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調査用封筒の切り替えに向けた検証

岡山県  総合政策局  政策推進課

岡山県 統計局長賞 行政運営

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概要

県民満足度調査において、事業費の削減を求められていました。そこで、調査用封筒を小型化し、回収率を維持したまま、コストを削減する方策を検討しました。結果、小型の黄色封筒は、大型封筒の回収率に劣らないという結果が得られ、コスト削減を実現することができました。

導入費・運用費

封筒の導入費用  608,125円
(内訳)

  • 令和3年度:(大型封筒郵送代120円+封筒代8円)×1,875通+(小型郵送代94円+封筒代3円)×625通=300,625円
  • 令和4年度:(大型封筒郵送代120円+封筒代8円)×1,875通+(小型郵送代94円+封筒代14円)×625通=307,500円

受賞

  • 「Data StaRt Award〜第8回地方公共団体における統計データ利活用表彰〜  統計局長賞」(2023)

取組の流れ

  • PPDAC-problemアイコン画像

    岡山県が実施している県民満足度調査において、統計的に十分な回収率を維持したまま、経費を削減することが求められていた

  • PPDAC-planアイコン画像

    調査票の郵送には大型封筒を用いていたが、封筒を小型化することによる郵送コストの削減を考案

  • PPDAC-dataアイコン画像

    市町村ごとに調査対象者を2群に分類、サイズの違う封筒でランダムに調査票を送付し、市町村ごとの回収率を集計

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    非劣性試験の手法により、小型封筒が大型封筒の回収率に劣っていないかを検証

  • PPDAC-conclusionアイコン画像

    小型黄色封筒の回収率は、大型封筒の回収率に劣らないことが明らかになった

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

事業費が削減される中で調査票回収率を維持

令和3年度当初予算において、県民満足度調査の事業費が7%削減されたことから、統計的に十分な回収率を維持したまま、経費を削減する必要がありました。そこで、調査票を大型封筒で郵送していたことに着目し、封筒の小型化により、郵送コストが削減できるのではないかと考えました。

どのような体制で取組みましたか?

岡山県、調査の委託業者、EBPM推進アドバイザーで連携

岡山県、調査の委託業者、県が別途契約しているEBPM推進アドバイザーの三者により取り組みました。アドバイザーからの助言を得ながら、岡山県が企画、委託業者が調査への実装及びデータ収集を行い、アドバイザーがデータ分析を行いました。

どのような計画を立てましたか?

海外エビデンスの参照から、調査への実装、効果検証、再検証と計画を策定

海外では、大型封筒の効果が小型の10倍あるというエビデンス*1があったことから、一部の封筒を小型化し、大型封筒に劣らないことが確認できれば、大型封筒を小型化し、コストを削減することとしました。

令和3年度は、小型封筒と大型封筒との回収率の差を検証しました。検証の結果、小型封筒が大型封筒の回収率に劣らないとは言い切れないという結論になりました。

検証結果を踏まえ、令和4年度は、ナッジ*2の視点から、小型封筒の色を黄色に変更し、他の郵便物に紛れてしまうことや、調査の重要性が伝わらず開封されないという課題を克服できると考えました。

データを活用した施策の効果検証
データを活用した施策の効果検証

検証にどのような方法を用いましたか?

ランダム化比較試験及び非劣性試験の手法により検証

ランダム化比較試験*3及び非劣性試験の手法により検証しました。非劣性試験とは、ある手法が比較対象に劣らないかを確認するための手法です。事前に、非劣性マージン*4を設定し、アウトカムに係る95%信頼区間が基準を下回っていれば、当該手法は比較対象に劣ると判断するものです。今回の検証では、医療分野を例に、非劣性マージンを△7%に設定しました。

検証作業を行うなかで、工夫した点は何ですか?

ナッジの視点を活用

工夫したのは、送付数2,500通のうち、小型化による回収率低下の懸念を踏まえ、大型封筒の統制群を1,875通、小型封筒の介入群を625通に設定した点です。小型化による影響が未知数であったため、回収率の低下を最小限に防ぐようにしています。

また、令和4年度の再検証に当たっては、ナッジの視点を取り入れたことも工夫した点です。封筒が他の郵便物に紛れていることや、重要な調査であることが認識されないという仮説をもとに、小型封筒の色を黄色に変更して再検証しました。

取組によって得られた成果は何ですか?

コスト削減への第一歩を踏み出した

小型の黄色封筒は大型封筒の回収率に劣らないことが分かり、令和5年度から調査用封筒を小型黄色封筒に切り替えました。

今回の検証によるコスト削減は微々たるものではありますが、取組結果を全庁的に共有、実装することで、大きなコスト削減が可能と考えます。

今後は、オンライン調査も活用しながら、引き続き、回収率の維持、向上及びコストの縮減に取り組んでいきます。

大型封筒と小型黄色封筒の回収率
大型封筒と小型黄色封筒の回収率

脚注

*1  海外のエビデンス:
経済協力開発機構(OECD)編著、齋藤長行 監訳、濱田久美子 訳(2018)
「世界の行動インサイト 公共ナッジが導く政策実践」明石書店  pp.100-101

*2  ナッジ:
人々の選択肢を奪うことなく、環境を整えることで、本人や社会にとって望ましい行動をするようにそっと後押しする手法

*3  ランダム化比較試験:
Randomized Controlled Trialの頭文字をとってRCTという場合もある。治療などの介入効果を科学的に分析・推論する手法。対象者をランダムに2グループに分け、ある政策手段の対象とするグループ(介入群)と対象としないグループ(比較対照群)間の比較を行い、政策効果の分析・推論を行う。

*4  非劣性マージン:
実験の結果を判断する際に基準となる値のこと。非劣性マージンを基準に、比較対象に劣っていないかを判断する。

参考サイト

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