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統計Today No.114
「人口ピラミッド」から日本の未来が見えてくる!?
〜高齢化と「団塊世代」、少子化と「団塊ジュニア」〜
総務省統計局統計調査部長 千野 雅人
はじめに
日本の社会は、人口の高齢化が世界に類を見ない速度で進行し、「超高齢社会」と言われるようになりました。
このような中で、総務省統計局では、毎年9月の「敬老の日」に際し、高齢者の人口や就業状況、家計収支などについて、「統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)」(統計トピックス)として取りまとめ、公表しています。この公表に当たっては、公益財団法人フォーリン・プレスセンターから、外国メディアに対するプレス・ブリーフィングを求められるなど、日本が直面する高齢化の問題は、国内のみならず海外からも高い関心が寄せられています。
そこで、本稿では、人口からみた日本の高齢化の状況や、人口統計の基本である「人口ピラミッド」から読み取れることなどについて、見てみたいと思います。
「高齢者割合」が日本よりも高い国はあるか?
日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は、27.3%となりました(平成28年(2016年)9月15日現在)。これは、統計開始以来、最高の水準です。中でも女性の高齢者割合は30.1%と高く、初めて3割を超えました。
では、このような日本の高齢化の状況は、世界の他の国々と比べると、どうなのでしょうか?
図1及び表は、この20年間の主要国の高齢者割合の推移を示したものです。日本の高齢者割合は、1990年代には欧州諸国とほぼ同水準でしたが、2000年代には主要国の中で最も高い水準となりました。高齢化の進行スピードも、棒グラフの伸び方から分かるように、主要国の中で最も早くなっています。
図1及び表には、分かりやすく主要国との比較を掲載しましたが、国連の統計によれば、国連に加盟する全ての国と比べても、日本の高齢者割合は最も高くなっています。第2位のイタリアと比べても4ポイントを超える差があり、今の日本の社会は、「世界一の超高齢社会」ということができます。
図1 主要国の高齢者割合の推移
表 主要国の高齢者割合の推移
資料:日本は、平成27年及び28年は「人口推計」、その他は「国勢調査」
他国は、World Population Prospects: The 2015 Revision(United Nations)の中位推計値
(注)日本は、平成27年及び28年は9月15日現在、その他の年は10月1日現在
他国は、各年7月1日現在
「人口ピラミッド」から何が分かるか?
高齢化のような人口の基本的な構造を簡潔に表現する方法として、「人口ピラミッド」があります。これは、縦軸の年齢ごとに人口を男女別の横棒グラフで表したものです。
この人口ピラミッドから、どのようなことが読み取れるのでしょうか?
例えば、社会経済との関係です。人口ピラミッドが縦長の長方形や三角形のような形をしている場合、人口の動きは、社会経済の動きに対して中立的であり、切り離して考えても良いのかもしれません。
一方、人口ピラミッドの中に大きな隆起がある場合、隆起部分の年齢層の人口は、他の年齢層の人口に比べて特別に多いということになります。すると、その人たちがどの年齢層にあるかによって、社会経済に様々な影響を及ぼすことになります。
人口ピラミッドの隆起部分の年齢層が、平均初婚年齢後の「30歳代」の場合には、出産する母親世代の人口が特別に多いことになりますので、出生率が低くても出生する子供の数は増加することがあります。また、家族を抱えて出費が多く、働き盛りと言われる「40歳代」の場合には、社会全体の消費や生産も活発になることが期待できるでしょう。一方、「60歳代」を超えると、その逆方向の影響が生じるかもしれません。
隆起部分の年齢層が、「65歳前後」の場合、65歳以上の高齢者人口は、その時点で大幅に増加しています。また、10年後には、75歳以上の高齢者人口が大幅に増加することになるでしょう。
日本の「人口ピラミッド」の特徴は何か?
では、日本の人口ピラミッドは、どのような形になっているのでしょうか?
図2は、平成27年(2015年)国勢調査(抽出速報集計)の結果による日本の人口ピラミッドです。この人口ピラミッドの際立つ特徴は、大きな隆起が二つあることです。
上の方の隆起は、いわゆる「団塊世代」(66〜68歳、1947〜49年生まれ)、下の方の隆起は、いわゆる「団塊ジュニア」(41〜44歳、1971〜74年生まれ)です。団塊世代に当たる66歳人口は216万人、団塊ジュニアに当たる41歳人口は197万人となっており、1歳児人口100万人の2倍前後にも達する大きな規模の人口となっています。
図2 日本の人口ピラミッド
資料:「平成27年(2015年)国勢調査(抽出速報集計)」(総務省統計局)
「団塊世代」「団塊ジュニア」から見えてくるものは何か?
「団塊世代」の方々は、2007年から60歳になり、2012年から65歳になりました。このため、2012年から3年間の高齢者人口(65歳以上人口)の増加は、毎年、100万人を超える著しいものとなりました。逆に、同期間の生産年齢人口(15〜64歳人口)の減少も、毎年、やはり100万人を超える著しいものとなったのです。
今後、団塊世代の方々は、2017年から70歳になり、健康寿命を超える年齢になります。すると、日常生活における健康上の問題が大きくなってくることが懸念されます。
「団塊ジュニア」の方々は、2001年から30歳になり、2011年から40歳になりました。この間、合計特殊出生率は1.4を下回るとても低い水準でしたが、出産する母親世代の人口が多かったことなどから、出生する子供の数は、それほど減少せず、ほぼ110万人前後で推移してきたのです。団塊ジュニアの方々が、出生児数の減少に歯止めをかけてきたと、言えるかもしれません。
しかし、今後は、団塊ジュニアの方々も40歳代後半となり、やがて50歳代となっていくため、出産する母親世代の人口は減少していきます。すると、出生率が上昇しても、出生する子供の数は減少していく、ということが予想されます。
統計データに不可欠なもの
以上のような分析は、複雑な事柄を人口という一面からシンプルに捉えたものです。少子高齢化の問題や団塊世代・団塊ジュニアと社会経済との関係の問題は、未婚化・晩婚化の進行、人々の意識の変化、消費行動や経済構造の変化など、様々な側面から分析を行う必要があります。
そのためには、信頼できる統計データの存在が欠かせません。最近では、統計データに基づく政策の立案・評価の重要性についての認識も、ますます高まってきています。
そして、このような統計データの多くは、国民や企業の皆様の統計調査への回答を基に作成されています。統計調査への回答が、統計データには不可欠なのです。
今後とも、統計調査に対する御理解と御回答を、どうぞよろしくお願いいたします。
(平成28年10月21日)