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統計Today No.63
東日本大震災の仕事への影響(岩手県・宮城県・福島県)
−平成24年就業構造基本調査の結果から−
総務省統計局統計調査部国勢統計課労働力人口統計室長 河野 好行
はじめに
総務省統計局では、昨年10月に全国で実施した就業構造基本調査を本年7月に公表する予定にしています。同調査は、震災後に実施する初めての就業構造に関する大規模調査であることから、調査事項の一つとして、「東日本大震災(原子力発電所事故を含む)の仕事への影響」を付け加えて実施しました。この調査事項に関しては、関係各方面から震災で大きな被害を受けた岩手県、宮城県及び福島県(以下「被災3県」という。)の状況を早期に明らかにする必要があるところから、去る3月8日に平成24年就業構造基本調査「東日本大震災の仕事への影響に関する結果-岩手県・宮城県・福島県-(速報)」として公表しました。
この中から震災時(平成23年3月)から調査時(平成24年10月)までの間の就業構造の変化を紹介したいと思います。
震災時に有業であった者は震災によってどのような影響を受けたか?
震災時の被災3県の有業者は259万4千人です。このうち、調査時までの間に、離職や休職など、震災の直接の被害によって仕事に何らかの影響を受けた者は110万6千人で、震災時の有業者に占める割合は約4割となっています。このうち休職した者が63万9千人と約半数を占め最も多く、収入の減少など「その他」の影響があった者が38万6千人、離職した者が8万1千人となりました。
注)被災3県における集計対象は調査時(平成24年10月1日)現在で把握した調査対象であるため、震災時から調査時までの間に避難等で3県以外の都道府県に転出した者は含まれていません。一方、調査時までの間に3県以外の都道府県から転入した者は含まれますので御留意ください。
震災によって離職した者は、その後(調査時までに)仕事を得られたか?
震災によって離職した者は8万1千人ですが、このうち調査時に有業であった者は4万8千人で、約6割の者が仕事に就くことができたものの、なお3万4千人が無業者となっています。有業者のうち雇用者は4万6千人で、正規の職員・従業員が1万9千人、非正規の職員・従業員が2万7千人となっています。雇用者に占める非正規の割合は59.0%と約6割を占めており、仕事への影響がなかった者の同割合(30.9%)と比べて約2倍の開きがあり、正規の仕事に就けていない状況にあることが分かります。
また、調査時の無業者は3万4千人で、このうち就業を希望している者は2万3千人、仕事を探している者は1万5千人となっています。
避難の有無によって仕事を得ることに違いがあるか?
調査時に避難している者及び震災後に自宅以外に転居した者(以下「避難した者」という。)は23万7千人で、このうち震災によって離職した者は2万6千人です。この離職した者のうち調査時に有業であった者が1万1千人で、離職した者に占める割合は44.7%です。
一方、避難しなかった者のうち、離職した者は4万5千人で、調査時に有業であった者が2万9千人、離職した者に占める有業者の割合は65.5%と、やはり避難しなかった者の方が避難した者に比べ仕事を得られた割合が高くなっています。
ただし、離職した者の年齢構成をみると、避難した者の方が避難しなかった者に比べ高齢者の比率が高く、この点に留意する必要があります。
最後に
平成24年就業構造基本調査の全都道府県の結果は、本年7月に公表する予定にしています。この結果には、被災3県以外の地域に避難している者たちも集計対象となりますので、震災後の就業構造の変化を更に精緻に明らかにすることができます。御期待ください。
(平成25年3月25日)