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統計Today No.164
転出超過が続く東京都及び東京圏の状況
−住民基本台帳人口移動報告2020年8月の結果から−
総務省統計局統計調査部国勢統計課調査官 永井 恵子
住民基本台帳人口移動報告は、住民基本台帳に基づき、月々の国内における人口移動の状況を明らかにしています。
新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言が解除されてから3か月が経ち、人々の行動に変化はあったでしょうか。本稿では、8月の国内人口移動について、東京都及び東京圏への転入・転出の状況を中心に紹介します。
2020年8月の都道府県間移動者数は前年同月に比べ減少
都道府県間移動者数は、緊急事態宣言が発出された4月に前年同月に比べて-7.7%、5月に-31.5%と減少し、緊急事態宣言が解除された後の6月は1.3%とほぼ横ばいとなりましたが、再び新規陽性者数が増加した7月は-12.5%の減少に転じ、8月は引き続き-3.7%の減少となりました。(図1)
図1 都道府県間移動者数の推移(2020年1月〜8月)
東京都は転出者数が大幅に増加したことにより2か月連続の転出超過
2020年5月に外国人を含む移動者数の集計を開始した2013年7月以降で初めて転出超過となった東京都の転入・転出の状況は、8月、転入者数が2万7524人で前年同月に比べ3573人(前年同月比-11.5%)の減少、転出者数が3万2038人で前年同月に比べ4589人(同16.7%)の増加となり、その結果、転出者数が転入者数を4514人上回り、7月に続き2か月連続の転出超過となりました。(図2)
図2 東京都の転入超過数の推移(2013年7月〜2020年8月)
8月の他の道府県から東京都への転入・転出の状況をみると、42の道府県で東京都への転入者数が減少しており、特に千葉県、埼玉県、北海道、大阪府、神奈川県といった近隣又は人口の多い道府県で大きく減少しています。一方、44の道府県では東京都からの転出者数が増加しており、特に神奈川県、埼玉県、千葉県といった近隣の県で大きく増加しています。(図3、図4)
図3 東京都への転入者数の前年同月差(道府県、2020年7月・8月)
図4 東京都からの転出者数の前年同月差(道府県、2020年7月・8月)
転入者数から転出者数を差し引いた転入超過数を前年同月と比べると、神奈川県、千葉県、北海道、茨城県、静岡県など26道県で転入超過から転出超過に転じたほか、埼玉県など3県で転出超過数が拡大し、大阪府、愛知県、兵庫県など14府県で転入超過数が縮小しており、東京都の転出超過に寄与しています。(図5)
7月は、東京都への転入が大きく減少した一方で、転出の減少は小幅にとどまり、転出超過となりましたが、8月は転入の減少が継続する一方で、転出が近県を中心に大幅に増加し、その結果、転出超過数は7月の2522人から8月の4514人へと拡大しています。(図3、図4)
東京都の転出者数の前年同月差は、外国人を含む移動者数の集計を開始した2013年7月以降(対前年同月差は2014年7月以降)で、2020年3月に次ぐ大きさとなっています(前年同月比では過去最大)。
図5 8月の東京都の転入超過数(道府県、2019年・2020年)
また、東京都の転入超過数を年齢階級別にみると、0〜14歳、30歳以上の多くの階級で転出超過となっており、前年同月と比べると、25〜29歳などで転入超過数が縮小、また、30〜34歳などで転入超過から転出超過に転じ、35〜39歳などで転出超過数が拡大しています。(図6、図7)
20代、30代を中心に幅広い年齢階級で転入が減少、転出が増加しており、東京都の転出超過に寄与したことがうかがえます。
図6 8月の東京都の転入超過数(年齢5歳階級、2019年・2020年)
図7 8月の東京都の転入超過数の前年同月差(年齢5歳階級、2020年)
東京圏も2か月連続の転出超過
8月の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県及び千葉県)の転入・転出の状況をみると、転入者数は2万8452人で前年同月に比べ4632人(前年同月比-14.0%)の減少、転出者数は2万8911人で前年同月に比べ1584人(同5.8%)の増加となり、その結果、転出者数が転入者数を459人上回り、外国人を含む移動者の集計を開始した2013年7月以降で初めて転出超過となった7月に続き、2か月連続の転出超過となりました。
道府県別に東京圏の転入超過数をみると、大阪府、静岡県、茨城県、北海道など23道府県で転入超過から転出超過に転じたこと及び兵庫県など17府県で転入超過数が縮小したことなどが、東京圏が転出超過になったことに寄与しています。
7月と比べると転出超過数は縮小しましたが、転入者数が減少した道府県の数は39から42へ増加、転出者数が増加した道府県の数は14から34へと増加し、東京圏から転出する動きが全国的に広がっています。(図8)
図8 東京圏からの転出者数の前年同月差(2020年7月・8月)
終わりに
引き続き新規陽性者数が多く発生していた8月は、東京都及び東京圏で2か月連続の転出超過となりました。8月は東京都及び東京圏からの転出者数が前年に比べ増加しており、特に東京都から近県への転出者数が大幅に増加しています。テレワークの定着に伴う都心のオフィスの面積縮小や郊外への移転の動きも報道されており、通勤する必要性の低下から都心から郊外への住み替えの動きが起きている可能性も考えられます。
東京都への集中緩和の動きは、一過性のものなのか、今後も継続するものなのか、今後の動向にも御注目ください。
(令和2年9月29日)