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統計Today No.57
物価の地域別や店舗形態別の実態など構造面を明らかにする
−小売物価統計調査 構造編の開始について−
総務省統計局統計調査部物価統計室長 栗原 直樹
小売物価統計調査とは
近年、我が国では物価が持続的に下落するデフレからの脱却が最重要課題の一つとなる中で、物価の動向を明らかにする物価統計には注目が集まっており、中でも世帯が購入する各種商品の価格の変動を総合的に表す消費者物価指数(CPI)は特に重要な指標となっています。
その消費者物価指数の作成のための基礎データを提供しているのが小売物価統計調査であり、毎月、全国の約26,000の店舗において、家計が購入する商品の価格及びサービスの料金を調査しています。
小売物価統計調査の結果から作成される消費者物価指数は、政府による物価情勢の基調判断に用いられるほか、金融政策や年金給付などの施策の基礎資料として利用されています。
物価の構造分析に関するニーズの高まりへの対応
このように小売物価統計調査により、全国の物価の毎月の動向を明らかにする一方で、物価の地域間での違いや、店舗形態による違いなど構造面を明らかにする調査として、従来、5年周期で行われていた全国物価統計調査がありました。
しかしながら、社会経済情勢が変化し、商品の流通構造や消費者の消費行動などの変化が進む中で、5年に一度の調査では物価の構造分析に関するニーズなどに十分に応えることができないという問題がありました。
このため、全国物価統計調査を発展的に見直し、同調査で調べていた地域別価格差、店舗形態別価格及び銘柄別価格に関する事項を、新たに小売物価統計調査の「構造編」として盛り込み、物価の構造面についてもより迅速に把握できるようにすることとなりました。なお、これに伴い、全国物価統計調査は中止するとともに、従来の小売物価統計調査の調査内容は「動向編」として位置付けられます。
この新たな「構造編」は、来年1月の調査から開始されます。このように、小売物価統計調査について、従来の「動向編」に「構造編」が加わり、両者が車の両輪として、我が国の物価の実態について、様々な角度からより適時に明らかにしていく体制が整うこととなりました。
「構造編」の結果公表と活用
「構造編」の最初の調査結果は、平成25年平均の結果を平成26年度中に公表する予定です。
調査結果からは、次のようなことが分かります。
- 地域別の物価の水準を表す地域差指数について、従来の県庁所在市別の結果に加え、都道府県別の結果も、毎年分かるようになること
- スーパー、小売店、量販店等店舗の形態と価格との関係が明らかになること
- 売れ筋の銘柄と、販売形態の異なる銘柄との価格の違いが明らかになること(東京都区部について)
など
また、調査結果は、次のように幅広く利活用されることが見込まれます。
- 物価の地域間の比較などを通じて、各地域の生活水準と物価の関係などを把握し、国による雇用政策や社会保障政策等の立案や白書等における基礎資料としての利用
- 地域の活性化に向けて、地方公共団体による各地域の経済計画や物価対策の立案のための基礎資料としての利用
- 店舗形態別や銘柄別の価格の分析を通じて、「動向編」における調査対象の選定についての考察など、消費者物価指数の精度向上に向けた検討への利用
- 民間研究機関等における物価の地域間格差の分析や小売物価構造等の分析における利用
など
《図:都道府県別総合指数》
注)このグラフは、平成19年全国物価統計調査結果による都道府県別の物価水準(総合指数 全国平均=100)を表したものである。
最後に
「構造編」を含む小売物価統計調査の実施に当たっては、都道府県知事から任命を受けた調査員が全国の店舗等に伺って、対象となる品目の価格をお尋ねします。我が国の物価情勢を明らかにするために大変重要な調査でありますので、調査対象となられた皆様におかれては、調査への御協力を何とぞよろしくお願い申し上げます。
(平成24年12月13日)