020年基準改定による影響はどの程度ありましたか。
例えば2021年6月分において、新旧基準の総合指数の前年同月比は0.7ポイントの下方改定となりました。
なお、同月の2020年基準改定による前年同月比への影響(D-4参照)は以下のとおりでした(ただし、比較する月ごとにこれらの影響の大きさは異なりますので御注意ください。)。
ウエイト効果 | -0.20 |
リセット効果 | -0.19 |
モデル式効果 | -0.24 |
品目改定効果 | -0.01 |
計(新旧基準間の寄与度※の差) | -0.64 |
新旧基準の前年同月比の比較については、「2020年基準改定による遡及結果について(PDF:251KB)」を併せて御参照ください。
D-6 過去の基準改定と比べて、2020年基準の前年同月比の違いはどのくらいですか。
過去の基準改定における前年同月比の違いと比較すると、2010年基準改定と同程度となっています。基準改定により新旧基準で前年同月比に違いが生じる要因はいくつかあります(D-4参照)。2010年基準改定ではリセット効果の絶対値が0.48で最大でしたが、2020年基準改定ではモデル式効果が最も大きく絶対値で0.24となっています。
新旧基準の差※ | ウエイト効果 | リセット効果 | モデル式効果 | 品目改定効果 | |
---|---|---|---|---|---|
2011年6月 (2010年基準改定) |
-0.6 | -0.15 | -0.48 | 0.06 | -0.01 |
2021年6月 (2020年基準改定) |
-0.7 | -0.20 | -0.19 | -0.24 | -0.01 |
料金体系が多様な一部の品目については、価格の変動を的確に指数に反映させるため、モデルケースを設定するなどにより指数を算出しています。2020年基準改定では、「通信料(携帯電話)」などのモデル式を改定した結果、モデル式効果が下方改定の大きな要因となっています。詳細については、「2020年基準改定による遡及結果について(PDF:251KB)」を御覧ください。
[参考]
過去の基準改定時の前年同月比の違いについては「2020年基準改定による遡及結果について(PDF:251KB)」(付録3)を御覧ください。
2010年基準改定については「平成22年基準と平成17年基準の差 ▲0.6に影響を及ぼした主な品目(PDF:31KB)」を御覧ください。
【E 中間年見直しについて】
E-1 中間年見直しとは何ですか。
消費者物価指数は、消費構造の変化を反映させるため、5年ごとに指数の基準年次を更新する「基準改定」において、指数に採用する品目の改定を実施しています。しかしながら、基準改定後に、新製品の急速な普及などがあった場合には、5年後の改定を待たずに、その間の年に品目の見直し(中間年見直し)を行っています。
2020年基準においては、新たな品目の追加等が必要かどうかの検討を行った結果、品目の見直しは行わず、COICOP分類指数※について、国際比較可能性向上の観点から、年平均に加え、月次結果についても毎月公表することとしました。詳細については、「2020年基準消費者物価指数の中間年(2023年)における見直し(案)」に関する意見募集を御覧ください。
※指数品目を国際連合の定める国際分類基準「個別消費の目的別分類(2018年)」(COICOP2018)に準拠して組み換えたもの。COICOPは、Classification of individual Consumption According to Purposeの略。
また、中間年見直しは、2000年基準以降実施していますが、過去の見直しについては、以下のとおりとなっています。
2000年基準の中間年見直し(平成15年(2003年)1月分から)
追加品目 |
---|
プリンタ インターネット接続料 |
※「カメラ」について、デジタルカメラによる価格も取り込み。
2005年基準の中間年見直し(平成20年(2008年)1月分から)
追加品目 | 整理統合品目 |
---|---|
ビール風アルコール飲料 電気洗濯機(洗濯乾燥機) 家庭用ゲーム機(携帯型) |
テレビ(ブラウン管) オーディオ記録媒体 |
※「固定電話通信料」について、IP電話による価格も取り込み。
2010年基準の中間年見直し
- 平成25年(2013年)1月分から
「携帯電話機」及び「携帯電話通信料」について、スマートフォンによる価格も取り込み。 - 平成26年(2014年)1月分から
「パソコン(ノート型)」について、タブレット端末による価格も取り込み。
2015年基準の中間年見直し(平成30年(2018年)1月分から)
- 「たばこ(国産品)」及び「たばこ(輸入品)」について、「加熱式たばこ」による価格を取り込み。
【F 品質調整について】
F-1 消費者物価指数における品質調整とは、何のためにどのように行われているのですか。
消費者物価指数は純粋な価格の変動を測定することを目的としていることから、同一の商品の価格を継続して追跡することを原則としています。しかしながら、企業戦略や世帯の消費行動は常に変化し、売れ筋も移り変わることから、これに対応した調査銘柄の見直しを適時適切に行うことも必要です。このとき、新旧の商品の間にある機能・特性などの品質やパッケージ容量の違いによって生じる価格差が、指数に入り込まないようにする必要があります。つまり、旧商品と新商品の品質の差異を定量的に評価し、消費者物価指数に反映させており、これを品質調整と呼んでいます。
消費者物価指数では、調査対象の入替えの際に、オーバーラップ法、容量比による換算、単回帰式を用いた換算、オプション・コスト法、インピュート法、直接比較などの中から適切な方法を選択し、品質調整を行っています。なお、品質向上が著しく、製品サイクルが極めて短いテレビ、パソコン及びカメラについては、POS情報を用いたヘドニック法により、品質調整済みの価格変動を直接求めています(F-2参照)。
品質調整について詳しくは、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「第2 比較時価格の算出時における品質調整(PDF:450KB)」に掲載されていますので、御参照ください。
[参考]POS情報とは、小売店舗のPOS(Point of Sales:販売時点管理)システムによって集められた、各製品の販売価格及び販売数量に製品特性が付加された情報です。消費者物価指数では、全国の主要な家電量販店で販売されたパソコンやカメラ等全製品の、製品別販売価格、販売数量及び特性に関するPOS情報を用いています。
F-2 ヘドニック法とは何ですか。
ヘドニック法とは品質調整に用いられる方法のひとつで、各製品の品質がこれを構成する複数の特性(性能)に分解でき、価格は性能によって決定されると考え、これらの諸特性(例えば、パソコンなら記憶容量、メモリ容量、ディスプレイサイズなど)と各製品の価格との関係を、重回帰分析という統計的手法で解析することにより、製品間の価格差のうち品質に起因する部分を計量的に把握しようとする手法です。
消費者物価指数では、品質向上が著しく製品サイクルが極めて短いテレビ、パソコン及びカメラについて、品質調整済みの価格変動をヘドニック法により直接求める方法を採用しています。なお、より客観的で信頼度の高い重回帰分析を行うためには、多数の製品についての大量の価格、数量及び特性に関する情報が必要となるため、これらのヘドニック法の適用に当たってはPOS情報を用いています。
[参考]
「ヘドニック法について(PDF:643KB)」 清水誠,永井恵子 月刊誌「統計」2006年11月号掲載 日本統計協会
F-3 「ヘドニック法を使用している品目の価格は、性能が2倍になれば、価格は半額になったとみなす」という価格評価がされていると聞きましたが、実際はどうなのですか。
ヘドニック法では、多数の販売データ(POS情報)を利用して、統計的に製品の価格と特性(性能)の関係を計算しています。性能の各要素が価格にどれだけ影響しているかを計算すると、性能が2倍になったからといって、価格は2分の1になるとはみなせません。
例えば、パソコンにおいて、「記憶容量が1TB増えたとき、パソコン本体価格は5.0%上昇する」という関係が推計できたとします。これにより、「記憶容量が1TB増えた新製品が出た場合は、実際のパソコン本体価格を5.0%割り引いて価格を比較する」ことになります(イメージは下図のとおり)。性能の定義にもよりますが、性能向上分の品質調整は単純な評価をすることはできません。
<ヘドニック法による品質調整の例(パソコン)>
⇒ 多数のパソコン販売データから、特性と価格の相関関係を分析
⇒ 例えば「記憶容量が1TB増→パソコン本体価格は5.0%上昇」という関係を推計
⇒ 記憶容量が1TB増の新製品が出た場合は、本体価格を5.0%割り引いて比較
[参考]実際には統計的な回帰式で計算
具体的な計算方法については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「付2 POS情報を用いた品目別価格指数の算出(PDF:597KB)」に掲載されています。また、実際の計算に用いた回帰モデル等については、「消費者物価指数年報」の付録に掲載されています。
【G 消費者物価指数に対するよくある疑問等について】
G-1 新しい製品が次々と登場しますが、それらの価格変動が反映されていないということはないですか。
調査銘柄については、各品目において代表的な銘柄の出回り状況を調べ、調査銘柄の出回りが少なくなっている場合や、調査銘柄が製造中止になって後継の新製品が発売されるなどの場合には、出回りの多い銘柄に変更し、新製品の迅速な取込みを図っています。常時、品目を代表する銘柄の価格をフォローする仕組みになっています。
※小売物価統計調査において、どのようなものが調査されているかについては、「小売物価統計調査」の「調査品目及び基本銘柄」を御覧ください。
G-2 プライベートブランド(PB)商品の価格は反映されているのですか。
プライベートブランド(PB)商品については、価格調査に際して品目ごとに定めた銘柄規定(同品質のものを比較できるように定めた商品の特性等)に合致し、かつ調査店舗で最も売れていれば、基本的に調査対象となり、消費者物価指数に反映されます。例えば、牛乳、食パン、食用油、果実飲料などの食料品では、多くの品目(約7割)でPB商品が銘柄規定に該当しており調査対象に含まれています。
[参考]PB商品とは、大手スーパーストアなどが自ら企画・開発し、ストア自身のブランドをつけて販売する商品
G-3 ディスカウント店などの価格も反映されているのですか。
消費者物価指数の価格データを取集する小売物価統計調査では、各調査地区内で、品目ごとに「販売数量の多い代表的な店舗」を選定し、価格を調査しています。したがって、ディスカウント店が販売数量の多い代表的な店舗である場合には調査店舗となり、その価格が反映されることとなります。
[参考]小売物価統計調査Q&A
G-4 製品の機能向上など品質の変化があった場合、消費者物価指数には適切に反映されているのですか。
消費者物価指数は、品質の変化による影響を含まない純粋な価格の動きを測定することを目的としていることから、価格の調査対象となっていた商品の新商品への入替えなどがあった場合、新旧両製品の機能、特性、容量等の違いを吟味した上、品質の違いによる価格差が指数に入り込まないようにするための品質調整を行っています(F-1参照)。
G-5 日本の消費者物価指数には上方バイアスがあると言われていますが本当ですか。
消費者物価指数の上方バイアスは、価格の大きく下落した品目が、(1)需要も増えて相対的な支出割合も拡大した場合、(2)時間の経過とともに指数の水準が著しく低下した場合、などに生じることが指摘されています。
そこで、日本の消費者物価指数では、5年ごとに指数の水準とウエイトを更新する固定基準方式の指数とともに、毎年、指数の水準を前年12月=100に「リセット」し、ウエイトも前年の支出割合を用いて更新する連鎖基準方式の指数を参考指数として公表しています。
なお、2012年以降の「生鮮食品を除く総合指数」の前年比を、固定基準方式の指数と連鎖基準方式の指数について比べると、両者の差はあまりみられません。これは、実際には価格が下落した品目の相対的な支出割合が拡大するとは限らないこと、耐久消費財などでかつて見られた連続的な価格下落が最近は見られなくなり「リセット」の影響が小さくなっていることが背景にあると考えられます。
G-6 価格調査の対象となる商品の選定方法について、アメリカは日本と異なる方法を採用していると聞きましたが、日本の選定方法は諸外国と異なっているのですか。
国際労働機関(ILO)が作成している消費者物価指数の作成方法に関する国際基準では、消費者物価指数は、物価の時間的な変化を計測することを目的としたものであり、同一の品質及び同様な属性の消費財・サービスの固定された買物かごを購入する費用を計測することによって行うことができるとされています。こうした基本的な考え方に基づき、国際基準では、価格調査の対象となる品目について、その品質・特性などの銘柄を詳細に規定した上で、同質の商品の価格が継続的に調査されるべきこととされており、日本では、カナダのほかイギリスなど欧州主要国と同様に、この基準に沿って調査を行っています(B-2参照)。
また、日本では、規定した銘柄について、商品の出回り状況の変化に応じて随時見直しを行っており、最も売れている代表的な商品の価格が常時調査されるようにしています。
このように、価格調査の方法について、日本は国際的な基準に沿って、非常に精緻に行っています。
一方、アメリカでもおおむね国際基準を踏まえて指数を作成していますが、価格調査に当たっては、国際基準でいうような銘柄をあらかじめ規定せず、調査員が調査店舗ごとに商品の出回り状況に応じて商品を抽出し、その価格を調査する独自の手法を採用しています。この方法の場合、調査店舗ごとに抽出される商品が異なることとなるため、同じ品目であっても、同質ではない商品が混在し、品目内の変動が大きくなると考えられます。
[参考]日本における消費者物価指数の作成方法については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「III 消費者物価指数の作成方法」をご覧ください。
G-7 消費者物価指数と企業物価指数(日本銀行)の動きを対比させて見る際の注意点はありますか。
消費者物価指数には、企業物価指数が対象としていない授業料、家賃、外食などのサービスの価格もウエイトにして5割程度含まれています。サービスの価格は、財に比べて人件費の割合が高いため、財の価格が上昇・低下しても、財と一致した動きをするとは限りません。
また、消費者物価指数が対象としている財は世帯が購入するものについてであり、原油などの原材料、電気部品などの中間財、建設機械などの設備機械は含まれていません。したがって、これらの財が値上がりしても、消費者物価が直接上がるのではなく、間接的にしか影響を与えません。
このような理由から、消費者物価指数と企業物価指数の総合指数は必ずしも一致した動きをするとは限りません。
なお、両指数をできるだけ同じ対象範囲にして比較するため、消費者物価指数の「生鮮食品を除く財」と、国内企業物価指数を「最終消費財」に限定した指数とを比較すると、両者はほぼ同じ動きをしています。
G-8 消費者物価指数とGDPデフレーター(内閣府)が乖離していると聞きますが、それはなぜですか。
消費者物価指数とGDPデフレーターの動きを比較すると、GDPデフレーターの方が変化率が低くなることが多くなっています。この乖離については、対象の違いによる要因が大きく、他に算式の違いなどの要因も考えられます。
(1)対象の違い
消費者物価指数は家計消費に対象を限定している一方で、GDPデフレーターは家計消費の他に設備投資なども対象となっています。設備投資は品質向上が著しいIT関連財の比率が高いことから、これらの下落による影響が大きくなります。このため、GDPデフレーターの変化率の方が、CPIの変化率より低くなっています。
また、石油製品などの輸入品価格が上昇(下落)している中では、消費者物価指数はその分上昇(下落)するのに対し、GDPデフレーターでは製品価格に全て転嫁されない限り、下落(上昇)に働くため、両者は乖離します。
なお、両指数をできるだけ同じ対象範囲にして比較するため、消費者物価指数の総合と、GDPデフレーターを家計最終消費支出に限定した指数とを比較すると、両者はほぼ同じ動きをしています。
(2)算式の違い
消費者物価指数はラスパイレス算式、GDPデフレーターはパーシェ算式を採用しています。一般に比較時点の数量ウエイトで加重平均するパーシェ算式は指数が低く、基準時点の数量ウエイトで加重平均するラスパイレス算式は指数が高くなる傾向があります。また、品質向上は数量の増加とみなされるので、パーシェ算式の場合、品質向上で指数が下落した品目のウエイトは拡大します。このため、パーシェ算式を用いているGDPデフレーターは変化率が低くなります。
なお、GDPデフレーターはできるだけ指数算出に伴うバイアスを軽減することができるようにウエイトを毎年更新する連鎖方式により作成されています。消費者物価指数についても参考系列として連鎖方式による指数を作成・公表しています(H-1参照)。
G-9 最近、一部の報道などでPOSデータを基にして作成した物価に関する指数と消費者物価指数の比較等を行う事例が見られますが、それらを見る際にはどのような点に留意すべきですか。
最近ではデータの活用や処理技術の進展により、POS情報を用いた指数を作成する試みが民間でも行われるようになっています。こうした指数を利用する際には、(1) 品目や店舗に偏りがないか、(2) 新商品の登場時の価格が落ちていないか、(3) 容量変更が無視されていないか、(4) 新旧商品の品質差が調整されているか、などの点に留意する必要があります(物価指数は価格変動を計測する指数であり、数量や品質の変化が混在する購入単価指数とは異なるものです。)。
消費者物価指数では、POS情報からは得られない、家計消費の多くを占めるサービスなどを含む幅広い品目について、全国の代表的な店舗で価格を調査し、新商品の登場時、容量変更、新旧商品の品質調整についても適切な措置を講じています。また、テレビ、パソコンやカメラではPOS情報とヘドニック法を用いて品質調整済価格指数を作成しています。加えて、新旧製品に品質差が小さく、少ない特性で価格説明ができるビデオレコーダー、タブレット端末及びプリンタについては、固定スペック方式により指数を作成しています(G-11参照)。
G-10 価格は同じでも容量を少なくしたり、重量を軽くしたりしている商品が新たに販売されることがありますが、このようないわゆる「隠れた値上げ」は消費者物価指数には反映されているのですか。
消費者物価指数では、調査している製品(銘柄)が製造中止になって後継の新製品が発売された場合には、出回りの多い製品に変更し、新製品の迅速な取込みを図っています(G-1参照)。この際、調査している銘柄の品質に変化はなく、容量や重量のみが減った(あるいは増えた)場合は、その分を実質的な価格の上昇(あるいは下落)分として評価し、消費者物価指数に反映しています。
例えば、ジャムについて、価格は変えずに、重量だけを165gから150gと少なくしたような実質値上げの場合、重量の比(165/150)を新たに調査する150gの価格に乗じることで、実質値上げの影響を指数に反映させる処理を行っています。
なお、ポテトチップスやオレンジジュースなどの食料品のほか、洗濯用洗剤などでは、100gや1000mLといった単位重量や容量当たりの価格を調べていますので、重量や容量が変わったことによる実質的な価格変化は、随時、指数に反映されています。
G-11 固定スペック方式とはなんですか。
「固定スペック方式」とは、POS情報にある各機種の特性情報を利用し、別途選定したスペック(例えば、タブレット端末なら記憶容量64GB、ディスプレイサイズ10.2inchなど)に合致する商品のみをPOS情報から抽出することで品質一定とする手法です。
固定スペック方式は、小売物価統計調査における銘柄指定方式に近い手法ですが、銘柄指定方式と比べ多くの機種が選定されることで、個別機種の値動きの平坦化ができます。また、後継機種など新製品投入による商標変更において、選定したスペックに合致していれば発売当月から抽出ができます。固定スペック方式による品質固定は、ヘドニック法による品質調整と比べ計算が容易でわかりやすい手法です。
消費者物価指数では、新旧製品の品質差が小さく、少ない特性で価格説明ができるビデオレコーダー、タブレット端末及びプリンタの3品目について、固定スペック方式により指数を作成しています。
<固定スペック方式による機種抽出の例(タブレット端末)>
⇒ SSD容量や画面サイズなど、タブレット端末の価格に対して相関のある特性を選定
⇒ 選定した各特性について主要なスペックを選定
⇒ 選定したスペックを固定し、毎月のPOS情報から全てのスペックに合致する機種を抽出
具体的な計算方法については、「2020年消費者物価指数の解説」の「付2 POS情報を用いた品目別価格指数の算出(PDF:597KB)」に掲載されています。
【H ラスパイレス連鎖基準方式による消費者物価指数について】
H-1 参考指数の「ラスパイレス連鎖基準方式による消費者物価指数」とはどのような指数ですか。
日本の消費者物価指数は、消費構造を一定にした場合の物価変動を測定するために、固定基準ラスパイレス指数算式を採用しています。
一方、「ラスパイレス連鎖基準方式による消費者物価指数」(以下「連鎖指数」といいます。)は、毎年の消費構造の変化を反映させるために、ウエイトを基準年のものに固定するのではなく、毎年更新して算出する指数です。基本分類指数の公表と併せて毎月参考指数として公表しています。
H-2 連鎖指数はどのように作られますか。
連鎖指数はウエイトを毎年更新して算出するものです。統計局では以下のように算出しています。2021年6月を例に説明します。
(1) 最新(前年)のウエイトを用いて計算する2021年6月の連環指数を算出します。これは、2021年6月の価格を前年の2020年12月の価格で除した価格比を、前年に当たる2020年のウエイトを用いて加重平均したものです。
(2) 2021年6月の連環指数を2020年12月の連鎖指数に乗じて、2021年6月の連鎖指数を算出します。
[参考]
詳しい算式については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「付5 ラスパイレス連鎖基準方式による指数の作成(PDF:582KB)」を御覧ください。
H-3 連鎖指数は固定基準ラスパイレス指数と比べて、変化率にどのような違いがありますか。
一般的に、連鎖指数は固定基準ラスパイレス指数と比べて、変化率がプラスのときは上昇幅が小さくなり、マイナスのときは下落幅が大きくなる傾向があります。
例えば価格が大きく下落した品目が需要も増えて相対的な支出割合も拡大した場合、ウエイトを毎年更新する連鎖指数は、5年間は同じ基準年のウエイトを用いる固定基準ラスパイレス指数よりも、下落幅が大きくなると考えられます。また、連鎖指数では、前年12月=100とした連環指数を掛け合わせていくため、こうした指数を100に戻すこと(「リセット」)による影響もあります。
[参考]
詳しい算式については、「2020年基準消費者物価指数の解説」の「付5 ラスパイレス連鎖基準方式による指数の作成(PDF:582KB)」を御覧ください。
H-4 連鎖指数はどのような位置付けなのですか。
連鎖指数では、価格が上昇と下落を繰り返している品目がある場合、指数が高めになる「ドリフト」と呼ばれる現象が起きるおそれがあるといわれています。また、連鎖指数では、下位分類指数を加重平均しても上位分類指数とは一致しなくなります(これを加法整合性がないといいます。)。こうしたことから、連鎖指数は、参考指数という位置付けとしています。
なお、連鎖指数は、基本分類指数と毎月同じ日に公表していますので、どちらの指数も同じように利用することが可能です。
【I 消費税の取り扱いについて】
I-1 消費者物価指数では、消費税はどのように扱われているのですか。
消費者物価指数は、世帯が消費する財・サービスの価格の変動を測定することを目的としていることから、財やサービスの購入と一体となって徴収される消費税分を含めた消費者が実際に支払う価格を用いて作成されています。
国際労働機関(ILO)が作成している消費者物価指数の作成方法に関する国際基準でも消費税分を含めることとなっています。
I-2 消費税率引上げの影響を除いた消費者物価指数は公表しますか。
消費者物価指数は、世帯が消費する財・サービスの価格の変動を測定することを目的としていることから、消費税分を含めた価格を用いて作成しています。
他方、消費税率の引上げは消費者物価指数に一時的な要因による大きな変動をもたらすことから、その直接的な影響を除いた消費者物価の基調的な動きの分析に広く資するため、参考指数として、過去の税率引上げの影響を除いた消費税調整済指数を掲載しています。
注1)消費税率引上げの影響を除いた消費者物価指数を作成するためには、個々の商品やサービスごとに消費税額を正確に把握する必要があります。しかしながら、小売店舗や中間取引段階の事業所が免税事業者である場合など、小売価格に含まれる消費税額は同一商品でも異なることがあるほか、事業者によっては、一部の商品やサービスの価格を、税率引上げ分を超えて引き上げる一方で、他の商品やサービスの価格は据え置き、事業全体として適正な転嫁を行うような場合もあるとみられます。こうした個々のケースについて把握し、消費税率引上げの影響を正確に除いた消費者物価指数を作成することは困難な面があります。
注2)消費税調整済指数は、課税扱いとなる品目について一律に消費税率引上げの直接的な影響があるとみなした調整をしており、品目別に見た一律の調整による指数が実際の課税措置に完全には適合しておらず、過剰な調整(又は調整不足)となる場合があるため、利用には注意が必要です。
【その他】
1 新型コロナウイルス感染症の影響により、店舗の臨時休業や商品の一時的な在庫不足などで価格データが取集できない場合、消費者物価指数はどのように計算されますか。
消費者物価指数は主に小売物価統計調査によって得られた価格データから計算されます。店舗の臨時休業や商品の在庫不足などにより、価格データが得られなかった場合、月々の価格変動が小さく、市場における出回りが途切れないと考えられる品目などについては、前月の価格を用いて計算します。
生鮮食品や一部の衣料品など、季節的な価格変動がある品目などについては、当該価格データを外して、品目の指数を計算します。
※小売物価統計調査については、「小売物価統計調査(動向編)」を御覧ください。
2 新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年以降、外国パック旅行の中止及び再開の動きがありましたが、「外国パック旅行費」指数について、どのような対応をしていますか。
「外国パック旅行費」指数については、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの催行が中止となる中、安定的な価格取集が困難となったことから、2021年1月分結果以降、2020年同月分の「外国パック旅行費」指数を代入して補完する対応をとっていました。
外国パック旅行の催行も順次再開され、安定的な価格取集を継続して行えること及び旅行シーズンに価格が上昇する「外国パック旅行費」指数特有の動きが取集再開後も過去とおおむね符合していることが確認できたため、2024年1月分結果以降は従来どおりウェブスクレイピングにより取集した価格を用いて「外国パック旅行費」指数を作成します。
(注)上記の補完による対応開始から3年が経過しているため、「外国パック旅行費」指数の2024年1月分結果の前月比及び2024年1月分結果から12月分結果までの前年同月比には、2021年からの補完期間中の変化が含まれることになります。