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介護予防DX〜データを活用した介護予防推進事業〜

佐賀県 佐賀市 保健福祉部 高齢福祉課

佐賀県佐賀市 総務大臣賞 健康・福祉 行政データ 新規に調査

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概要

 医療・介護・健診等ビッグデータを活用し、地域の民生委員や医療機関等の関係者と連携して重症化リスクの高い高齢者の介護予防を推進するプロジェクトです。
 データをもとに科学的根拠に基づく効果的・効率的な対象者の抽出や、介護予防のための最適な支援を行う仕組みづくりを行い、市民が「生活や安心のためのより良い改革」が実感できるような介護予防DX*1を目指しています。

導入費・運用費

導入費 −
運用費 6,000千円(データ分析委託料)

受賞

  • 「第6回 地方公共団体における統計データ利活用表彰 総務大臣賞」(2021)

取組の流れ

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    高齢化の進展やコロナ禍により、支援を必要とする高齢者は増加傾向。健診未受診者の状況把握や対応の必要性があった

  • PPDAC-planアイコン画像

    重症化リスクが高い高齢者を抽出し、最適な支援を行うことが健康寿命の延伸に結び付くという仮説を設定

  • PPDAC-dataアイコン画像

    国保データベース(KDB)*2を活用するとともに、民生委員の協力を得て佐賀市独自のデータを収集

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    医療・介護・健診等データから後期高齢者を階層化し、ハイリスク者を抽出。フレイル*3をリスクスコアとして数値化

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    重症化のリスクが高い高齢者に対して医療専門職の指導と医療機関への受診勧奨を実施

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

支援を必要とする高齢者の増加。健診未受診者の状況把握や対応の必要性

 高齢化の進展やコロナ禍などの人口構造や社会環境の変化により、生活習慣病やフレイルの問題で支援を必要とする高齢者は増加傾向にあり、医療費の適正化の観点からも重要な課題となっていました。また、国民健康保険の健診受診率は40%に届かず、後期高齢者健診は10%台にとどまっているという現状があり、健診未受診者の高齢者の治療等の状況把握や対応の必要性が高まっていました。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

重症化リスクが高い人を抽出し最適な支援を行うことが健康寿命の延伸に結び付くという仮説を設定

 生活習慣病やフレイルの重症化・重度化のリスクが高い人を抽出し、優先順位をつけ、その人にあった予防や最適な支援を行うことができれば、医療費・介護費の適正化や生活の質(QOL)の確保・向上及び健康寿命の延伸に結び付くという仮説を立てました。その検証のため、医療・介護・健診データや佐賀市独自に集約した高齢者のデータを活用し、階層化・ハイリスク者の抽出を行うこととしました。

データの収集はどのように行いましたか?

国保データベースを活用。民生委員の協力の下、佐賀市独自のデータも収集

民生委員による高齢者実態調査
民生委員による高齢者実態調査

 生活習慣病の視点から高齢者の全体像を把握するため、国保データベース(KDB)の健診・医療・介護のデータを活用しました。
 また、佐賀市独自のデータとして、65歳以上の高齢者を対象に世帯状況や健康状態等を調査する「高齢者実態調査」のデータも活用しました。本調査は、地域の民生委員の見守りを兼ねた訪問による聞き取り方式で実施しており、今回、民生委員の協力を得て、フレイルに関する質問項目を追加し新たにデータ収集を行いました。
(活用した統計データ:医療費の地域差分析、介護給付費等実態統計、KDB(医療・介護・調剤等レセプト、健診データ)、佐賀市高齢者実態調査、佐賀市介護予防教室参加者データ、佐賀市国民健康保険糖尿病台帳)

どのような分析を行いましたか?

医療・介護・健診データから後期高齢者を階層化し、ハイリスク者を抽出。フレイルをリスクスコアとして数値化

 医療・介護・健診等データを活用し、佐賀市の後期高齢者33,881人全員について介護あり・介護なし、後期高齢者健診の受診あり・受診なし、医療機関での治療歴あり・なしなどの観点から階層化しました。そのことにより、糖尿病や高血圧などの重症化のリスクの高い高齢者を抽出し、支援をすべき対象者の優先順位付けを行いました。また、本取組では、健診及び医療機関の受診効果を算出するため、階層化したグループごとに受診の有無での推計医療費を算出し比較しています。
 さらに、フレイルの視点からは、フレイルに関する質問項目の結果をリスクスコアとして数値化し、見守りが必要な高齢者の見える化を進めており、リスクスコアとレセプトデータを組み合わせた分析も進めていきたいと考えています。
(活用したツール等:EXCEL等の表計算ソフト、高度な解析は専門業者へ委託)

生活習慣病の視点からの対象者の『階層化』
左:生活習慣病の視点からの対象者の『階層化』 右:取組の効果額の検証

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

重症化リスクが高い高齢者に対して医療専門職の指導と医療機関への受診勧奨

 生活習慣病の重症化のリスクが高い高齢者に対して、保健師や管理栄養士等の医療専門職が運動や栄養の指導を実施するとともに、治療が必要な人には医療機関への受診を促す勧奨はがきを送付し治療へつなげて重症化を予防する取組などを行いました。また、民生委員の見守り活動では、今後、フレイルのリスクスコアを踏まえた支援を行う予定です。
 このように市民の健康状態や生活環境に応じて、関係者の役割分担を明確化し、対象者への最適な支援となるような取組を行っています。

治療中断者への勧奨はがき
治療中断者への勧奨はがき

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

センシティブな情報のため、個人情報の取扱いに細心の注意が必要

 医療・介護・健診データはセンシティブな情報のため、個人情報の取扱いには細心の注意を払いました。また、分析に用いたデータは各目的に応じて収集したものなので、分析結果をどのように関係者に共有していくかについては、目的と照らし合わせながら慎重に検討する必要があります。
 また、対象者を抽出しても、支援をする保健師等の専門職のマンパワーが限られているため、効果的・効率的な手法の確立のために実践を重ねながら日々ブラッシュアップをしています。

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

対象者へ効果的・効率的なアプローチ。共通のビジョンにより関係者との連携が強固に

 データ利活用により見える化を図ることで、市として対象者へ効果的・効率的なアプローチが可能となりました。また、地域や医療機関等の関係者が共通のビジョンを持つことができ、関係者との連携がより強固なものとなりました。
 介護予防の取組では、市民自らが介護予防に取り組む行動変容を目指しています。それを促すためにも、今回の取組についての効果検証を行い、科学的根拠に基づきPDCAサイクルを確立するなど、事例を横展開できるような佐賀市モデルの構築を目指したいと考えています。

佐賀市の介護予防DXのPDCAと連携体制
佐賀市の介護予防DXのPDCAと連携体制

脚注

 *1 DX:
 ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること。

 *2 国保データベース(KDB):
 国保連合会が保険者の委託を受けて行う各種業務を通じて管理する「特定健診・特定保健指導」「医療」「介護保険」などの情報データベースのこと

 *3 フレイル:
 加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態。要介護に至る前段階として位置づけられている。

参考サイト

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