研究会の体制
専門家
江戸 克栄(県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)教授/専攻長)
コーディネーター
石井 裕基(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 特任教授)
自治体
利府町企画部秘書政策課、町民生活部生活環境課
研究会スケジュール
第1回:11/18 第2回:11/29 第3回:12/12 第4回:1/10
報告会:2/6
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EBPMブートキャンプ 宮城県利府町
専門家
江戸 克栄(県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)教授/専攻長)
コーディネーター
石井 裕基(東北大学 高度教養教育・学生支援機構 特任教授)
自治体
利府町企画部秘書政策課、町民生活部生活環境課
研究会スケジュール
第1回:11/18 第2回:11/29 第3回:12/12 第4回:1/10
報告会:2/6
各路線(町民バス)の乗車データを活用した新規路線の見直しについて
2021年に路線再編を行い、公共交通環境の改善は図れたものの、大型商業施設の建設や宅地造成が進み、町内の住環境の著しい変化によりさらなる再編や本数増加など、住民からの要望が多くあがっていた。公共交通バスの乗車データを活用した、新規路線や運行条件の見直しにより、各路線の最適化を図ることを研究課題とした。
02目指すべき姿
03データ収集
保持していた乗降データに加え、
「入金・乗者データ」
「住民アンケートデータ」を新規に収集
04データ分析
05結果
06今後の取り組み
市街地の本数不足、多様化する利用ニーズとの乖離など、事前に大まかな課題は把握していたものの、町民バス利用者数は鈍化傾向にあった。各課題の解決を図るにあたり、利用実態についての定量データを用いた分析が必要であると考えた。分析計画立案シートを用いて、分析のための目的定義とそのために必要なデータや分析手法の洗い出しを行った。
ポイント
分析計画立案シートを活用
事前に取得された町民の声に加えて、バスの正確な利用実態を把握するため以下のデータを取得した。
ポイント
バス運用会社と連携し、定期的にデータを取得
人の目で見るデータから、機械が読めるデータへの変換
日ごとの路線別乗降データを取得したところ、データのフォーマットが利用日ごとにシートや列が分かれていたり情報が点在している状態であった。これを集計可能な状態とするため、行列に対応したフォーマットに変換を行った。
いつ、どこから乗っているのか? 町民のライフスタイルを把握
どの停留所がよく使用されているか、また曜日や路線によって傾向があるかどうかを把握するため、以下の項目についてクロス集計を行った。
駅、病院、ショッピングモールなど、人が集中するエリアを地図上に可視化
クロス集計の結果から、時間帯や曜日によって異なる利用状況があることがわかった。ここから、利用者がどこに行くためにバスを利用しているのかを詳細に把握するため、Pythonを用いて、時間帯別の乗降者数を利府町の地図上に可視化を行い、どの時間帯にどのエリアに利用者が集中しているのかを把握した。
町民の声をカテゴライズ
続いて、定性的データである町民アンケートについて、特に町民からあがる声はどのようなものが多いのか、要望別にカテゴリを分類し可視化した。
ポイント
データを分析可能な状態に変換(データクレンジング)
休日と平日の利用傾向
エリア、時間帯別分析
エリア別にみると、平日でも必ずしも通勤時間帯が多いわけではない。また、利用者が少ない停留所の中には、折返し運転のためのバスの回転場や付近の住民の休憩スポットとして使用されている場所があり、定量データに加え現地の事情も考慮する必要があるといえる。
平日と休日の運行ダイヤの変更、バス停の見直しによる運行時間短縮、利用目的に合わせた循環バスの運行を目的に、以下の2点を強化する。
さらに、精緻にとれた通勤利用者のデータを活用し、エコ通勤の推奨など環境保全と新たな需要の拡大も検討していく。
研究会に参加して、日頃、単純集計している町民バスの乗降データやアンケートデータを活かしきれていないことに気づきました。今回の研究会では、特に調査の目的、調査の方法、調査項目、また、データを利用して、仮説を立て、分析結果を検討するなど、統計調査の流れを体験することができました。また、研究会では、江戸先生やコーディネータ―の石井先生から適切なアドバイスを多々いただき、調査目的に沿った調査項目や統計調査の考え方など、調査の際に気を付けるべきことを学ぶことができました。
研究期間が短いこともあり、統計調査の基礎から始めたことから、データ分析作業の前処理や集計軸の検討、収集したデータからの仮説検証、可視化グラフの読み解きなどが難しく感じました。
今回の研究会を通じて、データ分析のスキルが身につくと、統計結果を読み取り、結果やデータに隠れている問題を見つけ出せるようになると感じております。今後の業務においては、今回の研究会で学んだことを活かし、データや情報を適切に分析しながら、問題を解決するための柔軟な解決能力や、状況に応じた適切な判断や対応が出来るようさらなる向上に努めていきたいと思います。
本町では今回の取り組みにより、これまで行うことのできなかったデータの詳細分析を行い、公共交通に係る新たな課題を発見するとともに、明確な課題解決案を提示することができました。論理的な政策立案には、数値による説明と事業効果の検証が重要となります。EBPMの活用はまちづくりを合理的に推進するために非常に効果的であり、是非、他の自治体様でもその効果を実感していただきたいと思います。
県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)教授/専攻長
今回のEBPM研究会として、利府町で取り組んだ「適正なバス路線の見直し」へ、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスを ぜひお聞かせください。
日本各地の市町村において、人口減少や高齢化が社会課題となっている。これらの影響を受け、公共交通のあり方については、変動していく需要や技術に従って、常に議論を行っていかなければならない。そのためには、分析に耐えうる時系列データが必要になってくる。ニーズや需要がどのように変化しているのか、最適なシステムは何かという解決策に到達するには、経年的にデータを見ていくことが多い。しかし、多くの自治体では、集約されたデータや調査をした結果を保有しているが、担当者による異動とともに分析可能な「生データ」が散逸してしまうことも少なくない。データ収集や保存が容易になった情報化社会だからこそ、これらのデータを保管し、いつでも活用できるように心がけていきたいものである。
県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)教授/専攻長
今回のEBPM研究会として、利府町で取り組んだ「適正なバス路線の見直し」へ、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスを ぜひお聞かせください。
日本各地の市町村において、人口減少や高齢化が社会課題となっている。これらの影響を受け、公共交通のあり方については、変動していく需要や技術に従って、常に議論を行っていかなければならない。そのためには、分析に耐えうる時系列データが必要になってくる。ニーズや需要がどのように変化しているのか、最適なシステムは何かという解決策に到達するには、経年的にデータを見ていくことが多い。しかし、多くの自治体では、集約されたデータや調査をした結果を保有しているが、担当者による異動とともに分析可能な「生データ」が散逸してしまうことも少なくない。データ収集や保存が容易になった情報化社会だからこそ、これらのデータを保管し、いつでも活用できるように心がけていきたいものである。