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統計Today No.9
人口減少社会「元年」は、いつか?
総務省統計局統計調査部国勢統計課長 千野 雅人
来年2010年10月1日に、日本に住むすべての人を対象として、5年に一度の「国勢調査」が実施されます。「国勢調査」の結果は、国や地方公共団体の行政や学術研究、企業経営などに幅広く利用され、私たちの暮らしにとって欠くことのできない資料となります。
「人口減少」の発端
今や日本の社会にすっかり定着した「人口減少社会」という言葉が、専門家以外の間でも広く本格的に用いられるようになったのは、2005年12月に、「2005年国勢調査」の最初の集計結果である速報人口を統計局が公表したころからです。
その際、統計局は、2005年10月1日現在の日本の人口について、「1年前の推計人口に比べ2万人の減少、我が国の人口は減少局面に入りつつあると見られる。」と発表しました。これが「総人口、初の減少」といった見出しで新聞記事に大きく掲載されるなどして、人口減少が、現実の問題として広く注目されるようになったのです。
「人口静止社会」の時期
それでは、日本の社会は、本当に2005年から「人口減少社会」になったのでしょうか?実は、そう単純には言えそうもないのです。
その後の日本の人口の動きを「推計人口」(※)からみると、2005年に戦後初めての減少となった後は、2006年に2,000人の増加、2007年に1,000人の増加と、日本の人口は2年連続してわずかに増加しているのです。しかし、この増加は、増減率でみると0.00%とほとんどゼロと言えるものであり、わずかな増加というよりも、むしろ横ばい、あるいは静止といった方が正解のようです。つまり、2005年から2007年ごろの時期は、日本の社会は、人口減少社会というよりも、「人口静止社会」であったわけです。
(※) 「国勢調査」による人口を基に、毎月の日本の人口を推計した統計
人口減少社会「元年」は
では、日本の社会は、いつごろから、人口が継続して減少する「人口減少社会」になるのでしょうか?
実は、2008年には、7万9000人の減少と、日本の人口は再び減少に転じました。さらに、その後の人口の動きを月別にみても、2008年以降現在まで、いずれの月においても、人口は前年に比べて減少しており、しかも、減少率は徐々に大きくなってきています。つまり、2008年が、人口が継続して減少する社会の始まりの年〜人口減少社会「元年」と言えそうなのです。
正確なデータの提供のために
このように、「国勢調査」の結果を基に、単に人口の動きを追うだけでも、これだけのことが分かります。このほかにも、「国勢調査」の結果からは、年齢区分別の人口や産業別の就業者数、世帯の構造など、様々な含蓄の深い事実が見えてきます。
これらのデータをきちんと提供するためには、「国勢調査」を正確かつ円滑に実施することが不可欠です。このため、統計局では、都道府県や市区町村と一体となり、「2010年国勢調査」の実施に向け、万全の準備を進めてまいりたいと考えております。
皆様におかれましても、「国勢調査」への御理解、御支援を、どうぞよろしくお願いいたします。
<関連記事>
No.35 平成22年国勢調査の結果公表(1)−人口速報集計−(平成23年3月30日掲載)
(平成21年7月3日)
<筆者追記>
「2010年国勢調査」の結果を基に、「人口推計」による人口が改定されました(2012年1月)。
改定後のデータにより人口の動きをみると、日本の人口は、2005年に戦後初の減少となった後は再び増加し、2007〜2010年の間、1億2800万人前後とほぼ横ばいで推移しました(「人口静止社会」)。しかし、2011年には26万人の減少となり、その後の月別の人口も相当程度の減少が続いています。最新のデータをみると、2011年が、人口が継続して減少する社会の始まりの年〜人口減少社会「元年」と言えそうです。
(合計特殊出生率の回復や外国人人口の増加などにより、日本の人口減少の時期は、予想よりも少々後ろにずれたようです。)
(平成24年11月28日)