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統計Today No.130
消費者物価指数へのネット販売価格の反映
総務省統計局統計調査部消費統計課物価統計室長 中村 英昭
1 はじめに
最近、インターネット販売(以下「ネット販売」という。)が拡大しており、その影響で物価が押し下げられているのではないか、と言われることがあります。統計局が作成している消費者物価指数は、原則として実店舗で売られている小売価格を採用していますが、ネット販売価格を取り入れている品目もあります。また、近年のネットショッピングの増加やネット販売価格等の情報を取得する技術の進展を踏まえ、ネット販売価格の更なる捕捉・採用に向けた検討を進めています。今回は、その内容について詳しく紹介します。
2 現行の消費者物価指数においてネット販売価格が反映されている品目
(1)ネット販売価格を採用している品目
サプリメント(「健康保持用摂取品A」、「健康保持用摂取品B」)及び「航空運賃」については、ネットショッピングによる購入割合が高くなっています。このため、サプリメントは2005年基準から、「航空運賃」は2015年基準から、ネット販売価格を採用して指数を作成しています。(2)POSデータを利用している品目
製品サイクルが短いパソコン(「パソコン(デスクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」)及び「カメラ」については、POSデータを利用して重回帰分析を行い、製品間の価格差のうち品質に起因する部分を調整した指数を作成しています(ヘドニック法)。このPOSデータの中には、対面販売価格及びネット販売価格の両方が含まれています。(3)インターネットを通じて価格を調査(対面販売価格と同価格)している品目
「通信料(携帯電話)」や「映画観覧料」、「テーマパーク入場料」などは、インターネットを通じた価格取集が可能であり、その価格は店頭で販売されている価格と同じ価格となっています。このため、インターネットを通じて効率的に価格を調査しています。インターネットを通じて価格調査を行っている品目は、以下のとおりです。インターネットを通じて価格を調査(対面販売価格と同価格)している品目一覧
3 ネット販売価格の採用拡大に向けた取組
近年、共働き世帯の増加などにより、ネットショッピングがますます増加する中、ネット販売価格の更なる捕捉や指数品目への採用拡大が求められています。統計局では、ネット販売サイトから価格などの情報を自動的に取得する「ウェブスクレイピング」という技術を用いて価格取集を行い、得られたデータを基に価格指数を作成することができないか、検討を進めています。消費者物価指数は同一品質の商品の価格動向をみるため、ウェブスクレイピングによって取得したデータから、品質が一定となるように商品を選定する必要があります。しかしながら、例えば「エアコン」のデータを取得する場合、ネット販売サイトによって商品区分の範囲が異なることなどにより、リモコンなどの附属品やエアコン取付サービスなどの価格・附帯情報が混在してしまうことがあり、必ずしも同一品質の商品のみを取り出すことができるとは限りません。したがって、一定の品質を保つためにどう対応するか、十分に検討する必要があります。
今後、宿泊料、外国パック旅行、テレビなどの家電を中心に上記の課題について検討を行い、2018年度中に2020年基準改定における指数品目への採用の可否について結論を得たいと考えています。
ウェブスクレイピングのイメージ
4 終わりに
このように、統計局では新しい技術を活用しながら、消費者物価指数へのネット販売価格の採用拡大に向けた取組を進めています。時代に即した物価統計の作成・提供に向け、今後も引き続き検討を進めてまいります。
(平成30年7月13日)
の項目は、政府統計の総合窓口「e-Stat」掲載の統計表です。