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ゼミナール編(2) 〜調査実施と分析

2時限目 標本設計と調査方法

2-2 調査方法

2インターネット調査

インターネット調査(ウェブ調査)の方法の利用は、2005年くらいから急増しており、今や市場調査などではもっとも頻繁に利用されています。意識調査でも同様に増加していることは間違いなく、官庁や地方公共団体による意識調査での採用事例も増えてきています。

インターネット調査の回答の過程は、概ね以下の通りです。 回答者は、指定されたURLへとアクセスし、ウェブの画面上で表示された調査票の選択肢をクリックして回答します。最後に、送信ボタンをクリックすると、たちまち回答がサーバーへと収まるようになっています。

インターネット調査回答の流れ
上記で説明したインターネット調査回答の流れの図

インターネット調査の長所と短所

インターネット調査の利点は、調査員が不要であり、調査期間が、他のあらゆる方法よりも短くて済みます。なぜなら、印刷作業は発生せず、訪問はなく、調査票の送受信は電子的に行われ、データの入力も省けるからです。相対的には、費用が非常に安価であることも特徴的です。他にも、地域の広さには影響を受けませんし、センシティブな質問も入れやすいです。
それからデータ入力やエラー修正の手間がかからないことも特筆すべきでしょう。加えて、紙の調査票による調査ではできない、動画や音楽などを組み込んだ質問をすることもインターネット調査ならば可能です。

そんなによいのであれば、意識調査でも、インターネット調査がもっと採用されそうなものですが、案外そうはなっておりません。というのも、明確な欠点があるからです。

第1に、無作為抽出をすることが難しいことです。第2に、回答者の偏りが避けがたいことです。第3に、誰が回答したかを確認できないことです。

インターネット調査の回答者は、調査会社の調査モニターに登録している人びとから選ばれることがほとんどです。そうなると、調査に前向きな人ばかりとなるので、一般の市民や国民の代表性のあるデータを得られるかどうかが、ときに難しくなります。また、本人になりすました他人の回答が送信されても、それを確認する術もありません。

インターネット調査の長所と短所
長所 短所
  • ●調査費用が安価
  • ●調査期間が(圧倒的に)短い
  • ●データ入力の手間がかからない
  • ●無作為抽出をすることが難しい
  • ●回答者の偏りが避けがたい
  • ●本人確認ができない

インターネット調査を活用するには

インターネット調査を活用する際には、長所も短所もよく理解したうえで、利用するのが適切な態度です。
欠点を補うために、無作為抽出された標本に対してインターネットを通して回答してもらったり、属性の偏りを補正するウェイト(データの重み)を開発したり、いい加減な回答者を識別するための質問を入れるなど、調査の現場ではさまざまな工夫がなされています。

このように、調査方法によって得られるデータが異なることを理解しておくのは重要です。インターネット調査だけに限らず、一般的に調査の方法が異なれば、調査の結果は変わりうるのです。どの方法も、完全なものがあるわけではなく、それぞれが相対的な強み、弱み、および特質をもっているのです。どれかだけが正しい調査方法だと考えるべきではありません。

そこで、「ある調査結果は、たまたまある調査方法によって得られたものだ」と受けとめ、絶対視することは避けるべきです。また、調査の結果を比較するときには、調査方法の違いがあるのかどうか、十分に留意したうえで行うよう心掛けましょう。

2-2 調査方法 まとめ

  1. 実査のやり方としては、面接調査、郵送調査、留置調査、インターネット調査などがある。
  2. 調査方法ごとに、長所と短所がそれぞれあるため十分留意する。

執筆・監修:東京大学社会科学研究所 教授 三輪 哲

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