ここから本文です。

人口減少対策

福島県会津若松市:人口減少対策パッケージ会津若松モデル版を作る

EBPMブートキャンプ 福島県会津若松市

「福島県会津若松市:人口減少対策」サムネイル画像

研究会の体制

専門家
小安 美和(株式会社Will Lab(ウィルラボ)代表取締役)
コーディネーター
秋元 良友(横浜市立大学データサイエンス推進センター特任助教)
自治体
会津若松市企画政策部企画調整課
研究会スケジュール
第1回:11/22 第2回:12/12 第3回:12/19 第4回:1/12
報告会:2/6

研究概要

課題

人口減少対策

進学・就職などによる地域外への転出により、生産年齢人口の減少率が高い状況である。 これまでに、雇用の創出や子育て環境の充実等の施策に取り組んできたものの、人口減少に依然歯止めがかからない状況。今後、さらなる効果的な施策を検討したいと考えている

要約

  • データに基づき現象を明確化
  • 既存施策の全体像を俯瞰
  • 新規事業を立案

課題解決のプロセス

  1. 01現状把握

    会津若松市の人口減少についてデータから把握し、現象を明確化

  2. 02目指すべき姿

    学んだ女性が地元に戻って生かせるまちづくり

  3. 03仮説構築

    • 若者世代が求める仕事と県内産業にギャップがある
    • IT、デジタル推進の推進体制が不十分
    • 多様な働き方の選択肢が不足している
  4. 04データ収集

    県内の統計データのほか、比較対象都市の データや民間企業が所有するレポート等を収集

    ワークブックを活用
  5. 05分析・結果

    • 若者の人口流出における主な要因の把握
    • 働きやすい環境づくりに必要な要素の特定
  6. 06今後の取り組み

    • 会津若松市としてあるべき産業構造の実現
    • 地域DXの推進と支援
    • ジェンダーギャップの解消

利用データ

仮説1

  • 男女共同参画に関するアンケート(高校生対象)
  • 一般職業紹介状況(厚生労働省)
  • ふくしま創生総合戦略等策定支援業務委託報告書:(福島県実施:高校生・大学生へのアンケート結果)
  • 経済センサス

仮説2

  • 県内中小企業DX推進状況アンケート結果(会津大学実施)

仮説3

  • 男女共同参画に関するアンケート(事業者対象)
  • 国勢調査(就業率、雇用形態)
  • 賃金構造基本統計調査
  • 女性起業家の比率(日本政策金融公庫公表)
  • Indeedの求人情報
  • 市女性職員の登用状況

解決プロセスの詳細

01.現状把握

会津若松市では令和2年より地方創生の一環として、新たなしごと・雇用創出やICT活用などの施策を行い、一定の成果は得られてきた。一方で、出生数の減少や転出超過においては継続的な課題がみられた。そこで、RESASや国勢調査のデータを用いて性別・階級ごとの転出入状況の比較を行ったところ、特に女性の転出後の回復率に課題があることがわかった。

市内で起きていたこと

  • 20代・30代の女性の人口が減少
  • 進学、就職を機に若い世代が転出
  • 男性、女性ともに20代・30代が晩婚化
  • 子育てに対する精神的、経済的不安感
  • 出生数の減少
  • 首都圏在住等の20代〜40代の現役世代の移住が増加傾向にある
EBPMブートキャンプにおける課題の設定

02.目指すべき姿

学んだ女性が地元に戻って生かせるまちづくり
さらに市内在学の高校生にインタビューを行ったところ、就職や進学を機に一度は県外に出たいという声があがった。一方、ライフステージの変化による地元へのUターンを考える女性は一定数いるため、転出した住民が再転入するタイミングにおいて、市外で得た学びを生かして働ける環境づくりに着目した。

03.仮説構築

Uターン住民がスキルを活かせる環境を整備するうえで、市内に不足している要件として、以下3つの仮説を立てた。

  1. 仮説1:若者が求める仕事、学んでいた技術を活かす職場がない
  2. 仮説2:IT、デジタル推進環境が整っている企業が少ない、推進体制が不十分
  3. 仮説3:ライフスタイルの変化と両立できる柔軟な働き方の選択肢が少ない

ポイント
女性起業家率、女性管理職率について全国のデータと比較

04.データ収集

3つの仮説の検証において、以下のデータの収集を行った

データ収集へのアプローチ

ポイント
ワークブック8ページを活用

05.結果

仮説1:アンケート結果の可視化、傾向把握
若者向けに行ったアンケート調査をもとに、将来的に地元に残る意向があるかどうかや就職における意識について可視化した。

仮説1:若者(高校生〜大学生)が将来的に地元に残る意向があるか、またその理由に関するアンケート結果

続いて、若者の希望職種と厚労省が発表する一般職業紹介状況のデータを比較した。

仮説1:若者(高校生〜大学生)の希望職種、一般職業紹介状況のデータ

仮説2:DX推進に関するアンケート結果の分析と実態把握
会津大学が令和4年に県内中小企業に行った「DX推進状況アンケート」を参照したところ、回答数が十分に得られない結果となった。回答企業の結果を分析すると、業務のICT化に対する関心が比較的高く、もとよりDX化推進度が高い企業のみが回答していることが推測された。このことから、県内におけるDXの認知には依然として課題があり、認知度向上のための取り組みと、継続的な関心度や状況の把握が必要であることがわかった。

仮説3:就業に関する公的統計を用いた比較分析
■市内の女性就業率の実態
国勢調査による女性の年齢階級別就業率について、H22とR2のデータおよび会津若松市と全国との比較を行った。

仮説3:女性の年齢階級別就業率についての比較調査結果

■再就職・復職に求められる勤務環境
学情が公開する「あさがくナビ2024」のアンケート結果より、就職先に求める勤務スタイル(出社またはテレワーク)についてニーズを把握した。

仮説3:就職先に求める勤務スタイルのアンケート調査結果

柔軟な働き方が求められる中、会津若松市と規模が近い他市や近隣の政令指定都市を抜粋し求人情報に見るフレックスタイム、テレワーク普及率を算出し、比較を行った。

仮説3:フレックスタイム、テレワーク普及率の近隣都市との比較

また調査の過程で、福島県は女性の起業家比率が全国トップであることが判明し、女性の働く環境改革を推進する上で有効な示唆を得た。

ポイント

  • 会津若松市では女性の就業率が高く、働きたい女性が多い
  • テレワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方ができる企業が他市と比べて少ない
  • 福島県は女性の起業家比率が全国トップ

06.今後の取り組み

地域内で働くことを選択肢の一つとして考える若者を増やす

  • 若い世代が就職したい職業・産業の誘致
  • 地域内の職業・産業の魅力を伝える取組み、既存事業の見直し

スマートシティの取り組み強化

  • 市内企業におけるDX認知度や取組状況等の調査・収集
  • 地域DXの取組推進と支援の強化
  • デジタル地域通貨の普及、オプトインにより提供された統計データの活用支援など

女性活躍推進

  • 職場、まち全体のジェンダーギャップの解消を図る取組の検討
  • テレワーク、フレックスタイム制度導入の推進
  • さらなる起業・創業を支援する取組、特にICT分野における人材育成の取組の強化

ポイント
データを分析可能な状態に変換(データクレンジング)

参加者の声

研究会に参加して特に学びが得られた点を教えてください

EBPMが、統計等のデータから得られた客観的なデータ(根拠)に基づき政策を立案することであるとは理解していましたが、これまで本市は「データありき」であったことに気づきました。
EBPMブートキャンプに参加し、データ分析の意義を学んだことで、データの収集や加工、分析に取り組む前に、施策や事業で目指すべき姿と現状とのギャップを明確化し、そのギャップから仮説を設定したうえで、必要なデータや分析手法を検討するプロセスを重視すべきであること、(PPDACサイクルに基づく検討を繰り返していくこと)を学ぶことができました。

研究会に参加して難しいと感じた点を教えてください

今回は人口減少対策という、大きな分野であったため、e-statやRESASから様々な統計データ等の検索のほか、複数の課や関係団体から必要なデータを提供いただく必要がありました。また、これらのデータのグラフ化や回帰分析に至るまでには、加工(クレンジング)を要するものがほとんどであり、一定の時間が必要でした。
今後、本市でEBPMに取り組むにあたっては、通常業務を行いつつデータを収集し加工する必要があると感じました。そのため、公的・基幹統計や各課が蓄積したデータやアンケート結果等を庁内で一元的に収集し、かつ活用しやすいよう加工しておく仕組みが必要ではないかと感じました。

EBPMを活かした今後の業務への改善点や、意気込みを教えてください

本市では、これまでの行政評価においては各政策分野の進捗状況の把握や確認にデータを活用してきました。今後、EBPMを推進するため、行政評価の取組に「ロジックモデル」の導入を検討しており、その中でPPDACサイクルに基づき、データの活用や分析による課題の把握や事業の効果測定・検証を行うことで、政策・施策の立案や質の向上に取り組んでいきたいと考えています。

これから取り組む自治体へ向けてメッセージをお願いします

高齢化や少子化が進む中、どの自治体も限られた人員・予算でより良い政策・施策を展開することが求められています。 一方で、デジタル化やDXの推進により、自治体は現在よりもさらに多くのデータが取得できるようになることから今後、これらのデータをいかに効果的に政策・施策へ活かしていくかが、重要になるのではないでしょうか。
「100のエピソードよりも1つのエビデンス」で、一緒にEBPMに取り組んでいきましょう。

専門家アドバイス
小安 美和

株式会社Will Lab 代表取締役 / W20デレゲート 内閣府男女共同参画推進連携会議 有識者議員

今回のEBPM研究会として、会津若松市で取り組んだ「人口減対策」へ、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスを ぜひお聞かせください。

人口減対策を検討する際には、それぞれの地域の人口減の理由と特徴の可視化(課題設定)が必須です。次に、その地域が持つ強み、ユニークネスの可視化を行い、強みを活かした施策の検討(戦略策定)に進みます。また、人口減対策は、人口を増やすことだけがゴールではなく、これからの地域の未来をつくることが真のゴールとなりますので、多様なジェンダー、ジェネレーションの市民の声を聴き、多様なチームで検討することが重要。人々の生き方・働き方、家族のあり方が大きく変化しているフェーズですので、10年、20年、30年後を見据えて、これまでの価値観、固定観念を乗り越え、バックキャストで検討することが重要なポイントとなると思います。

小安美和(こやす みわ)さんの写真

専門家アドバイス
小安 美和

株式会社Will Lab 代表取締役 / W20デレゲート 内閣府男女共同参画推進連携会議 有識者議員

小安美和(こやす みわ)さんの写真

今回のEBPM研究会として、会津若松市で取り組んだ「人口減対策」へ、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスを ぜひお聞かせください。

人口減対策を検討する際には、それぞれの地域の人口減の理由と特徴の可視化(課題設定)が必須です。次に、その地域が持つ強み、ユニークネスの可視化を行い、強みを活かした施策の検討(戦略策定)に進みます。また、人口減対策は、人口を増やすことだけがゴールではなく、これからの地域の未来をつくることが真のゴールとなりますので、多様なジェンダー、ジェネレーションの市民の声を聴き、多様なチームで検討することが重要。人々の生き方・働き方、家族のあり方が大きく変化しているフェーズですので、10年、20年、30年後を見据えて、これまでの価値観、固定観念を乗り越え、バックキャストで検討することが重要なポイントとなると思います。

参考サイト

資料ダウンロード

サイトマップ
ページ上部へ アンカーのアイコン画像