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ヘルスケアデータ連携システム

兵庫県 神戸市 健康局 健康企画課

兵庫県神戸市 統計局長賞 健康・福祉 行政運営 行政データ

「介護予防DX〜データを活用した介護予防推進事業〜」サムネイル画像

概要

 神戸市では、科学的根拠に基づく保健事業の推進による市民サービスの向上を目指し、医療・介護のレセプトデータや健診データを連結・匿名化した「ヘルスケアデータ連携システム」を新たに整備しました。
 今まで所管ごとに保有していたデータを連結し、悉皆性の高いデータを分析することで、市民全体の健康状態や課題の把握、保健事業の効果検証が可能となり、科学的根拠に基づく保健事業を推進することで市民サービスの向上を目指しています。

導入費・運用費

導入費 979千円(サーバー管理費、分析用データセット作成費等)
運用費 979千円(〃)

受賞

  • 「第6回 地方公共団体における統計データ利活用表彰 統計局長賞」(2021)

取組の流れ

  • PPDAC-problemアイコン画像

    健康医療分野における施策評価のための基礎資料となるデータが存在しない。

  • PPDAC-planアイコン画像

    異なる事業で収集されている健康医療関連のデータを個人単位で紐付け利用することを計画

  • PPDAC-dataアイコン画像

    各部署のデータを収集し、既存の情報から個人を名寄せ匿名化するシステムにより連結

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    市民50万人以上のデータを連結し、悉皆性の高いデータを構築

  • PPDAC-conclusionアイコン画像

    様々な社会課題の把握や政策評価のための情報基盤を整備。学術機関へデータ提供し、研究結果をフィードバックできる体制を構築

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

政策評価のための基礎資料となるデータが存在しなかった

 日本は超高齢社会に入り、健康寿命の延伸と健康格差の解消が政策的に重要視されており、住民の健康改善のための効果的な予防的介入の解明が強く求められています。
 一方で、医療・保健分野における事業の効果を評価しようとしても、例えば、医療、介護のデータからそれぞれのコストを算定することは可能ですが、社会保障費全体に占める両方のコストを把握できるようなデータ基盤はなく、健康医療分野における政策評価のための基礎資料となるデータがないという状況がありました。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

九州大学から紹介されたデータ連結プログラムから着想

 九州大学が開発したデータ連結プログラムを紹介いただいた際、市の事業にも活用可能であると考えました。異なる事業で収集されている健康医療関連のデータを個人単位で紐付けて利用することができれば、市の事業において様々なことを検証することができます。
 また、研究利用を可能にしておくことで、審査を経た研究者もデータを自由に使うことが可能となり、より多くの成果が世の中に出て社会に還元されるのではないかと考えました。

データの収集はどのように行いましたか?

個人情報保護審議会の承認を得て、各所管部署よりデータを収集

 個人情報保護審議会の承認を得た上で、各所管部署より関連データを収集しました。
 収集にあたっては、データ連結プログラムを活用し、各所管部署が保存するデータ形式のまま収集することで、各部署の負担軽減を図りました。
(活用した統計データ:住民基本台帳、医療レセプト、介護レセプト、健診/検診、介護認定調査票、予防接種台帳、被保護者調査票、市民PHRID、救急搬送記録等)

ヘルスケアデータ連動システムのイメージ
ヘルスケアデータ連携システムのイメージ

どのような分析を行いましたか?

個別の業務システムで保有していたデータを連結し、悉皆性の高いデータの分析を実施

カテーテル手術の件数
カテーテル手術の件数

 今まで個別の業務システムで保有していたデータを連結したことで悉皆性の高いデータの分析が可能となり、市民の健康に係る様々な実証実験、学術研究に利用されています。
 データを活用した研究の第一弾として、学術機関にデータを提供し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大期において、医療提供体制が維持されていたかを検証しました。医療レセプトデータを用いて、心臓カテーテル手術の件数と手術種類を緊急と非緊急に分けた場合の手術実施率の変化を、新型コロナウイルス感染症流行前後の同月で比較したところ、緊急手術が必要な心臓発作は感染症の影響を受けず、適切に治療されていたことが確かめられました。
(活用したツール等:SPSS、SAS、Stata等の分析ソフト)

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

社会課題の把握や政策を評価するための情報基盤を整備

 過去から現在までのより多くのデータが個人単位で総合的に分析できるようになったことで、市民全体の健康状態や課題の把握、保健事業の効果検証を行うための情報基盤を整備することができました。また、分析例で示したように、本システムが実社会での利用に耐えられる情報基盤であることが実証され、科学的根拠に基づく保健事業を推進することができるようになりました。

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

学術機関に無償でデータ提供し、研究結果をフィードバック

 学術機関から研究結果のフィードバックを受けることで、健康増進施策に活かせる先進的な知見を得ることも想定し、神戸市の倫理審査を経た上で、学術機関が研究目的で、無償でデータ利用できるようにしました。
 一方で、機微な情報である上に、データの範囲が幅広いため、利活用の具体的なイメージを各所管課や個人情報保護審議会で説明することに苦労しました。データの利活用はあくまで手段であり、その先にある市民の健康や福祉につなげるという目的をきちんと理解いただくことを心掛けました。

データ提供の流れのイメージ図
データ提供の流れイメージ図

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

市の抱える課題の解決や政策評価に向け蓄積したデータを利用したい

 研究利用の申請も増えており、当初想定していなかった課題に対する研究利用も増えています。
 一方で、現状では学術機関からの申請に基づき研究が進んでいますが、当市が抱える課題に関しては、当市から学術機関へ研究依頼をするなどして、主体的に当市の課題を解決していく必要があります。
 今後は、データを蓄積することにより、生活習慣病の発症予防や介護予防など、中長期的な評価が必要な事例に関する政策評価を進めていきたいと考えています。

参考サイト

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