本市では、2022年に「新・産業振興ビジョン」を策定し、工業系用途地域で運用している企業立地促進施策の拡充検討を位置づけています。2008年からスタートした同施策の拡充を検討するためには、未実施であった同施策の効果検証を行う必要がありました。
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市政データ利活用で企業立地促進施策の効果検証を可視化
大阪府 豊中市 都市活力部 産業振興課
大阪府豊中市 特別賞 行政運営 2023
概要
地域や年代ごとにクロス集計した市民意識調査結果をBIツール*1の活用により可視化するとともに、事業所が特定できないように税データを加工したうえで、本市における固定資産税額などの推移を地区ごと、産業分類ごとに可視化しました。
導入費・運用費
補助金50万円(2022年度)
受賞
- 「Data StaRt Award〜第8回地方公共団体における統計データ利活用表彰〜 特別賞」(2023)
- 「豊中市創る改革実現プロジェクト副市長賞」(2023)
取組の流れ
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企業立地促進施策の拡充を検討するタイミングで、これまで未実施だった企業立地促進制度の効果検証の必要性を再認識。市政データの利活用による検証を模索。
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本市の公民連携事業である「地域課題解決支援事業」において、民間ノウハウを活用しながら税データの推移を可視化することにより効果を検証。
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本市が保有する、市民意識調査結果や事業所が特定できないように加工した法人固定資産税(土地・建物)と法人市民税のデータを収集。
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市民意識調査結果については、地域ごとや年代ごとにクロス集計したものをBIツールにより可視化し分析。税データについては、地域ごとや産業分類ごとに年別の税額推移を可視化し分析。
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企業立地促進制度を一部拡充した2019年からの4年間で、法人固定資産税が約2億円増収したことに加え、工業系用途地域での工場床面積が78,387u(平方メートル)、倉庫床面積が12,679u(平方メートル)増加し、産業集約効果があったことを確認。
ヒアリング・ここが知りたい!
どのような課題がありましたか?
企業立地促進施策の拡充を図るために同施策の効果検証を行う必要性があった
難しかった点や工夫した点はありますか?
データの不特定性保持と分析精度の確保を両立
本市が保有する法人固定資産税や法人市民税のデータを利用する際には、法令上、事業所が特定できないように加工する必要があり、データの不特定性保持と分析精度の確保を両立させることに苦慮しましたが、庁内調整などを丁寧に行いながらデータ利活用を図ったため、円滑なデータ分析を行うことができました。
どのような分析を行いましたか?
法人が所有する土地・建物の過去10年分の賦課情報*2を活用して分析
法人が所有する土地・建物に係る賦課情報を過去10年分活用し、法人の所在地ごとに集約しながら税情報を付与し、事業所が特定できないように加工したうえで、本市における固定資産税額推移を地区ごと及び産業分類ごとに数値化し、分析を行いました。
分析によってどのような結果が得られましたか?
法人固定資産税の増収、工場床面積や倉庫床面積の増加を確認
企業立地促進制度を拡充した2019年からの4年間で、法人固定資産税が約2億円増収し、さらに、工業系用途地域での工場床面積78,387u(平方メートル)、倉庫床面積12,679u(平方メートル)が増加したことも確認しました。

分析結果を踏まえ、今後どのように政策を行う予定ですか?
企業立地促進制度の対象エリア・業種の拡大を図る
現在、工業系用途地域で運用している企業立地促進制度の対象エリア・業種の拡大を図ることにしています。工業系用途地域では「製造・運輸・卸売」を奨励金制度の対象業種としていますが、新たに商業地等においては「サテライトオフィスやコワーキングスペース、ホテルなど」を奨励対象に規定することにしています。
BIツール上に構築したダッシュボード*3にはどのような特徴がありますか?
市民意識調査のデータをより詳細に考察・分析できる
BIツール上に構築したダッシュボードには、地域ごとや年代ごとにクロス集計した市民意識調査のデータが収納されており、例えば、「わからない」という回答の出現回数や「自由回答欄」のコメント人数、具体的な内容がワンクリックで瞬時に表示され、より詳細に調査結果を考察・分析できるとともに二次加工も可能になるという特徴があります。

開発したツールを今後どのように活用していきたいですか?
デジタルガバメント*4の推進に取り組む
民間事業者と連携しながらBIツールを活用したデータ分析をさらに進めるとともに、庁内におけるデジタル人材の採用・育成にも取り組み、デジタルガバメントをさらに推進していきます。
