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第3章 家計からわかる暮らしの特徴
家計支出の内容は、住んでいる地域によって違ったり、暮らしぶりの変化に伴い変わります。ここでは、家計からわかる暮らしの特徴を取り上げてみます。
1. 食生活から垣間見える土地柄
消費者の食生活には土地柄によって特徴が表れます。
都道府県庁所在市及び政令指定都市別の結果(二人以上の世帯)から、代表的な品目を取り上げてみました。
「ぶり」の支出金額全国一の富山市
富山市の2020〜2022年平均のぶりの1世帯当たりの年間支出金額は6,763円で、全国平均(2,919円)の約2.3倍となっています。
天然のいけすといわれる富山湾で冬に捕れる寒ぶりは「富山県のさかな」に選定されており、県を代表する魚になっています。
「トマト」の支出金額全国一の千葉市
千葉市の2020〜2022年平均のトマトの1世帯当たりの年間支出金額は10,905円で、全国平均(8,041円)の約1.4倍となっています。
千葉県は農業が盛んであり、特に落花生が有名ですが、トマトの生産量も全国で上位に入っています。
「他の柑きつ類」の支出金額全国一の松山市
松山市は、伊予かん、ぽんかん、不知火などの他の柑きつ類の2020〜2022年平均の1世帯当たりの年間支出金額は6,439円で、全国平均(2,347円)の約2.7倍となっています。
愛媛県は一年間を通して温暖で晴れの日が多く、畑の土の水はけが良いことなど、柑きつ類を作るための良い環境に恵まれています。
下の表は、2020〜2022年平均の品目別「年間支出金額」又は「年間購入数量」が、全国で上位(青の太字は1位)である主な品目(食料)について、それぞれの地域の特徴を踏まえ、まとめたものです。
都道府県庁所在市 |
品目 |
---|---|
札幌市 | 他の生鮮肉(羊肉など)、さけ、ビール、ウイスキー |
青森市 | いか、ほたて貝、さけ |
盛岡市 | 中華麺、さんま、わかめ |
仙台市 | かまぼこ、わかめ、清酒 |
秋田市 | 生しいたけ、だいこん漬、ほうれんそう |
山形市 | 中華そば(外食)、こんにゃく、他の果物(さくらんぼ、洋梨など) |
福島市 | 納豆、桃、卵 |
水戸市 | メロン、せんべい、しじみ |
宇都宮市 | いちご、だいこん、ぎょうざ |
前橋市 | ドレッシング、すし(弁当)、乳酸菌飲料 |
さいたま市 | チューハイ・カクテル、プリン、パスタ |
千葉市 | キウイフルーツ、トマト、レタス |
東京都区部 | チーズ、ワイン、バター |
横浜市 | かぼちゃ、しゅうまい、紅茶 |
新潟市 | 塩さけ、さやまめ、天ぷら・フライ |
富山市 | ぶり、オレンジ、もち |
金沢市 | ケーキ、アイスクリーム・シャーベット、れんこん |
福井市 | 油揚げ・がんもどき、コロッケ、カツレツ |
甲府市 | ぶどう、あさり、まぐろ |
長野市 | 小麦粉、えのきたけ、りんご |
岐阜市 | 柿、和食(外食)、喫茶代 |
静岡市 | まぐろ、しらす干し、じゃがいも、緑茶 |
名古屋市 | すいか、和食(外食)、喫茶代 |
津市 | 魚介のつくだ煮、あさり |
大津市 | コーヒー、かぼちゃ、牛肉 |
京都市 | 他の野菜の漬物(千枚漬など)、バナナ、コーヒー |
大阪市 | たこ、はくさい、乳飲料 |
神戸市 | 食パン、マーガリン、キウイフルーツ |
奈良市 | 牛肉、生しいたけ、食用油 |
和歌山市 | 梅干し、みかん、さば |
鳥取市 | かに、いわし、かれい、梨 |
松江市 | しじみ、さば、梨 |
岡山市 | ぶどう、桃、ソース |
広島市 | かき(貝)、ソース、バナナ |
山口市 | あじ、しめじ、砂糖 |
徳島市 | さつまいも、ハンバーガー、ちくわ |
高松市 | 生うどん・そば、日本そば・うどん(外食) |
松山市 | 他の柑きつ類(伊予かんなど)、たい、ちくわ、えび |
高知市 | かつお、はくさい漬、飲酒代 |
福岡市 | たらこ、鶏肉、風味調味料 |
佐賀市 | たい、ごぼう、れんこん、干しのり |
長崎市 | あじ、カステラ、かまぼこ |
熊本市 | 合いびき肉、マヨネーズ・マヨネーズ風調味料、鶏肉 |
大分市 | 干ししいたけ、焼肉、酢 |
宮崎市 | ぎょうざ、焼酎、鶏肉 |
鹿児島市 | 揚げかまぼこ、酢、焼酎 |
那覇市 | かつお節・削り節、にんじん、ハンバーグ |
政令指定都市 |
品目 |
---|---|
川崎市 | おにぎり・その他、ジャム、パスタ |
相模原市 | レタス、もち、ピーマン |
浜松市 | うなぎのかば焼き、ぎょうざ、緑茶 |
堺市 | はくさい、えび、たこ |
北九州市 | さしみ盛合わせ、いわし、たらこ |
2. 最近の特徴的な支出
最近の家計消費の動き
2022年の消費支出は実質1.2%の増加となり、2年連続の増加
2022年の二人以上の世帯(平均世帯人員2.91人、世帯主の平均年齢60.1歳)の消費支出は、1世帯当たり1か月平均290,865円で前年に比べ名目4.2%の増加となりました。また、物価変動(3.0%)の影響を除いた実質でも1.2%の増加となりました。新型コロナウイルス感染症の影響がない2019年と比べると、消費支出は、名目0.9%、実質3.5%の減少となりました。
2022年における月別の動き
2022年の消費支出を月別にみると、1月及び2月は、前年が低水準だった反動などにより増加となりました。
3月は、内食需要の縮小により、「魚介類」、「野菜・海藻」などが減少したことなどで、実質2.3%の減少となりました。
4月及び5月も、内食需要の縮小は続いたものの、行動制限がなくなったことで外出した人が増加し、ゴールデンウィークの旅行や帰省需要を中心に「教養娯楽サービス」などが増加したことで減少幅が縮小し、それぞれ実質1.7%、実質0.5%の減少となりました。
6、7月及び8月は、「外食」、「交通」、「教養娯楽サービス」などが増加し、それぞれ実質3.5%、実質3.4%、実質5.1%の増加となりました。特に、8月は、前年が緊急事態宣言の発令で低水準だった反動や、お盆の帰省や旅行需要などにより、消費支出の増加幅は前月から拡大しました。
図 3-1 消費支出の対前年同月増減率(二人以上の世帯)
統計豆知識 〜名目と実質〜
「名目」とは額面どおりの金額で、普段私たちがスーパーなどで目にしている金額そのものです。一方、「実質」とは、物価の変動の影響を取り除いたものです。
支出金額の名目増減率は、支払った金額の動きを示し、実質増減率は、支払った金額(名目)から消費者物価指数の変化分を取り除いた実質的な金額の動きを示します。実質増減率は、数量や品質の変化分に当たります。
2022年における主な品目別の動き
「電気代」の1か月当たりの支出金額を月別にみると、燃料価格の高騰や為替相場における円安を背景とした電気料金値上げなどの影響により、前年同月と比べ、高い水準で推移しました。
図 3-2-1 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)
「たまねぎ」についてみると、2021年夏に生産地が干ばつに見舞われたことよる、価格高騰などの影響で、2022年は年初から夏にかけて、前年同月と比べ、高い水準で推移しました。
図 3-2-2 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)
「宿泊料」についてみると、年初から、前年同月に比べ、高い水準で推移していましたが、まん延防止等重点措置が解除(3月21日)され、行動制限がなくなったことや、政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」(10月11日から12月27日宿泊分まで)などによる影響もあり、年後半は、新型コロナウイルス感染症の影響がない2019年と同水準で推移しました。
図 3-2-3 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)
「飲酒代」についてみると、新型コロナウイルス感染症の影響がない2019年の水準までは戻っていないものの、まん延防止等重点措置の解除などの影響により、3月以降、前年同月に比べ、高い水準で推移しました。
図 3-2-4 月別支出金額の推移(二人以上の世帯)
3. あの日には欠かせない この日には欲しい この品目
特定の日に購入が集中する「すし(弁当)」と「ワイン」
1年の中でも特定の日に購入が特に多くなる商品があります。
節分の日に『恵方巻き』と呼ばれる太巻きを、その年の恵方を向いて食べると、良い1年が過ごせると言われています。家計調査では「すし(弁当)」に『恵方巻き』が含まれており、支出金額は節分(2022年は2月3日)が最も多く、年間を通じた1日当たりの平均支出金額の約15.7倍になっています。
また、ワインの支出金額は、11月の第3木曜日のボジョレー・ヌーヴォー解禁日(2022年は11月17日)に、年間を通じた1日当たりの平均支出金額の約3.1倍になっています。解禁後の支出金額は増えており、お祭り感覚で飲む方も多いようです。
図 3-3 1世帯当たり1日当たりの支出金額(二人以上の世帯)
4. 変わる季節性
購入時期が早まる通学用かばん
商品の中には、消費者が購入する時期が、昔とは異なってきているものがあります。
通学用かばんの支出金額は、20年前は年末から年明けにかけて多くなっていました。10年前は秋頃から徐々に多くなる傾向がみられました。最近では春から初夏にかけて多くなってきているなど、購入時期が大きく変化しています。
最近は、ランドセルメーカーや小売店が、祖父母が孫のために購入する需要を見込んで、親が子を連れて帰省する夏休みシーズンや4、5月のゴールデンウィークを狙い、春頃から翌年用のランドセルの新商品の販売を開始するようになりました。また、ランドセルの色や素材は多種類から選べるようになり、人気ブランドやデザインによっては、早々に売り切れることも珍しくないため、購入時期が早まる傾向にあるようです。
図 3-4 通学用かばんの月別支出金額(二人以上の世帯)
注1 2020年4月から2023年3月までの月ごとの平均
注2 2010年4月から2013年3月までの月ごとの平均
注3 2000年4月から2003年3月までの月ごとの平均