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統計Today No.139
労働力調査における年齢区分の追加
― これからの経済活動を支えるコアな年齢層 ―
総務省統計局統計調査部国勢統計課労働力人口統計室長 長藤 洋明
1 年齢階級別にみた労働力人口の状況
直近10年間の労働力人口の推移をみると、2013年以降増加が続いています。「15〜64歳人口」は1995年がピークでその後減少、総人口自体も国勢調査でみると2015年に減少に転じ、人口減少社会が現実のものとなっています。そうした中で、2013年以降、労働力人口が増加しているのは、65歳以上の高齢者や女性などで多くの人が働くようになっているためです。(図1-1、図1-2、表)

出典:国勢調査

出典:労働力調査
(万人) | ||||
男 | 女 | |||
---|---|---|---|---|
15〜64歳 | 65歳以上 | 15〜64歳 | 65歳以上 | |
2012年 | 3420 | 375 | 2535 | 234 |
2017年 | 3289 | 494 | 2609 | 328 |
差 | -131 | 119 | 74 | 94 |
出典:労働力調査 |
2 年齢各歳別にみた労働力率の状況
このように「15〜64歳人口」だけでなく総人口も減少する中で労働力人口は増加していますが、どの年齢の労働力率が高いかをみるために、平成27年国勢調査の結果から年齢各歳別労働力率をみてみます。男性の労働力率をみると、17歳までは1%台から6%程度、18歳でも23%程度で、20歳で53.2%と初めて50%を超えます。25歳から59歳まで90%以上の水準で推移し、その後低下し、68歳で52.0%、69歳でも47.3%と50%に近い水準にあります。女性は、男性に比べ、全体として労働力率が低い水準にありますが、やはり20歳で初めて50%を超えています。また、かつて特徴とされた「M字型カーブ」は解消されつつあり、多くの女性が働くようになってきています。
このように過半数の人が労働力となっている年齢層、すなわち、労働力率が50%以上の水準にある年齢層が労働力の中心と考えると、ほぼ50%の69歳までをカバーする、20歳から69歳までが、現在の我が国の労働力の中核を担っている年齢層とみていいと思います。(図2)
図2 年齢各歳別労働力率(2015年)
3 年齢区分の経緯
国勢調査では、これまで「15歳未満」、「15〜64歳」、「65歳以上」の3つの年齢区分に分け、それぞれの動向をみています。この年齢区分になったのは、国際的な基準に合わせたことによります。1956年に、国際連合が、65歳以上人口の全人口に占める割合をもって高齢化の指標としたことを踏まえ、我が国も、「60歳以上」としていた区分を、1960年の国勢調査から、「65歳以上」に変更しました。それを受けて、「15〜59歳」としていた区分を、「15〜64歳」にしました。その後、労働力調査もその区分を用いて、「15〜64歳」と「65歳以上」について、労働力人口等の動向をみるようになりました。
ちなみに、1960年当時の「15〜19歳」の男性の労働力率は51.6%と過半数を超えており、女性も49.7%とほぼ50%となっています(昭和35年国勢調査「第27表 年令(5歳階級)、男女別15才以上労働力人口」。なお、年齢各歳別の集計はない。)。
この「15〜64歳」の区分は、我が国の労働力を担う中心的な年齢層として、人口や労働力率の動向などをみる上で重要な役割を果たしてきました。しかしながら、どの年齢層が労働力の中心となっているかは時代とともに変化するものです。そうした変化に応じて、年齢区分も見直す必要があるでしょう。
4 労働力の中核となる年齢区分の追加
先にみたとおり、20歳から69歳までの年齢層が我が国の労働力の中核となっているという現状からすると、雇用情勢をより的確に把握するという観点からは、この年齢層の動向をみていく必要があると思われます。そこで、今までの「15〜64歳」の年齢区分に加えて、この「20〜69歳」を労働力のコアな年齢区分として追加的に設定することが考えられます。
そうすれば、労働力の中核として経済活動を担っている「20〜69歳」の年齢区分について労働力率などの動きをみることが可能となり、雇用情勢を今まで以上に的確に把握できるようになることが期待できます。また、こうしたコアな年齢区分を追加することは、人口や労働力の動向とさまざまな経済指標との関連を分析することにも資すると考えられます。
人生100年時代の今、ますます多くの高齢者が働くようになっています。年齢区分も、目的やニーズに応じて、それに見合った区分を設けることが求められているといえるでしょう。労働力調査では新たな年齢区分の追加をできるだけ早期に行い、情報の提供に努めていきたいと思います。
(平成30年12月21日)
の項目は、政府統計の総合窓口「e-Stat」掲載の統計表です。