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統計Today No.5
新統計法の全面施行を迎えて
総務省政策統括官(統計基準担当) 中田 睦
新統計法の全面施行
平成21年4月1日から、新たな統計法(平成19年法律第53号)が全面施行されました。新統計法は、戦後間もない昭和22年に成立した旧統計法を60年ぶりに抜本的に改めたものであり、平成19年5月に国会において全会一致で可決・成立し公布された後、政省令の制定など、施行のための準備を経て、今回、全面施行されました。
今回の抜本改正の目的は、統計に関する法制度を見直し、公的統計の位置付けを「行政のための統計」から「社会の情報基盤としての統計」に転換させることにあります。
新統計法の全面施行を迎え、ここでは、新統計法により何がどのように変わるのかを説明します。
新統計法で変わること
(1)公的統計の総合的・計画的整備の推進
新統計法では、公的統計の整備に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(基本計画)を策定することになっています。この計画は、施策展開に当たっての基本的な考え方やおおむね5年間に取り組む具体的な措置から構成され、内閣府に設置された学識経験者から構成される「統計委員会」やパブリックコメントによる国民の意見を踏まえた上で、閣議により決定されることになっています。最初の基本計画は、一部先行して施行された新統計法に基づき平成21年3月13日に閣議決定されました。
基本計画により、今後は、各府省がその所掌に応じてそれぞれ作成している統計が、政府一体として体系的に整備されていくことが期待されます。
(2)統計調査の対象者の秘密保護の強化
国民のプライバシー意識が高まる中、統計調査の対象者の秘密保護を磐石(ばんじゃく)なものとするため、統計調査によって集められた情報などを統計の作成に関連する目的以外に利用・提供した者や、守秘義務規定に違反した者に対する罰則を整備強化しました。
また、近年、国の統計調査をかたって情報を盗み取ろうとする詐欺行為が発生していますが、この種の行為を厳しく取り締まるため、「かたり調査」を明確に禁止する規定を設けています。
(3)統計作成への行政記録の活用促進
国民や企業の統計調査への負担感が増していることを踏まえ、行政機関が日常の業務の中で収集・蓄積している「行政記録情報」(登記情報等)を統計の作成に活用する仕組みを設けました。行政記録情報を積極的に活用すれば、統計作成の正確性・効率性を向上しつつ、調査を受ける国民や企業の負担を軽減させることが可能となります。
(4)統計データの利用促進
新しい形の統計データの利用制度を設けました。従来、基本的に民間では、行政機関が作成・公表した既定の集計表のみ利用可能でしたが、学術研究機関等において、調査票に記載された情報を利用して研究目的に応じた任意の集計・分析をしたいと望む声が高まっていました。また、諸外国においては、調査票に記載された国民や企業の秘密を保護しつつ、調査票の情報を研究者に提供する動きが広がってきていました。そのため、新統計法では、学術研究や高等教育目的で、一般からの委託に応じて既存の調査票から新たな集計表を作成・提供したり、匿名性を確保した調査票情報を提供したりする新たな統計データの利用制度を整備しました。
この制度により、国民や企業の秘密を保護した上で、統計データの多様で高度な利用が広がることが期待されます。
公的統計の今後
新統計法は、第1条において法律の目的を「公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ、(中略)公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与すること」と規定しています。総務省政策統括官(統計基準担当)は、今後、この目的を達成するため、新統計法及び基本計画にのっとり効率的な統計行政の運営に邁進(まいしん)してまいります。
国民の皆様におかれましても、統計が国や地方公共団体における政策判断の資料としてのみならず、家庭や企業での様々な意思決定や学術研究機関における各種研究等に幅広く利用されていることを御理解いただき、統計調査等に引き続き御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
(平成21年4月3日)