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ゼミナール編(2) 〜調査実施と分析

2時限目 標本設計と調査方法

2-2 調査方法

1さまざまな調査方法

対象者から回答を収集する現地調査のことを、実査と呼びます。それでは、実査の方法について述べたいと思います。意識調査で用いられる実査の方法は、さまざまあります。それぞれの調査方法について、やり方と、利点、欠点を見ていきましょう。

面接調査

まずは、面接調査です。面接調査は、調査員が回答者のもとへ訪問をします。特に意識調査では、対象となる個人の自宅まで伺うこともよくあります。そして現地にて、調査票に沿って口頭で質問を読み上げ、口頭での回答を調査員が記入し、調査票を持ち帰ります。

利点は、回答したのが対象となっている本人であるかどうかを確認できること、本人以外の第三者からの影響を受けにくいこと、複雑な質問も取り入れやすいことです。

欠点は、費用が高いこと、センシティブな質問をすることは難しいこと、などです。

郵送調査

郵送調査では、調査票の配布も、回収も、郵送によって行われます。対象となった回答者へ、調査票と返信用封筒を郵送し、それに回答者自身が記入したうえで期日までに返送してもらうやり方です。

利点は、調査費用が安いこと、広い地域を調査対象としても調査しやすいこと、無記名にして匿名性を確保すればセンシティブな質問を比較的しやすいことです。

欠点は、本人の回答であるかどうかが確認しにくいこと、第三者からの影響の懸念があること、複雑な質問がしにくいこと、質問の数があまりに多いと回答者の動機づけが低下することです。

なお、郵送調査は平均的には回収率は低めです。郵送調査の回収率を上げるには、何度も督促をすることが必要です。

留置(とめおき)調査

留置(とめおき)調査では、調査員が対象となった回答者のもとへ訪問して、調査票を渡します。渡された調査票に回答者が記入し、だいたい1週間後くらいに再訪問して調査員が回収します。

利点としては、面接調査よりも費用は安いこと、郵送調査よりも回収率が高めになりやすいこと、記入済みの調査票を厳封するなどで匿名性を確保すればセンシティブな質問もしやすいこと、実際の回答の場面には立ち会わないものの本人や家族と話すことはできますから本人が回答したかどうかの確認をある程度できることです。

欠点は、複雑な質問はしにくいこと、第三者からの影響の懸念があること、費用は郵送調査に比べると高いことです。ただ相対的にバランスのよい方法で、ここまで述べた3つの方法の中では回収率が高めになる傾向がみられます。

ここまで述べたものが主要な方法ですが、それ以外にも意識調査で用いられる方法があります。

電話調査、集合調査

その1つは、電話調査です。電話調査は、対象となった回答者へ電話をかけて、口頭にて調査依頼し、質問を投げかけて、回答をしてもらいます。電話機のプッシュボタンを押すことで回答する形式も使われています。この方法は、速報性を重視するマスコミの選挙調査などでよく用いられています。

もう1つは、集合調査です。集合調査は、特定の場所に回答者に集まってもらい、その場で調査票を配布し、一斉に記入してもらう方法です。この方法は、学校の生徒の調査や特定企業の従業員調査など、使用可能な場面が限定されます。

調査方法の比較

ここまで述べた5つの方法を比較したのが、次のまとめの表です。
費用から調査員訓練まで、9つの観点から相対評価をしています。
そこで、この表を横方向にながめると、個々の観点ごとに、どの方法が相対的に優れているのかがわかります。また、表を縦方向にながめると、当該の方法において、どの点が強みで、どの点が弱みなのかを理解することができます。

調査方法まとめ
長所 短所
調査方法
面接 郵送 留置 電話 集合
費用 中高
回収率 中高
調査期間 中長
回答者の確認 中難
多量の質問
複雑な質問
センシティブな質問
調査員数 不要
調査員訓練 不要
  • ここでは、主要な調査方法を説明しました。
    他の方法に、インターネット調査もあります。
    次の「2-2-2 インターネット調査」で、詳しく見ていきましょう。

執筆・監修: 東京大学社会科学研究所 教授 三輪 哲

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