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身体活動と基本属性の関係性

宮城県仙台市:生活保護受給者における身体活動と基本属性の関係性の検討

EBPMブートキャンプ 宮城県仙台市

宮城県仙台市:生活保護受給者における身体活動と基本属性の関係性の検討の参加メンバーの写真

研究会の体制

※肩書は実施当時のもの

研究会統括管理者
株式会社Rejoui代表取締役 菅由紀子
専門家
東京大学大学院医学部教授、医学博士(東京大学)、公衆衛生学博士(Harvard University)
橋本英樹
データサイエンティスト
株式会社Rejouiデータサイエンティスト 吉田綾恵
データ分析アシスタント
株式会社Rejoui 茅島路子
進行管理
株式会社Rejoui 西川紗木
研究会スケジュール
第1回:6月27日 第2回:7月29日 第3回:9月20日
第4回:11月13日 第5回:12月23日 第6回:1月23日

研究概要

課題

生活保護受給者における身体活動と基本属性の関係性の検討

仙台市泉区では、令和3年に必須事業となった 「被保護者健康管理支援事業」 を通じて、生活保護受給者の健康維持・改善を図り、より自立した生活への支援強化を検討している。
本研究会では、生活保護受給者の習慣的な身体活動状況をもとに、自立した生活に重要な歩行や外出の頻度などの移動能力と生活の質の関係性を明らかにし、受給者ごとの健康状態や生活習慣をより正確に把握し、適切な支援策を講じるための環境整備を目指す。

仙台市泉区が定めた「被保護者健康管理支援事業実施のポイント」を記載した資料。資料では、ケースワーカーが被保護者のことを熟知・理解し、健康管理支援を行う上では日頃の工夫を行うことや、レセプト管理システムを利活用し、業務効率化を図ると同時に、データを用いた科学的根拠に基づいた運営を行うことをあげている。

要約

  • 先行研究調査などにより、生活保護受給者における社会的孤立の状況把握と、生活保護受給者の健康行動と社会的孤立の関係性をリサーチクエスチョンとして設定した。
  • フォーカス・グループ・インタビューと国際身体活動質問票(IPAQ)短縮版を用いた、1,818人に対する被保険者総身体活動量に関する聞き取りを実施し、定性と定量の両面から解析を実施した。

課題解決のプロセス

  1. 01現状把握

    生活保護受給者に対し、医療と生活の両面から支援を行い、日常・社会生活の自立を促進。
    しかし、現在の支援は疾病管理に重点が置かれ、社会生活自立の視点が不足。
    特に高齢・障害・傷病世帯では経済的自立が困難であり、より包括的な支援が必要

  2. 02目指すべき姿

    仙台市泉区の生活保護受給者の社会生活実態を把握し、有効な支援策を立案。社会的孤立や健康行動に関するデータを収集・分析し、身体活動の実態を明らかにする。

  3. 03データ収集

    • 生活保護システムデータ(基本属性)
    • 国際身体活動質問票(IPAQ)による聞き取り調査
    • ケアワーカーへのフォーカスグループインタビュー
  4. 04データ分析

    • IPAQの結果から身体活動量を算出し、高・低活動群に分類
    • 座位時間を基に短・長座位時間群を分類し、χ2検定で分析
    • インタビュー結果から、身体活動を促進・抑制する要因を抽出
  5. 05結果

    • 生活保護受給者は長時間座位の割合が一般住民より高い。
    • 長座位群は1人世帯・非就労者が多く、短座位群は母子世帯が多い。
    • 身体活動を促進する要因:自宅での運動、サポート活用、家事運動など
    • 抑制する要因:経済的制約、意欲の低下、地域活動の減少など
  6. 06今後の取組

    • 被保護者の個別ニーズを把握し、適切な支援を実施
    • 自発的な身体活動を促すための方法を検討
    • 必要な支援サービスへの橋渡しを強化
    • 調査結果を全国へ発信し、福祉事務所の参考事例とする。

利用データ

本研究会では、既存データを活用した。

  • 生活保護システムデータ(基本属性)
  • 国際身体活動質問票(IPAQ)による聞き取り調査
  • ケアワーカーへのフォーカスグループインタビュー

解決プロセスの詳細

01.現状把握

先行研究

課題の取り組みに際し、いくつかの先行研究となる論文を参照した。その結果より、生活保護受給者の健康管理支援は、健診受診勧奨や疾病管理支援に重点が置かれているが、社会生活自立の視点が十分に考慮されているとは言い難い状況であるといえる。
特に高齢世帯、障害世帯や傷病世帯の生活保護受給者の場合、就労を通じた経済的自立は困難なことが多く、日常生活自立や社会生活自立の支援がいっそう重要となる。
社会生活自立とは、「社会的なつながりを回復・維持し、地域社会の一員として充実した生活を送ること」であり、社会的なつながりがない人(社会的孤立の状態にある人)は、慢性疾患の増加、機能障害、メンタルヘルス、認知機能の悪化、早期死亡率および全死亡率の上昇と関連していることが示された。

(参考文献)

  • 1.Kino, Nishioka, et al. (2022)
    高齢の生活保護受給者は、非受給者と比較して抑うつ症状が多い。
  • 2.Kino, Stickley, Nishioka, et al. (2022)
    高齢の生活保護受給者は自殺リスクが高い可能性がある。
  • 3.Kino, Ueno, Nishioka, et al. (2024)
    生活保護受給者は歯科受診を控える傾向が強い。

これらの結果を踏まえ、本研究会を通じて以下のリサーチクエスチョンを示した。

  • リサーチクエスチョン1:
    社会的孤立の仙台市泉区内の生活保護受給者はどの程度いるのか
  • リサーチクエスチョン2:
    仙台市泉区内の生活保護受給者の健診受診、食生活、身体活動および座位時間といった健康行動と社会的孤立の関係性

上記のリサーチクエスチョンの設定にあたっては、仙台市泉区にて令和3年度から5年度にかけて行ってきた取り組みに基づく。

取り組みの一例

仙台市泉区が令和4年度に被保護者の社会的孤立と健診受診に関する調査を実施・分析した結果、仙台市泉区内の生活保護受給者は性別に関わらず社会的孤立が多い傾向が見られた。
令和5年度に被保護者の食生活の質に関する調査を実施・分析した結果、食事の質スコアが低い男性・単身・傷病世帯といったセグメントが同定できた。食事の質向上には、社会的孤立を軽減するための情緒的・手段的サポートの強化が必要である。

仙台市泉区が実施した被保護者管理支援事業の一覧の画像。資料では、仙台市泉区の被保護者管理支援事業では、今回行ったEBPMブートキャンプの取り組みのほか、令和3年度より段階的に、被保護者の疾病・医療に関する情報の取得や社会的孤立の状況を把握するための実態調査を実施してきました。また、健康診断の受診勧奨の配布物を活用し、被保護者の健康意識の向上を図るなど、さまざまな取り組みを進めています。ということを紹介している。 仙台市泉区が実施した施策の画像。令和5年度に行った施策では、基礎健診受診を勧奨するチラシの構成要素に、情緒的サポートの要素を加えて配布した。

一方、令和元年度から令和4年度のレセプト枚数および医療費は、令和2年度に減少するが、その後は増加している。
令和3年度から4年度にかけて、入院のレセプト枚数は減少するが、医療費は増加している。医療費の適正化が大きな課題である。
医療費の適正化を実現するためには、生活保護受給者の健診受診、食生活、身体活動および座位時間といった健康行動が鍵となるが、上述のように健診受診、食生活については調査済みである。

02.目指すべき姿

令和6年度のEBPM研究会を通しての目標を2つ定めた。

1.被保護者の身体活動状況および特性を把握し、現状の「見える化」

被保護者は一般国民と比べ食事や運動などへの関心が薄い傾向がある。
そこで、被保護者の身体活動に着目し、被保護者の基本情報の生活保護システム、身体活動に関するアンケート調査結果を基に、被保護者の身体活動の現状および特性を「見える化」すること

2.現場のケースワーカーが感じる被保護者に対するイメージの実態を把握、分析する

生活保護業務に携わるケースワーカーの被保護者の身体活動に対するイメージは多種多様である。
被保護者は一般市民と比べ身体活動が高いと感じているケースワーカーがいる一方で、引きこもった生活を送る被保護者もおり、身体活動が低いと感じているケースワーカーもいる。
そこで、ケースワーカーの被保護者の身体活動に対する実感について、質的な調査を行い、量的な被保護者の身体活動の現状および特性を裏付ける。

03.データ収集

  • 生活保護システムデータ(基本属性)
  • 国際身体活動質問票(IPAQ)*1短縮版を用いた被保護者の総身体活動量に関する聞き取り調査データ
    実施時期:令和6年9月から10月、調査対象:1,818人
    当該調査は、日本公衆衛生学会の研究倫理委員会の承認を得て実施。(承認番号:日24-003)
  • ケースワーカーへのフォーカス・グループ・インタビュー
    (被保護者の身体活動に対する実感に関するインタビュー)

インタビュー内容

被保護者の身体活動に対する実感

実施方法

  • 仙台市泉福祉事務所保護課内のケースワーカーおよび査察指導員20名、対象者4名から5名を1グループとし合計4グループで実施
  • グループごとに想定する世帯分類が異なるようグループを編成
  • 世帯分類は、母子世帯、高齢者世帯、障害者世帯、傷病者世帯の4つ
インタビューの目的と方法の画像。ケースワーカーが行った被保護者向けインタビューにおいては、高齢者世帯、母子世帯、障害者世帯、傷病者世帯、その多世帯の分類にて実施した。 IPAQに基づいた設問表1の画像。アンケートでは身体活動の頻度や時間に関する質問について尋ねている。 IPAQに基づいた設問表2の画像。設問表1の続き。アンケートでは身体活動の頻度や時間に関する質問について尋ねている

*1 IPAQは、International Physical Activity Questionnaireの略。日本語では、国際身体活動質問票と約され、身体活動レベルを評価するための標準化された質問票。主に成人(15から69歳)を対象とし、身体活動の強度や頻度を測定することで、健康状態や運動習慣の評価に広く利用されている。

(参考文献)

村瀬訓生,勝村俊仁,上田千穂子,他
「身体活動量 の国際標準化―IPAQ 日本語版の信頼性,妥当性の評 価―.厚生の指標 2002; 49: 1 9.

一般財団法人厚生労働統計協会の掲載ページ外部リンクのアイコン画像

04-01.定量分析:国際身体活動質問票(IPAQ)短縮版を用いた被保護者の身体活動量の聞き取り調査データの分析

1.身体活動量

  • 先行研究を参考に、対象者の身体活動量の中央値で「高身体活動群」、「低身体活動群」の2群に分類
  • 対象者の基本属性と社会的支援の特性を検討するために、χ(カイ)2検定*2を用いて分析

2.座位時間*3

  • 先行研究を参考に、480分/日未満を「短座位時間群」、480分/日以上を「長座位時間群」とし2群に分類
  • 対象者の基本属性と社会的支援の特性を検討するために、χ2検定を用いて分析

*2 χ2検定とは、観測値と期待値の乖離を評価し、統計的有意性をp値に基づいて判定する手法のこと。p値が小さいほど帰無仮説を棄却し、有意な差があると判断することができる。

*3 座位時間とは、「座位、半臥位(はんがい)、もしくは臥位の状態で行われるエネルギー消費量が1.5MET以下のすべての覚醒行動」と定義されている。文中のMET(メッツ)とは、安静時を基準にした場合のエネルギー消費量のことを指す。

04-02.定性分析:フォーカス・グループ・インタビュー

インタビューにおいては、主に下記の内容について聴取

  • 身体活動の高い人・低い人の特徴
  • 背景として考えられる事柄・因子

05-01.国際身体活動質問票(IPAQ)短縮版を用いた被保護者の身体活動量の聞き取り調査データの結果

1.身体活動量

  • 対象者の基本属性と社会的支援の特性において、高身体活動群と低身体活動群との間に偏りが見られなかった。
  • 短座位時間群の身体活動(MET-分/週)*4は1384.8(SD*5=2181.2)、長座位時間群では915.8(SD=1506.1)であった。

*4 METとは、安静時を基準にした場合のエネルギー消費量のことを指す。

*5 SDとは、標準偏差のことを指す。

被保護者の身体活動量の聞き取り調査データの結果より、対象者の基本属性と社会的支援の特性においては、高身体活動群と低身体活動群の間に偏りは見られなかった。

2.座位時間

  • 座位時間(分/日)の平均は、短座位時間群で323.3分(SD*5=64.5)、長座位時間群で747.4分(SD=101.3)。先行研究によると日本人の平均座位時間は5から7時間で世界でも長いが、被保護者の座位時間は日本人の平均より長いことが明らかになった。
  • 対象者の基本属性と社会的支援の特性において、世帯人数、世帯類型、就労の有無、手段的サポートと座位時間との間に有意水準1%で連関があることが分かった。

この結果は生活保護を受給していること自体が長時間座位と連関していることを示唆する。

座位時間の結果では、被保護者の座位時間は日本人の平均時間より長いことがあきらかになった。また、統計的仮説検定を行った結果より、生活保護を受給していることと長時間座位には連関があることがわかった。

05-02.ケースワーカーへのフォーカス・グループ・インタビューによる身体活動の要因(定性調査)

1.身体活動を促進する要因

  • 自宅でできる無理のない運動
  • 支援グループやサポートの活用
  • 運動機器やアプリの活用
  • 家事を活用した運動
  • 視覚や聴覚を活かした運動
  • 親子でできる軽い運動

2.身体活動を抑制する要因

  • 経済的制約による活動範囲の縮小
  • 精神的な制約や意欲の低下
  • 買い物や家事の工夫による活動量の減少
  • 子ども関連費用の制限
  • 地域活動やボランティア活動の減少

定量調査および定性調査の結果から、生活保護受給者は、生活保護制度の利用によって社会資源や経済的な選択肢が制限され、それが身体活動の低下に影響を与えていることが示唆された。

考察として、生活保護受給者は一般人と比較して長時間座位の割合が高いことから、生活保護の受給によって社会に出づらい状況があるのではないかという仮説が挙がった。 考察のまとめとして、一人世帯や非就労者の座位時間が高いことがわかり、社会的サポートの必要性が把握された。また、短座位時間群と長座位時間群に特徴される世帯群には違いがあり、個別のサポートの必要性が把握された。

06.今後の取組

仙台市泉区における継続的な定量化の実践のほか、本調査結果を全国に発信し、全国の福祉事務所における参考事例として活用され、被保護者の身体活動量が増える手段的サポートを考案されることを目指す。

参加者の声

今回のEBPM研究会について、参加した感想を教えてください

EBPMに参加したことで、市民のニーズに基づいた施策立案の重要性を実感し、データ分析やフィールドワークを通じてその意義を深く理解することができました。最初はEBPMが難しいものだという印象がありましたが、実際にデータの蓄積や分析を行うことで、政策立案の具体的なヒントを得る貴重な経験となりました。また、エビデンスに基づいた施策立案は難易度が高く、特にデータ分析だけでなく、その結果をわかりやすく説明する重要性も痛感しました。自治体が積極的に取り組むためには、こうしたブートキャンプの存在が必要であり、今後もこの活動が継続されることを期待しています。

特に学びが得られたと感じた点を教えてください

研究会では、ピボットテーブルの使用方法や統計知識など、実務に直結するスキルを習得することができました。特に他の自治体との情報交換の場が設けられたことで、先行事例を学びながら自身の業務に活かす貴重な経験となりました。先行研究の一覧化や言葉の定義に関する議論を通じて、施策立案において曖昧さを排除し、明確な基盤を築くことの重要性を再認識しました。また、公衆衛生学と公共政策学の視点の違いについても学び、専門知識の深掘りが必要であると感じました。

難しかったことや苦戦した点を教えてくださいい

EBPMの導入において最も困難だったのは、上司や同僚にその意義を説明し、理解を得ることでした。意見の違いが対立と感じられることもあり、どの程度の準備や説明が必要なのか手探りの状況が続きました。また、日常業務との調整が難しく、特にケースワーク業務との両立が課題となりました。さらに、データ分析の結果を現場のケースワーカーに十分に共有できなかったことも難しさの一因でした。プロジェクト全体の進行管理や関係者間の情報共有が課題として浮き彫りになりました。

どのように解決したか、今後どのようなサポートがあれば解決できそうでしょうか

理解を得るためには、具体的な成果を示し、法的根拠や事業内容との関連性を明確にすることが重要であると考えました。特に、日常業務の一環としてEBPMを位置付け、ケースワーカー会議などの場を活用して継続的に情報発信することが効果的でした。また、上司とコンセンサスを得ることが重要であり、積極的なフィードバックを通じて理解の浸透を図りました。外部サポートとしては、EBPMブートキャンプや外部機関との連携が有効であり、総務省の支援や他自治体との情報共有が課題解決に寄与しました。

EBPMの考え方を活かした今後の業務の改善点や、意気込みを教えてください

ケースワーク業務を数字で見える化することで、生活保護受給者に寄り添っている実態が明確になったことは非常に良い成果だと感じています。福祉の専門職として「寄り添う」という言葉をよく使いますが、今後はそれを数字で示し、客観的な根拠をもって説明できるようにしたいと考えています。また、ケースワーカーが本音で関わることが、健康課題や社会的課題の解決に貢献をするうえで重要であると考えていますので、根気よく継続的に取り組みたいと思います。

これからデータ利活用に取り組む自治体へ向けてメッセージをお願いします

データ利活用は敷居が高いと感じることもあるかもしれませんが、具体的な効果を明確にすることで業務の目的意識が高まり、仕事の意義を再確認することができます。最初の一歩を踏み出すことが大切であり、全国には同じ課題に取り組む仲間が多く存在します。データ活用を通じて業務改善を図り、より良いまちづくりに貢献していくために、一歩踏み出す勇気を持って取り組んでいただきたいと思います。

専門家、データサイエンティストからアドバイス

専門家アドバイス
橋本英樹

国立大学東京大学大学院医学系研究科 教授

今回のEBPM研究会にて仙台市で取り組んだ「生活保護受給者の身体活動の把握」について、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスをぜひお聞かせください。

仙台市の取り組みは、これまで明らかになっていなかった生活保護受給者の身体活動について、科学的に妥当性が示されている身体活動質問票を用いて座位時間の長さが長いことを明らかにしたうえで、ソーシャルワーカーなどの実務経験に基づく質的情報を併せつつ、原因として身体的機能の制限だけではなく社会的参加に関する制限などが示唆されることを明らかにした。現場の感覚を定量的・定性的・科学的手法で裏付け・見える化し、問題の規模・背景原因・対応すべき課題などについて関係行政セクターや首長・議会が政策議論するための共通基盤を形成している。EBPMのあるべき姿を示したお手本となるケースである。

橋本英樹さんの写真

専門家アドバイス
橋本英樹

国立大学東京大学大学院医学系研究科 教授

橋本英樹さんの写真

今回のEBPM研究会にて仙台市で取り組んだ「生活保護受給者の身体活動の把握」について、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスをぜひお聞かせください。

仙台市の取り組みは、これまで明らかになっていなかった生活保護受給者の身体活動について、科学的に妥当性が示されている身体活動質問票を用いて座位時間の長さが長いことを明らかにしたうえで、ソーシャルワーカーなどの実務経験に基づく質的情報を併せつつ、原因として身体的機能の制限だけではなく社会的参加に関する制限などが示唆されることを明らかにした。現場の感覚を定量的・定性的・科学的手法で裏付け・見える化し、問題の規模・背景原因・対応すべき課題などについて関係行政セクターや首長・議会が政策議論するための共通基盤を形成している。EBPMのあるべき姿を示したお手本となるケースである。

データサイエンティストアドバイス
吉田綾恵

株式会社Rejoui データサイエンティスト

今後、各地方自治体がEBPMをプロジェクトとして進める上でのポイントやデータ活用についてぜひお聞かせください。

仙台市が取り組まれた生活保護受給者の身体活動調査は、先行研究のない新しい挑戦でした。この取り組みが成果を上げた背景には、現場のケースワーカーの方々が日々の業務を通じて築かれてきた、生活保護受給者の方との信頼関係があったと考えています。疾患背景や年齢、生活環境が非常に複雑な生活保護受給者から、正確な身体活動データを得ることは難しい課題でしたが、ケースワーカーの皆様の創意工夫により、分析に十分な量と質を備えたデータを得ることができました。
また、データ分析の結果をケースワーカーの方の経験や知見と照らし合わせて議論することで、現場の実態や今後取り組むべき課題を明確にすることができました。このように現場の視点とデータ分析を組み合わせることが、EBPMを進める上で非常に重要だと感じています。今後、他の地方自治体がEBPMをプロジェクトとして進める際には、現場の声を活かしつつ、適切なデータ収集と分析、議論を行うことがポイントになると考えます。
今回、仙台市皆様の日ごろの業務を成果に繋げるお手伝いができたこと、大変うれしく思います。このような挑戦がさらに広がり、各地域が抱える課題の解決に寄与することを心より期待しております。ありがとうございました。

吉田綾恵さんの写真

データサイエンティストアドバイス
吉田綾恵

株式会社Rejoui データサイエンティスト

吉田綾恵さんの写真

今後、各地方自治体がEBPMをプロジェクトとして進める上でのポイントやデータ活用についてぜひお聞かせください。

仙台市が取り組まれた生活保護受給者の身体活動調査は、先行研究のない新しい挑戦でした。この取り組みが成果を上げた背景には、現場のケースワーカーの方々が日々の業務を通じて築かれてきた、生活保護受給者の方との信頼関係があったと考えています。疾患背景や年齢、生活環境が非常に複雑な生活保護受給者から、正確な身体活動データを得ることは難しい課題でしたが、ケースワーカーの皆様の創意工夫により、分析に十分な量と質を備えたデータを得ることができました。
また、データ分析の結果をケースワーカーの方の経験や知見と照らし合わせて議論することで、現場の実態や今後取り組むべき課題を明確にすることができました。このように現場の視点とデータ分析を組み合わせることが、EBPMを進める上で非常に重要だと感じています。今後、他の地方自治体がEBPMをプロジェクトとして進める際には、現場の声を活かしつつ、適切なデータ収集と分析、議論を行うことがポイントになると考えます。
今回、仙台市皆様の日ごろの業務を成果に繋げるお手伝いができたこと、大変うれしく思います。このような挑戦がさらに広がり、各地域が抱える課題の解決に寄与することを心より期待しております。ありがとうございました。

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