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【米国におけるボランティア現場レポート】 黒川 諭一(米国在住) |
米国におけるボランティア現場レポート 仕事で米国に駐在し,約1年半になります。2度目の駐在ですので,およそ5年を米国カリフォルニア州で過ごしていることになります。 学生時代からの山好きが高じ,今回は山の麓町に居を構えました。週末は一人で運動がてらハイキング三昧だったのですが,ふとした事からそのステートパーク(州立公園)のレインジャー(森林警備隊)が登山道整備のボランティアを募っている事を眼にし,参加する事にしました。どうせ一人で定期的に山に入っているのであれば,ご縁があって住んでいる地元にこの活動を通じ何か還元できればと考えた訳です(とは言っても,恩恵を被るのは登山愛好家のみで偏ってはいる訳ですが。)。 活動の内容は月2回(土曜,雨天中止),レインジャーの指揮の下,登山道の整備で,具体的には登山道のでこぼこを埋めたり,雨水を流す側溝を掘ったり,草木の伐採等です。 私の参加している州立公園は約20程の登山コースがありますので,都度レインジャーの指示に従い所定の場所に8時半集合,作業は3時位まで続きます。皆,手弁当持参で30分程の食事休憩以外は皆本当に(驚くほど懸命に)黙々と働きます。 参加人員は毎回約20名程で男女半々,下は20歳台から最高齢者はジムという78歳のおじいさんです。低山とは言え,私でも場所によっては息の切れる登山道を装備を持ち歩く訳ですからジム氏の意欲には脱帽です。 性別・年齢に関係なく,全く同等の作業をします(勿論,各人が作業内容を選択できます。)。人種としては私の参加している現場ではほぼ100%白人で,稀に米国系の中国人が参加している状況です。カリフォルニアの場合,人口の約半数弱がヒスパニック系(主にメキシカン系)とアジア系と言われてますので,山という偏った環境とは言え,興味深い現象だと思います。 作業道具としては登山道整備の場合は,ツルハシ,スコップ,熊手,草木伐採の場合はチェーンソー(ヘルメット,ゴーグル,ウェストベルト含む。),植木バサミ,全てレインジャーが準備してくれます。持参装備は皮手袋だけ。危険作業を当然伴いますが全て自己責任です。自己責任が大前提で,皆活動に参加していると思えます。 こちらにはポイズンオークス(強力な漆科)が繁茂しており,実は私も伐採作業の際2度程やられ通院をする羽目になりましたがこれも自己責任です。訴訟多発社会とこの自己責任の概念が同居しているところが米国のダイナミズムと言えるのかもしれません。 ボランティアに参加する者は与えるのみ,一切を組織には求めず,と言う姿勢で,正に社会奉仕精神の原点が定着していると言えるのかもしれません。宗教的なものが精神的背景にあるのかもしれません。 問題点としては,寄せ集め部隊となりますので,組織としての指揮系統が曖昧な部分。先日も作業中に山火事を発見し,レインジャーは通報の為一人山を一目散に駆け下りてしまった訳ですが,山に残されたボランティア部隊は誰が指揮権をもって誘導するか等,後の反省会で皆で議論しました。 結論としては常にリーダーは当然レインジャー,今後は都度サブリーダーを決めレインジャー不在時緊急時対応はサブリーダーの指揮下ということになりました。 勿論グループ・規模等により完成度は異なるでしょう,少なくとも私の所属するグループではこの点が当面の課題と言えます。 一般的なイメージのボランティア活動とは異なるステートパークという土俵での全くの私見ではありますが,活動をしていてとてもすがすがしく今後もできる限り参加していきたいと思います。 以上,私の米国における経験は,日本におけるボランティアとは異なった印象を受けた一面もありました。 社会生活基本調査では,ボランティア活動を多方面から分析していると聞いています。 国際的な比較の研究なども進むと,また,面白い結果が生まれることでしょう。 |