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滋賀県における観光客の周遊分析等について(令和2年度EBPM(証拠に基づく政策立案)モデル研究事業)

滋賀県 総合企画部 統計課

滋賀県 産業振興 観光・国際交流 公的統計データ

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概要

 滋賀県統計課では、滋賀大学データサイエンス学部と連携しながら、庁内の課題について、EBPM*1の進め方やデータ分析の手法を学びながら課題解決を目指す「EBPMモデル研究事業」を実施しています。令和2年度は、庁内公募を行った中から「滋賀県における観光客の周遊分析等について」をテーマに選定し、ロジックモデル*2を活用しながら、新型コロナウイルス感染症の拡大による観光を取り巻く環境変化の中においても、より「質」を高める観光によって観光消費を促し、新たな観光スタイルへの転換を目指すための施策を検討しました。

導入費・運用費

導入費 −
運用費 4,751千円(滋賀大学への委託費およびその他必要経費)

取組の流れ

  • PPDAC-problemアイコン画像

    観光を取り巻く環境が大きく変化し、新たな観光スタイルへの転換の必要が出てきた

  • PPDAC-planアイコン画像

    県内観光が目指す観光振興に至るまでのロジックモデルを作成し、観光地点間の周遊促進のための施策構築を検討

  • PPDAC-dataアイコン画像

    滋賀県観光入込客統計調査*3、滋賀県観光統計調査(パラメータ調査*4)を活用。個票データの利用申請も実施

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    観光地点間の関係や周遊状況等についてネットワーク分析*5、GISによる可視化を実施

  • PPDAC-conclusionアイコン画像

    県内観光の周遊状況のパターンや観光地ではない周遊地点の存在を把握。今後の観光ルート作成やPRへ活用

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

観光を取り巻く環境の変化。新たな観光スタイルへの転換が必要

 令和2年2月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大により、観光を取り巻く環境が大きく変化しました。その中で、これまでのような観光客数の増加だけではなく、食と文化や地域住民との交流などを通じ、長く滞在し何度も訪れたくなるような滋賀を目指し、より「質」を高める観光によって観光消費を促していく新たな観光スタイルへの転換を目指す必要が出てきました。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

ロジックモデルを作成し、観光地点間の周遊促進のための施策構築を検討

 県内観光が目指す観光振興に至るまでのロジックモデルを作成し、観光地点間の周遊(県内またはエリアにおいて複数の観光地点を訪れること)の促進が有効であると考え、観光客の移動データから県内の観光客の周遊状況等を明らかにし、周遊促進のための施策構築を検討することにしました。
 ロジックモデルを作成することで、自分達が実施している業務がどういう施策につながり、最終的にどういう目標につながっているかを改めて確認することができます。また、「何のために」「どのような」データ分析を行うのかを明確化し、効果的・効率的に進めることができました。

ロジックモデル
ロジックモデル

データの収集はどのように行いましたか?

滋賀県観光統計を活用。個票データの利用申請も実施

 今回の分析では、年間観光客数の把握のために「滋賀県観光入込客統計調査」を、観光地点間の動態を分析するために「滋賀県観光統計調査(パラメータ調査)」の結果を活用しました。分析には公表結果だけでなく個票データを用いることを想定していたので、原課(観光振興局)へ個票データの利用申請を行いました。
(活用した統計データ:滋賀県観光入込客統計、滋賀県観光統計調査(パラメータ調査))

どのような分析を行いましたか?

観光地点間の関係等についてのネットワーク分析、GISによる可視化を実施

 観光地点間の関係や周遊状況等を見える化するため「ネットワーク分析」を実施し、観光地点を点(ノード)、地点間を結ぶ経路を辺(エッジ)として地点間のつながりの向きや強さを分析しました。また、ある地点から出発する数と、そこへ到達する数(次数中心性)や、地点同士の中継地点としての影響力の強さ(媒介中心性)を指標化しました。
 分析結果をわかりやすく可視化するため、次数中心性の結果をネットワークグラフ化し、さらに見やすくなるよう、GIS(地理情報システム)により滋賀県地図に落とし込み、観光地点の特徴や周遊傾向等を把握し、新たな周遊ルートについて検討しました。
(活用したツール等:Excel、R、GIS(MANDARA))

左:分析結果(観光地点ごとの次数中心性と媒介中心性、ネットワークグラフ) 右:GISによる見える化
左:分析結果(観光地点ごとの次数中心性と媒介中心性、ネットワークグラフ) 
右:GISによる見える化

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

県内観光の周遊状況のパターンや、観光地ではない周遊地点の存在を把握。今後の観光ルート作成やPRへ活用

 県内観光の周遊状況のパターンとして以下のルートを把握することができました。
 @ 人気観光地周遊(広域的に、人気観光地点間を周遊)
 A 近隣周遊(人気観光地を中心に、その周辺を周遊)
 B 目的周遊(寺社巡りのルート等、特定の目的による周遊)
 このうち、@Aは観光地点同士の物理的な距離や、観光地点そのものの集客力が影響を与えると考えられる一方、Bは観光に対して何らかの目的や与えることで、県が主体的に関わることが可能ではないかと考えました。
 また、本来、観光地ではないアウトレットモールと他の観光地点との往来が多いという結果も明らかになりこれを活用することが有効と考え、今後の観光ルート作成やPR等の施策検討に結び付きました。

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

大量の生データのクレンジング作業に時間を要した

 観光地点別、月別に大量の生データを扱うため、事前のデータクレンジング作業に時間を要しました。市町の回答について、データ形式を揃えるために名寄せを行ったり、あり得ない数値がないかの確認をしたりという作業が必要となり、統計課、原課、大学のそれぞれでデータチェックを行いました。

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

効果的と考えられた施策について新たな事業を検討

 今回の分析により効果的と考えられた施策の具体例として、原課では以下のような新たな事業を検討しています。なお、「EBPMモデル研究事業」の取組では、分析結果を施策にどう活かしたかを把握するため、活用状況について原課へ照会し、随時フォローアップを行っています。
 @ 目的に関連する場所や施設等の再発掘
  ・観光キャンペーンに関連する場所・施設の掘り起こしや、イベントの実施による目的周遊の新
   たなルートの設定・PR
  ・観光地間の連携(移動手段等)の強化等
 A アウトレットモールの「県内観光のハブ」としての活用
  ・県の観光パンフレットの設置、観光PR活動
  ・アウトレットモールから県内観光地点への周遊促進(クーポン活用)等

脚注

 *1 EBPM:
 エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングの頭文字を取った言葉。証拠に基づく政策立案という意。

 *2 ロジックモデル:
 インプット(投入資源)、アクティビティ(活動)、アウトプット(活動による産出物)、アウトカム(政策効果)の間における論理的関係を示したもの

 *3 観光入込客統計調査:
 県内の観光客の目的別・季節別・月別・地域別の入込状況について、県内の各市町から寄せられた報告を集計したもの

 *4 パラメータ調査:
 県内の主要観光地を訪れた観光客を対象に、観光目的・動機、行程・使用交通機関、宿泊数、満足度、消費額などの観光情報を聞き取り調査し集計したもの

 *5 ネットワーク分析:
 対象の要因間の接続関係を可視化・指標化することにより、キーとなる情報を抽出するための分析手法

参考サイト

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