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ゼミナール編(2) 〜調査実施と分析

1時限目 意識調査の設計

1-1 意識調査とは

2意識調査の過程

ここでは、意識調査の過程を概観していきます。

調査は、企画にはじまり、報告におわります。
企画においては、特に、調査の内容(何をたずねるか)、調査の対象(誰にたずねるか)、調査の方法(どのようにたずねるか)の3点を定めるのが鍵となります。そのあと、実査を行い、データを作成し、集計ののちに、報告書を作成します。

調査の全過程
調査の全過程

調査企画のポイント

調査の企画において決めておくべきことは、調査目的、調査項目、調査対象、調査方法、スケジュールと予算です。

調査目的は調査の意義を確かなものとするために非常に重要です。
調査項目は企画段階では方向性が定められ、その後、調査票作成にて具現化されます。
調査対象については、対象者を抽出する地理的範囲を広くするほど、人数を多くするほど、予算も時間もかかることになります。
調査方法も、やり方によって予算、時間、さらにデータの性質が変わります。調査の目的を達成するために、企画を慎重にまとめることが求められます。(調査方法の種類については、2-2-1「さまざまな調査方法」で詳しく解説します。

また、意識調査の各過程において、以下のことに留意して企画する必要があります。

調査票の作成においては、関係者からの情報収集、既存の調査の検討、質問項目の絞り込み、質問文と選択肢の作成など、さまざまな作業があります。(調査票の作り方については、1-2-1「調査票の全体構成」で詳しく解説します。

対象者を選ぶのは、母集団を設定し、そこから標本抽出をすることにより行われます。ここでは、「無作為抽出」という手続きにしたがって、偏りのない調査対象者の集団を選び出す点が重要です。(無作為抽出については、2-1-1「母集団と標本」で詳しく解説します。

調査の過程で、目立たないのですが、意外に重要なのが予備調査です。
予備調査とは、調査票のチェックのための事前調査です。調査対象者と似た属性の人に協力していただき、回答してもらいます。協力者からのフィードバックを受け、問題があるとわかれば調査票を修正します。

調査を実施し回収された調査票の回答内容をデータ入力します。
それから入力されたデータについて、データクリーニングを行います。
これは、入力のミスや、論理的なエラーがあるかどうか点検し、もし見つかれば適切に修正していく作業です。

そうして完成したデータセットを分析・集計します。その結果に基づき、報告書を執筆し、刊行することによって、意識調査のプロジェクトは終了することになります。

調査報告書の標準構成

次に、意識調査の報告書には、どのような情報を含めるべきか、考えてみましょう。

報告書は、「どのような調査だったのか」「調査の結果、わかったことは何か」を読み手に伝えるものとなります。標準的なものは、以下のような4部構成で、だいたい型が決まっています。

調査報告書の標準構成
第1部 調査の概要

調査目的、調査項目、調査対象、調査時期、調査方法、調査実施委託機関、回収結果等

第2部 調査結果の概要

調査でわかったことの記述・説明・グラフ等

第3部 調査票

調査票をそのまま掲載

第4部 集計表

集計結果の掲載

第1部の「調査の概要」には、調査目的、調査項目、調査対象、調査時期、調査方法、調査実施委託機関、回収結果を示します。調査の概要を見るだけで、どんなスペックの調査なのかが一目瞭然となります。

第2部の「調査結果の概要」は、名前こそ第1部と似ていますが、中身は大きく違います。調査結果の概要とは、調査でわかったことの記述・説明であり、グラフとその解釈を文章化して掲載します。

第3部は「調査票」ですが、ここには単に、使用した調査票をそのまま掲載すればよいだけです。なぜこれが必要かというと、その調査を参考にしたい人や、調査結果の概要を読んで興味をもった人が参照するためです。

第4部は「集計表」で、調査でたずねたほとんどの項目、特に意識項目についてはすべてのものについて、基礎的な集計結果を出します。時には、集計表を別の冊子にしたり、表計算ソフトのファイルにまとめてホームページで公開したりするケースもあります。
いずれの方法をとるにせよ、調査の概要、調査結果の概要、調査票に加え、集計表まで閲覧できるようにすれば、調査報告書としては十分なものとなっているとみてよいです。

1-1 意識調査とは まとめ

  1. 意識調査とは、社会的な問題に対する意識を調べるための調査。
  2. 意識調査と統計調査は、調査の手続きの面では共通点が多い。
    しかし、調査の内容、単位、規模、法的根拠など多くの相違点がある。
  3. 意識調査でも、企画から報告まで一連の流れがある。
  • 次は、「1-2-1 調査票の全体構成」です。
    アンケート作成に役立つ実践講義です。具体的に見ていきましょう。

執筆・監修:東京大学社会科学研究所 教授 三輪 哲

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