研究会の体制
専門家
梅津 順江(株式会社ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所 所長)
コーディネーター
佐伯 諭(データサイエンティスト協会事務局長)
自治体
宇城市市長政策部市長政策課、市長政策部企画課、保健衛生部健康づくり推進課
研究会スケジュール
第1回:11月29日 第2回:12月8日
第3回:12月19日 第4回:1月13日
報告会:2月6日
ここから本文です。
EBPMブートキャンプ 熊本県宇城市
専門家
梅津 順江(株式会社ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所 所長)
コーディネーター
佐伯 諭(データサイエンティスト協会事務局長)
自治体
宇城市市長政策部市長政策課、市長政策部企画課、保健衛生部健康づくり推進課
研究会スケジュール
第1回:11月29日 第2回:12月8日
第3回:12月19日 第4回:1月13日
報告会:2月6日
健康寿命の延伸
特定健診結果より、県内の他市区町村と比較して、U(アラビア数字の2)度以上の高血圧者の割合が高い。高血圧は、脳血管疾患(脳卒中)、虚血性心疾患等の原因ともいわれており、市民の健康寿命の延伸のためにも、高血圧者の低減を図ることを急務としている。
03データ収集
04分析・結果
宇城市民/全国における生活習慣・健康意識アンケートの比較分析
05追加分析
高血圧要因の特定(Rを用いた決定木分析)
06今後の取り組み
宇城市では高血圧者の割合が、熊本県内14市の中で8年連続ワースト1位という状況にあり、以前より課題認識があった。
特定健診問診票や住民アンケートを使用したデータをみると、高血圧に影響を与えると言われている食生活においては、野菜摂取量が年々減少傾向、飲酒量は他市より多い結果となった。 同市では、これまで保健師による個別面談や野菜摂取を促進する「さしより野菜プロジェクト」の実施など、健康意識の向上施策を多数行ってきた。しかし、高血圧者割合に大きな改善は見られず、その要因の特定に至っていない。
ポイント
ワークブック3.4ページを活用
庁内の5つの課で連携して部署横断的に研究会に取り組んだ
宇城市の人口構成や職業のほか過去の保健指導等から、生活習慣について以下の傾向が把握できた。
上記から、宇城市民は他市市民と比べて塩分を摂り過ぎているのではないかという仮説を立てた。
ポイント
ワークブック7ページを活用
実施アンケート
宇城市在住者のほか同様のアンケートを全国を対象に行い比較することで、宇城市特有の食習慣を明らかにする。
調査項目の検討について
設問の検討にあたっては、一般的な高血圧の要因にあたる項目のほか、実際に住民の健康相談を行っている保健師や管理栄養士の意見を取り入れ、宇城市特有の食習慣が詳細に把握できる項目に優先順位をつけた。
設問例
集計されたアンケートの結果より、以下のことが明らかとなった。生活習慣や健康意識を測るいくつかの項目について、全国と宇城市の回答データの比較を行った。
調味料各種の接種状況(味噌・しょうゆ)のアンケート結果
上記のほか、普段の飲酒量や頻度、塩分が高いとされる食品の摂取状況についても調査を行ったがいずれの項目も顕著な差はみられなかった。これにより、仮説として立てた「宇城市民は塩分摂取量が多いのではないか」という点については立証されなかった。
一方で、今回の調査により、健康意識に関する項目では以下の結果が見られた。
「自分の体型に対する自己評価について教えてください」という設問では、自分自身を太っていると感じている割合が全国に比較して宇城市のほうが高い結果となった。また「あなたは普段健康だと感じていますか」という設問においても同様の結果がみられた。
自分の体形に対する自己評価のアンケート結果
その他、「食生活をよりよくするための関心がありますか」や「普段の食生活において減塩を実践していますか」といった食生活改善に関する項目では、関心度合いが宇城市のほうが高い結果となった。
このことから、今回の調査対象においては宇城市民のほうが健康に課題を感じている人が多く、改善意識も高いことがわかる。これは当初の想定と逆の結果であった。
仮説の検証に加えて、現状データを用いた高血圧の要因特定のため、統計解析ツールRを活用し決定木分析を行った。使用データは、令和2年度の健康診断結果である。
上記の結果より、メタボ、年齢、BMI、飲酒、喫煙などの変数の影響が見られた。ただし、使用データが1年分のみのため、参考情報とする。
宇城市特有の高血圧要因の特定
継続的なモニタリングの検討
健康意識向上のための年代別施策
研究会の演習を通して、データ利活用のプロセスや、PPDACサイクルの流れを実際に体験しながら学ぶことができました。部署横断的に取り組んだことで、様々な角度から意見を交わすことができ、新たな「気づき」を得ることができました。
また、基本統計量の見方、回帰分析、Rの操作等の統計分析の基礎知識や、検定の有意水準の考え方や適切なサンプル数、外れ値の除き方など、実際に分析を進める上で発生する疑問に対して、専門家からの回答を得られたことは他では経験することができなかったと思います。
仮説検証のためのアンケート作成の際は、対象者の選定やアンケート項目の絞り込みが難しかったです。
1つの分析手法により得られた結果が必ずしも正しいものではないこと、データの特性を踏まえた上で、様々な角度から分析を行い、確からしいと言えそうな分析結果を出すには専門的な知識と経験が必要だと感じました。
研究会で作成したアンケート項目を、今後のアンケート作成の際に取り入れたいと思います。また、今回の研究会で学んだことを庁内で共有し、健康、医療に関わらず、様々な分野の事業に活かしていきたいと思います。
まずはしっかりと可視化することを大事にしていきます。また機会があれば統計分析の手法について知識を深め、より高度な分析を行えるようになりたいです。
地域や個人に紐づいた様々な生のデータに直接アクセスできるのは、自治体の職員だけではないかと思います。自治体職員がデータ加工や分析技術を身に付けることができれば、人々のくらしや未来をより豊かにする効果的な施策の立案が少ないコストで実現できると思います。
まずはやってみる、チャレンジしてみることが大切です。
株式会社ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所 所長
今回のEBPM研究会として、宇城市で取り組んだ「高血圧患者低減」に、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスを ぜひお聞かせください。
高血圧患者や予備軍の気持ちや行動を促すためには動機づけが必要です。 まず、当事者の意識や実態を段階別に捉えるとよいでしょう。「血圧は自分に関係ない」「自分は低い」と思い込んでいる【認識不足】には、「過信の壁」「思考停止の壁」が潜んでいます。「高めだけど症状がないから心配ない」と高血圧の怖さを知らない【知識不足】には、「無知の壁」があります。「まだ大丈夫」「自分なりに気をつけている」と言い訳をしながら【見て見ぬふり】をするケースも厄介です。認知&心理的ハードルを紐解いて、各々にあわせたアプローチ策を考えなければなりません。
そして、自分の心と体に向き合って、前向きに行動しようと思えるきっかけを促す必要があります。例えば、「なぜ、さしより野菜なのかという(対策につなげる)説明」、「気持ちも心も動く、コミュニケーションワードやサービス開発(血管年齢を若返らせるプロジェクト)の検討」などです。
株式会社ハルメクホールディングス 生きかた上手研究所 所長
今回のEBPM研究会として、宇城市で取り組んだ「高血圧患者低減」に、今後各地方自治体が取り組んで行く際のアドバイスを ぜひお聞かせください。
高血圧患者や予備軍の気持ちや行動を促すためには動機づけが必要です。 まず、当事者の意識や実態を段階別に捉えるとよいでしょう。「血圧は自分に関係ない」「自分は低い」と思い込んでいる【認識不足】には、「過信の壁」「思考停止の壁」が潜んでいます。「高めだけど症状がないから心配ない」と高血圧の怖さを知らない【知識不足】には、「無知の壁」があります。「まだ大丈夫」「自分なりに気をつけている」と言い訳をしながら【見て見ぬふり】をするケースも厄介です。認知&心理的ハードルを紐解いて、各々にあわせたアプローチ策を考えなければなりません。
そして、自分の心と体に向き合って、前向きに行動しようと思えるきっかけを促す必要があります。例えば、「なぜ、さしより野菜なのかという(対策につなげる)説明」、「気持ちも心も動く、コミュニケーションワードやサービス開発(血管年齢を若返らせるプロジェクト)の検討」などです。