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統計Today No.69
統計におけるオープンデータの高度化
総務省統計局統計情報システム課長事務代理 奥田 直彦
情報通信技術の進展によるブロードバンドの普及やパソコン等の能力向上等国民・企業等が容易に大量なデータを扱える環境が整い、クラウド、ビッグデータ、オープンデータ等、いわゆる「データ」に対する大きな関心が寄せられています。さらに、国等が保有する公共データのビジネス活用等への期待も高まっています。このような状況を踏まえ、政府としても保有するデータを社会で効果的に利用できる環境(オープンデータ流通環境)の整備を進めていくこととしています。特に、オープンデータに関しては、「世界最先端IT国家創造宣言について」(平成25年6月14日閣議決定)、「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」(平成25年6月14日IT戦略本部決定)等に基づき、政府全体としての取組が進められているところです。
これらの取組により、公共データを含む様々なデータの加工・組合せを行うことによる新事業・新サービスの創出や官民協働による公共サービスの実現、行政の透明性・信頼性の向上につながるものと考えられます。
さて、オープンデータについて、政府の先駆者として、また国際的にもトップランナーとして先導している統計分野において、「統計におけるオープンデータの更なる高度化」を図るため、総務省統計局では、(独)統計センターと協力して、次の3つの取組を進めています。これにより、官民における統計データ利活用の高度化を促進し、新たな付加価値を創造するサービスや革新的な事業の創出等の支援につなげていくこととしています。
(1) API機能による統計データの高度利用環境の構築
統計データを機械判読に適したデータ形式で容易に取得できるよう、e-Statに新たにAPI機能を整備。
(2) 統計GIS機能の強化
統計GIS機能を強化し、ユーザー保有データの取り込み分析や任意に指定したエリアにおけるデータが利用可能になるような機能を整備。
(3) オンデマンドによる統計作成機能・方策の研究
公的機関や学術研究等の利用において、利用者が調査項目を選択するだけで統計結果を自動的に出力する、新しい形の統計提供サービスの研究を推進。
ここからは、試行運用を開始している、「(1)API機能による統計データの高度利用環境の構築」及び「(2)統計GIS機能の強化」について詳しく紹介します。
まず、「(1)API機能による統計データの高度利用環境の構築」について紹介します。API機能は、平成26年度にe-Statに整備することとしていますが、システム的な検証等を行うため、平成25年6月10日から試行運用を開始しました。試行運用は、(独)統計センターが運用する「次世代統計利用システム」(http://statdb.nstac.go.jp/ )上で行っており、総務省統計局の国勢調査、労働力調査等のデータが利用可能です。(同システム上で利用者登録を行えば、どなたでも利用できます。)
API機能は、これまでe-Statから利用者がパソコンを操作し、Excel形式等のデータを一つずつダウンロードして取得する必要があった統計データについて、機械的に取得が行えるものです。
API機能を活用すると、統計データを、人手を介することなく自動で機械判読が可能なデータ形式で取得することができ、例えば、1.利用者の情報システムにe-Statのデータを自動的に反映、2.ユーザー保有やインターネット上のデータ等と連動させた高度な統計データ分析等の利用が可能になります。(図表1参照)
【図表1】
運用の開始から約3か月が経過しましたが、その試行運用の状況(10月25日時点)は、ユーザー登録者が約1,300人(民間企業、学術研究者、官公庁、個人等)、API機能を利用するために必要なアプリケーションIDの発行数は約490件となっており、API機能を組み込んだシステム等からのデータ取得のリクエスト回数は290万回を超えるなど、高い関心と利用が広まっていることが伺えます。
実際にインターネット上で公開されている、今回のAPI機能を使った利活用事例をみますと、「地域ごとの統計データを利用して数値データを地図上で表示・比較」、「都道府県のランキング化を行うWebサイト」や、「時系列の統計データから人口や事務所数などの推移をグラフで可視化するWebサイト」、「携帯型端末でいつでも統計データが閲覧可能なアプリ」等の開発・公開がなされており、利用者の自由な視点で統計データの利活用につながる工夫がなされており、膨大な統計データを機械的に利活用可能なAPI機能を提供することは社会経済活動上も高い効果を生み出していくものと考えています。(図表2参照)
【図表2】
API機能については、今回の試行運用における利活用状況の分析、ニーズの把握、システム的な検証等を踏まえ、平成26年度にe-StatにAPI機能を整備し、各府省を含めた統計データ(基幹統計等49統計約6万表の統計表データ)の利用が可能となるよう準備を進めていく予定です。
次に、「(2)統計GIS機能の強化」について紹介します。GIS(Geographic Information System:地理情報システム)は、デジタル化された地図データと、統計データや位置、空間に関する情報等を統合的に扱う情報システムです。
API機能と同様に、システム的な検証等を行うため、平成25年10月18日から試行運用を開始しました。試行運用は、統計センターが運用する「次世代統計利用システム」(http://statdb.nstac.go.jp/)上で行っており、総務省統計局の国勢調査、経済センサス‐基礎調査等のデータが利用可能です。(同システム上で利用者登録を行えば、どなたでも利用できます。)
今回試行運用を開始した統計GIS機能では、地図上で任意に設定したエリアにおける統計データを表示することや、そこにユーザーが保有する各種データを取り込んで分析することが可能となるなどの機能を提供しています。(図表3参照)
【図表3】
運用の開始からまだ2週間足らずですが、その試行運用の状況(10月25日時点)は、ユーザー登録者が約200人(民間企業、学術研究者、官公庁、個人等)、システムへのログイン回数が400回と、利用開始時としては、まずまずの関心と利用が広まっているものと考えられます。
今回の機能強化により、統計GISに関して、防災や都市計画等の公的利用における促進や、商圏の設定や地域販売戦略のマーケティング等の民間利用における促進等につながるものと考えております。
統計におけるオープンデータの高度化について更に詳しく知りたい方は、 http://www.stat.go.jp/info/kouhou/opendata/index.htm
を参照してください。
統計局では、今後も、データの充実を図るとともに、API機能を用いたデータ提供アプリの開発・運用の検討等オープンデータの高度化を更に推進してまいります。
あわせて、9月27日に公表した「統計からみえる東京オリンピック時と現在の日本の状況」http://www.stat.go.jp/info/anotoki/pdf/olympic.pdf(PDF:101KB)等のような分かりやすい情報や統計数値の解説等を積極的に公表する等、利用しやすく付加価値の高い統計情報の提供に努めてまいります。
統計情報の提供等に関し、御意見・御要望等がございましたら、toukeisoudan@soumu.go.jpまで連絡ください。
(平成25年10月31日)