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平成21年8月7日
総務省
統計トピックスNo.40
地方別にみた有料道路料への支出−高速道路利用の増える時期にちなんで−
(「家計消費状況調査」の結果から)
ETC機器を搭載した車両を対象に、平成21年3月28日から全国の高速道路料金が引下げ(注1)になりました。8月は高速道路の利用が増える時期ですが、高速道路料金引下げは、家計にどのような影響を与えるでしょうか。
平成19年1月から21年5月までの高速道路の1日当たり平均利用台数((独)日本高速道路保有・債務返済機構の資料による。)を月別にみると、19年及び20年では1月から3月にかけて増加し、それ以降6月に向けて減少する傾向があります。しかし、高速道路料金引下げ後の平成21年の5月は前月に比べ増加(前年同月比でも0.1%増加)となっており、高速道路料金引下げの影響がうかがえます(図1(GIF:15KB))。
総務省統計局では、毎月調査している「家計消費状況調査」で有料道路料(注2)への支出金額の結果を「ETC利用」と「ETC以外の利用」に分けて公表しています。ここでは、高速道路料金引下げとそれによるETC利用台数増加の家計への影響について、その結果によりみることとします。
1.世帯の有料道路料への支出は8月が多い
家計消費状況調査の平成20年結果によると、二人以上の世帯の1世帯1か月当たりの支出のうち有料道路料への支出(以下「有料道路支出」という。)は1,346円で、そのうち「有料道路料(ETC利用)」(以下「ETC利用」という。)は941円、「有料道路料(ETC以外の利用)」(以下「ETC以外」という。)は405円となっています。
平成20年を月別にみると、8月の有料道路支出は1,853円(「ETC利用」が1,178円、「ETC以外」が675円)と最も多くなっています。一方、2月は1,024円(「ETC利用」が740円、「ETC以外」が284円)と最も少なくなっています。
また、有料道路支出に占める「ETC利用」の割合(以下「ETC支出割合」という。)は8月に低く、2月は比較的高くなっています。これは、高速道路を利用する頻度の高い世帯はETC機器を搭載する車両を保有する割合が高く、高速道路を利用することが少ない世帯はその割合が低いため、ふだん高速道路利用が少ない世帯でも夏休みなどにより高速道路を利用することが多い月に、ETC支出割合が低くなるものと考えられます(図2(GIF:17KB))。
先にみた業務用も含む高速道路の1日当たり平均利用台数(以下「高速道路利用台数」という。)と有料道路支出の月ごとの傾向を平成20年について比較すると、8月が他の月に比べ多いことは一致していますが、高速道路利用台数は3月に比べ5月が減少しているのに対し、有料道路支出は3月に比べ5月が増加する傾向となっています。これは、高速道路利用台数は業務用を含んでいるので、5月など長い連休のある月は、業務用の利用台数が減少しますが世帯での利用台数(及び支出)は増加するためであると推測されます。
2.高速道路料金の引下げ後の有料道路料への支出は減少
高速道路料金の引下げ後の家計消費状況調査での有料道路支出は、平成21年4月が1,194円(ETC支出割合77.6%)、5月が1,324円(同80.2%)で、前年同月に比べ、それぞれ134円減少(ETC支出割合10.9ポイント上昇)、110円減少(同13.1ポイント上昇)しています。
平成21年5月の高速道路利用台数が前年同月比では増加しているのに対して、有料道路支出が前年同月比で減少しているのは、高速道路利用台数の増加による有料道路支出の増加効果を高速道路料金引下げによる有料道路支出の減少効果が上回っているものと考えられます。なお、高速道路料金の上限を1,000円とする引下げは「軽自動車等」と「普通自動車」に限られますので、平成21年5月の高速道路利用台数の増加は、主に業務用ではなく世帯によるものと推測されます。
また、高速道路利用台数の増加の要因としては、高速道路料金引下げのほかに、ガソリンの価格の低下(総務省「消費者物価指数」によると平成21年5月は前年同月に比べ26.4%の低下)も寄与していると考えられます。
3.地方(注3)別にみると、高速道路料金の引下げの影響は中国地方で最も大きい
以上のように、「ETC利用」、「ETC以外」やその計となる有料道路支出は、季節的な月ごとの変動やETCの利用が進んでいることなどにより、前月や高速道路料金引下げ前の前年同月との単純な比較が困難です。
そこで、地方別にみるに当たって、まずETCの利用状況を高速道路料金引下げの影響が大きく出る前の平成21年1〜3月期とその前年同期との比較によってみることとし、次に高速道路料金引下げによる影響を21年4〜5月期とその前年同期との比較によってみます。
高速道路料金の引下げ前に「ETC利用」が中国地方で最も増加
平成20年1〜3月期の地方別の有料道路支出は、東海地方が1,438円(「ETC利用」1,095円、「ETC以外」343円、ETC支出割合76.1%)と最も多く、次いで近畿地方が1,374円(同977円、同397円、同71.1%)、関東地方が1,355円(同1,022円、同333円、同75.4%)などとなっています。一方、北海道は337円(同134円、同203円、同39.8%)と最も少なくなっています。
全国平均では、有料道路支出が1,169円(「ETC利用」807円、「ETC以外」362円、ETC支出割合69.0%)となっています。有料道路支出が全国平均よりも多い地方は、「ETC以外」は全国平均とそれほど変わりませんが「ETC利用」は多くなっています。ETC支出割合でみると、有料道路支出が多い地方はETC支出割合が高い傾向となっており、高速道路を利用する頻度が高くETC機器を搭載する車両を保有する世帯の割合が高いと推測されます。
次に、平成21年1〜3月期を前年同期と比べると、各地方とも「ETC利用」が増加し、「ETC以外」が減少しています。全国平均では、「ETC利用」が117円増加、「ETC以外」が80円減少し、ETC支出割合は7.6ポイント上昇しています。「ETC利用」の増加額をみると、中国地方が416円と最も多く(「ETC以外」は181円減少、ETC支出割合は21.0ポイント上昇し78.2%)、次いで四国地方の255円などとなっています。一方、20年1〜3月期にETC支出割合が比較的高い東海地方、近畿地方及び関東地方は、変化が少ない傾向となっています(図3(GIF:17KB)、表1(GIF:9KB))。
高速道路料金引下げ後は、有料道路料への支出が中国地方で最も減少
高速道路料金引下げ後の平成21年4〜5月期と前年同期を比較すると、全国では有料道路支出が121円減少し、そのうち「ETC利用」が71円増加、「ETC以外」が192円減少しており、1〜3月期に比べ「ETC以外」の減少幅が拡大し、「ETC利用」の増加幅は縮小しています。
地方別にみると、中国地方の減少幅が335円と最も大きく、そのうち「ETC利用」は102円の増加となっていますが、「ETC以外」の減少幅は437円と最も大きくなっています。次いで四国地方の減少幅が196円(「ETC利用」が173円増加、「ETC以外」が369円減少)となっており、ETCを搭載した車両の高速道路料金引下げの影響を大きく受けていると考えられます。なお、「ETC利用」が減少したのは関東地方(29円減少)のみで、他の地方では「ETC利用」が増加となっています。
関東地方では、高速道路料金引下げによる有料道路支出の減少効果が、ETCの利用の増加による有料道路支出の増加効果を上回っていると考えられます(図4(GIF:17KB))。
なお、本州四国連絡高速道路の1日当たり平均利用台数をみると、前年同月に比べ平成21年3月が14.1%、4月が23.0%、5月が41.6%の増加となっており、中国地方及び四国地方の世帯でのETCの利用による高速道路利用の増加を裏付けています(表2(GIF:4KB))。
4.年間収入が500万円から700万円までの世帯でETCの利用が進む
平成20年の有料道路支出を年間収入階級別にみると、年間収入階級が高くなるほど有料道路支出が多くなっています。また、有料道路支出が増えても、そのうち「ETC以外」は大きく増加せず、「ETC利用」の比率が高まっていることが分かります(図5(GIF:14KB))。
高速道路料金引下げ後の平成21年4〜5月期と前年同期を比較すると、有料道路支出の減少幅は、年間収入1000万円以上で258円と最も大きくなっています。一方、年間収入500万円以上600万円未満で25円の増加となるなど、全体の平均に比べ年間収入600万円未満の階級では、有料道路支出の減少幅は比較的小さいか増加となっています。
また、「ETC利用」の増加幅は、年間収入500万円以上600万円未満で260円と最も大きく、「ETC以外」の減少幅は、年間収入600万円以上700万円未満で300円と最も大きくなっています(図6(GIF:16KB))。
5.まとめ
高速道路料金の引下げ前にETCの利用が増加した中国地方など一部の地方や高い年間収入階級では、高速道路料金引下げ効果により有料道路料への支出が減少する傾向となっています。
一方、低い年間収入階級では、もともと有料道路料への支出が少なかったこともあり、家計への影響は多くありません。
また、それ以外の地方及び年間収入階級は、ETCの利用が進んだこと、高速道路料金引下げ、高速道路の利用の増加があいまって、有料道路料への支出は大きく変わらないとの結果となっています。
注1)ETCを搭載した車両を対象に、主に次のとおり利用料の引下げが実施された。
- 3月20日から:東京湾アクアライン及び本州四国連絡高速道路について、土日祝日の上限が1,000円に引き下げられた。
- 3月28日から:地方部の土日祝日の上限が1,000円に引き下げられるとともに、大都市近郊区間について土日祝日の昼間(6〜22時)が3割引(0〜6時及び22時〜24時は5割引)となるほか、首都高速道路の日曜祝日割引、阪神高速道路の土日祝日割引が実施された。
注2)自動車、オートバイなどで通行の際、料金を徴収する道路の利用料。高速道路以外の有料道路の利用料も含む。
注3)地方の区分は以下による。
- 北海道
- 東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
- 関東:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県
- 北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県
- 東海:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
- 近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
- 中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
- 四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
- 九州・沖縄:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
家計消費状況調査とは
個人消費動向のより的確な把握に資するため、近年増加が著しいIT関連の消費や購入頻度が少ない高額商品・サービスなどの消費の実態を安定的にとらえることを目的に、総務省統計局が平成13年10月以来毎月実施している統計調査です。調査結果は、個人消費動向の分析のための基礎資料として利用されるとともに、我が国の景気動向を把握するための基礎資料として利用されています。
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