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統計Today No.23
「なるほど統計学園」開校! − 統計学習サイトのリニューアル
総務省統計局統計情報システム課長 三上 明輝
総務省統計局では、この度、統計学習サイトを一新し、児童・生徒向けサイトとして「なるほど統計学園」を、先生向けサイトとして「統計学習の指導のために(先生向け)」をオープンしました。
なぜ今、統計学習サイトを一新するのか
昨年4月に全面施行された統計法(総務省)は、公的統計が国民の合理的な意思決定を支える情報基盤であるとの考えに立って制定されています。ますます複雑になる経済社会の中で、国や自治体はもちろん、個々の事業者や国民一人一人も、重要な意思決定に当たっては「カン」や「印象」ではなく、統計に代表される客観的なデータを支えにするようになっています。
小学校・中学校・高等学校では、今、新しい学習指導要領に移行しつつあります。このような時代の流れを受けて、数学では統計に関する内容が大幅に拡充されることになっています。児童・生徒にとってはもちろん、学校の先生方にとっても、これまでなじみの少なかった統計の学習に取り組むことは大きな挑戦といえるのではないでしょうか。
統計局では、これまでも「なるほどデータforきっず」を通じて小中学生向けに主に統計データの提供を行ってきましたが、学校で統計教育の充実が図られるこのタイミングをとらえて、統計データの提供にとどまらず、児童・生徒が統計を読み解く上で必要な幅広い知識を楽しみながら学べるサイトを立ち上げることとしました。あわせて、学校の先生向けにも新規にコンテンツを開発し、児童・生徒向けのサイトから独立させて、統計を教える側に立つ先生方のサポートにも力を入れました。
こうした取組は、平成21年3月に閣議決定された「公的統計の整備に関する基本的な計画」(総務省)の中でうたわれている、統計に対する国民の理解の促進にも中長期的に大きく資するものと考えます。統計局ホームページの中で従来の統計学習サイトはやや存在感を欠いていた面が否めませんが、統計局として、今後は統計学習サイトをコアコンテンツの一つに位置づけて取り組んでまいります。
新サイトはどのように開発されたのか
児童・生徒向けサイト(「なるほど統計学園」)については、いわゆる「お役所的」な、取り付きにくい内容になることを避けるため、統計局・政策統括官・統計研修所の職員の中から意欲とアイデアを持った有志を募り、新サイトのコンセプトやターゲットの明確化、キャラクター設定、コンテンツ開発等に取り組みました。
先生向けサイト(「統計学習の指導のために(先生向け)」)は、新しい学習指導要領に沿って実際に授業を行う学校の先生方をサポートすることを目的としています。効果的な授業の進め方や必要な教材については専門的な知見が必要となりますので、コンテンツの開発に当たっては、学校の現場で児童・生徒と接している先生や統計教育の専門家の意見を取り入れることが特に必要と考えました。このため、昨年度「統計局ホームページを通じた統計教育の拡充に関する懇談会」(渡辺美智子東洋大学経済学部教授を座長に、中学校・高等学校の先生方など10名で構成)を開催して、新サイトに掲載する授業モデルや補助教材の開発に当たりました。同懇談会に御参加いただいた先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
新サイトのコンセプトは何か
「なるほど統計学園」の開発に当たっては、前述のプロジェクトチームで民間や各府省の子ども向け学習サイト、諸外国統計局の統計学習サイト等も研究し、統計局ホームページを通じて子ども向けに情報を発信する際にどのようなコンセプトが適当・必要なのか明確化しました。
「大人の押しつけではなく、子どもたちが自発的に歩き回りたくなるサイト」、「算数・数学としての統計や統計局が作成・提供している統計だけでなく、社会の出来事を理解するための統計までカバーするサイト」、「統計に関して何かを発見し、気づき、納得し、親しみを感じるようになるサイト」、そのようなサイトを目指しました。どこまで成功しているのかは今後の評価を待つほかありませんが、サイトの名称(なるほど統計学園)から、サイト内の階層やレイアウト、コンテンツ内容、キャラクターに至るまで、すべてが「発見・気づき」「納得」「親しみ」といったキーコンセプトの実現を助けるように開発されたものです。
これに対して、先生向けサイトは実用的かつシンプルを旨としています。授業で使いやすい、児童・生徒にそのまま紹介できる、先生方の統計に対する理解が深まる、そのような視点に立ってコンテンツを開発・掲載しています。
どのような内容なのか
「なるほど統計学園」では、「探す・使う・作る」「学ぶ・知る」「親しむ」「遊ぶ」の四つのカテゴリーの下で各コンテンツを展開しています。
「探す・使う・作る」では、160種類を超える統計データを探しやすく、加工しやすい形で提供するコーナーや、統計を使った自由研究のヒントなどを掲載しています。「学ぶ・知る」には、統計に関する基本的な疑問や統計調査プロセスに関する解説、統計に関する誤解・誤用をテーマにした掛け合いのほか、子どもたちから実際に質問を受け付けてその回答を掲載するコーナーなどがあります。「親しむ」は、「○○の日」などを統計で紹介するコンテンツ、各都道府県とその県庁所在市が全国1位になっているデータ紹介、統計が禁止された架空の国をめぐる寓話(ぐうわ)などで構成されています。「遊ぶ」では、統計調査の結果から統計の歴史まで幅広いテーマを扱うレベル別三択クイズなどをお楽しみいただけます。
先生向けサイトの中心は、「授業モデル」と「補助教材」のコーナーです。「授業モデル」では、前述の懇談会に参加された先生方が統計局の実施する統計調査の結果等を素材として開発した多彩な授業モデルを掲載しています。今後の取組として、各地の先生方に授業モデルの提供を呼び掛け、このサイトを通じてシェアしていくことも予定しています。「補助教材」は、学校の先生方をサポートするために統計局において開発したコンテンツです。
いずれのサイトも、ここでの説明に想像をめぐらせるより、まずはアクセスして実際の内容を御覧ください。
今後に向けて
限られた時間と予算の中で開設にこぎ着けたサイトでもあり、特に「なるほど統計学園」では大部分が有志職員による手作りコンテンツですので、利用者の目線からはまだまだ至らぬ部分があることでしょう。
統計局としては、今回のリニューアルオープンは今後に向けての第一歩と考えています。「なるほど統計学園」も、先生向けサイトも、サイト内に利用者からのフィードバックの仕組みを設けており、今後のサイト更新に当たってそうした声を十分にいかしてまいります。サイトにアクセスいただいた皆様からの積極的なフィードバックをお待ちしております。
終わりに
「タイムマシン」や「宇宙戦争」といったSF小説で有名なイギリスの作家H.G.ウェルズ(1866-1946)は1903年の著作の中で − 統計的な思考(statistical thinking)は、いつの日か、読み書きの能力と同じくらい、優れた市民であるために欠かせないものになるであろう − といった趣旨のことを述べています。
ウェルズが100年以上前に「いつの日か」と言ったその日が、ついにやって来たのかもしれません。
「なるほど統計学園」にアクセスしてくれた子どもたちが、日本語を読み書きするのと同じくらいの感覚で、統計に親しみ、読み解き、暮らしの中で使いこなすようになる、そんなことを願いながら、統計局は今後もサイトの発展・充実を図ってまいります。リニューアルされた統計学習サイト「なるほど統計学園」と「統計学習の指導のために(先生向け)」をどうぞ御利用ください。
(平成22年5月12日)