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教育改革におけるデータの利活用推進

埼玉県 戸田市 教育委員会事務局 教育政策室

埼玉県戸田市 子育て・教育 公的統計データ 行政データ 新規に調査

福井県人口減少対策データ分析・調査事業サムネイル画像

概要

 授業改善及び教員の指導力向上を図り、「これからの時代を生き抜くために必要な力を子供たちに身に付けさせる」ことを目指し、教育政策室において実施する各種調査及び保有するデータを用いて産官学との共同研究に取り組み、成果を学校現場に還元しています。
 埼玉県学力・学習状況調査で測定した学力のパネルデータを中心に、リーディングスキル*1や非認知能力*2との関係を分析し、指導方法に関する共同研究を実施しています。

導入費・運用費

導入費 −
運用費 2,000千円(リーディングスキルや非認知能力等の調査に係る費用)

取組の流れ

  • PPDAC-problemアイコン画像

    社会情勢・教育環境の変化により勘や経験に基づく従来の指導方法だけでは不十分な現状があった

  • PPDAC-planアイコン画像

    戸田市教育政策シンクタンクを設置。研究者や事業者と連携し、授業改善の視点からの共同研究を検討

  • PPDAC-dataアイコン画像

    学力データとして、埼玉県学力・学習状況調査を活用。リーディングスキルや非認知能力は研究所や企業と連携し、市内の学校で測定

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    学力データと各種テストや測定結果の関係について分析

  • PPDAC-conclusionアイコン画像

    具体的な授業改善の軸となるルーブリック*3を作成。研究結果は学校現場にフィードバックし、学力向上計画などへ反映

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

社会情勢・教育環境の変化により経験や勘に基づく従来の指導方法だけでは不十分

 教員の年齢構成の変化により、現場のベテランにあたる中間層の割合が減少、若手教員の割合が増加しており、ベテランから若手への効果的な指導方法の継承が以前よりも難しくなっていました。さらに、社会で求められる人材像が変化し、ICT利活用をはじめとする教育環境の変化も相まって、指導の質の保障や向上に関して、教員の経験や勘だけでは十分とは言い難い状況となっています。
 また、「やり抜く力」をはじめ、社会に出て大いに求められる非認知能力の育成について、教育振興計画に盛り込むなど戸田市として注力してきましたが、効果検証が難しく、非認知能力の観点での指導改善が進められていませんでした。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

戸田市教育政策シンクタンクを設置。研究者や事業者と連携し授業改善の視点からの共同研究を検討

 現在の教育長が就任したことにより学校教育に関する取組は大きく推進し、平成30年度よりデータリテラシーの高い教育行政の専門職を採用するとともに、令和元年度には戸田市教育政策シンクタンクを立ち上げました。 今回の取組では、授業改善の視点として活用し得るデータを分析または測定できる研究者や事業者と連携しながら計画を立てました。

データの収集はどのように行いましたか?

埼玉県学力・学習状況調査を活用。研究所や企業と連携しリーディングスキルや非認知能力を測定

 学力データは、パネルデータ*4である県の学力・学習状況調査の結果を活用しました。また、その他のデータとして、リーディングスキルテストや非認知能力のデータを活用するため、研究所や企業と連携し市内の学校で測定しました。非認知能力の測定にはAIを用いて非認知能力をスコア化するアセスメントツールを用いました。
(活用した統計データ:埼玉県学力・学習状況調査結果、非認知能力の測定結果、リーディングスキルテストの結果)

どのような分析を行いましたか?

学力データと各種テストや測定結果の関係について分析

分析イメージ
分析イメージ

 埼玉県学力・学習状況調査の結果と、各種テストや測定結果による様々なデータの関係について分析を行いました。
 一例を挙げると、学力データと非認知能力の測定結果について相関分析を行いました。その結果、学力と非認知能力には全体的に正の相関が見られるものの、非認知能力の項目によってその強さが異なり、学力と同時に向上を図る方がよいと考えられる項目(論理的思考、課題設定、疑う力、表現力)と、学校行事や学級経営に位置付けて向上を図る方がよいと考えられる項目(その他の項目)が明らかになりました。
 また、非認知能力を伸ばした教師がどのような取組を行っているかをヒアリングし、非認知能力の項目毎に効果的と思われる取組をまとめました。
(活用したツール等:Excel、SPSS、SAS、Stata等の分析ソフト)

非認知能力と学力の相関係数
非認知能力と学力の相関係数

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

具体的な授業改善モデルを確立。研究結果は教育現場へフィードバックし、学力向上計画等へ反映

 分析に基づく定量的なデータに基づいて指導する際に重点とすべき事項を示し、授業改善の軸となるルーブリックを作成することができました。
 また、研究結果は教育現場へフィードバックしており、各学校における学力向上計画や非認知能力育成プログラムへ反映されることで、日々の指導に知見として取り入れられることが期待されます。さらに、結果は管理職や教員へ提供するとともに、必要に応じて研修も実施しています。

活用イメージ
取組のイメージ図

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

教育現場へ還元する成果物のあり方について難しさを実感

 研究の成果として、どのような形の成果物であれば現場に効果的に還元できるのかという点は非常に難しく苦慮しています。
 また、外部との連携やアセスメントを行う際には、学校との共通理解が重要となるため、十分な調整を図る必要があります。

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

教育現場の意識が徐々にエビデンスベースの考え方へと変化

 まだ、一部の管理職や少数の現場教師にとどまりますが、徐々にこれまでの教師の経験や勘に基づく指導体制からエビデンスベースに教育現場の意識が変わってきています。
 教育委員会が学校と伴走することによりデータ利活用の意義を学校に実感してもらい、「学校や教師の取組を客観的に振り返り、様々な視点から子供を見取る」という学校におけるEBPMを推進したいと考えています。

脚注

 *1 リーディングスキル:
 文章を正しく理解するための汎用的・基礎的読解力のこと。読解のプロセスごとに、読解の能力値を測定する。

 *2 非認知能力:
 知能検査や学力調査等、一般的に測定しやすく数値で示される認知能力ではない能力全般を指す。本調査では特定の場面における行動特性(コンピテンシー)を数値化している。

 *3 ルーブリック:
 学習到達度を示す評価基準を、観点と尺度からなる表として示したもの。ここでは、教師が指導を振り返るための評価基準を示している。

 *4 パネルデータ:
 同一の標本について、複数の項目を継続的に調べて記録したデータ。項目間の関係を時系列に沿って分析することが可能。 

参考サイト

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