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糸島市マーケティングモデル推進事業

福岡県 糸島市 企画部 経営戦略課

福岡県糸島市 特別賞 産業振興 公的統計データ 行政データ 民間データ 新規に調査

「糸島市マーケティングモデル推進事業」サムネイル画像

概要

 統計データの分析により、地域の強みを発見し、糸島ブランド創出のためのマーケティング支援策を立案・実践したプロジェクトです。糸島市では、地域に特化した産業が少なく、地元に仕事が乏しいことが、若者の流出や出生率の低下を招いていました。分析の結果、地元企業の多くを占める小規模事業者の生産性が低いものの、「食」の分野は比較的、競争力があるとわかり、食関連の小規模事業者のマーケティング力を高め、生産性を向上させる取組を行いました。商品の売上は全てアップし、現在では事業者のマーケティング意識の向上が見られ、民間主導の取組に移行しています。

導入費・運用費

導入費 1,000千円(広告宣伝費として。このうち50%は地方創生推進交付金を活用)
運用費 −

受賞

  • 「第5回地方公共団体における統計データ利活用表彰 特別賞」(2020)
  • 「公務員がすごいと思う地方公務員アワード賞」(2018)
  • 「内閣府地方創生政策アイデアコンテスト地方創生担当大臣賞」(2016)

取組の流れ

  • PPDAC-problemアイコン画像

    地域に特化した産業が少なく、地元に仕事がないことが若者の流出や出生率の低下等様々な問題の原因になっていた

  • PPDAC-planアイコン画像

    「強み・弱み」「顧客・市場」「競合との比較」の3つの視点で、市、産業別、細かい業態別と次第に細分化しながら分析を深める

  • PPDAC-dataアイコン画像

    e-Stat*1、RESAS*2など公的統計データと糸島市統計白書を活用

  • PPDAC-analysisアイコン画像

    細分化する方向で分析を深めて、観光客の目的と糸島市の強みから、「食」分野に着目。アンケートで小規模事業者の経営課題を絞り込む

  • PPDAC-conclusionアイコン画像

    福岡都市圏をターゲットに、食分野の小規模事業者のマーケティング支援。第1弾商材の糸島産ふともずくは売上拡大を実現。第2弾商材、第3弾商材と取組継続中

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

地域に特化した産業が少なく、若者流出や出生率低下の原因に

 糸島市は地域に特化した産業が少なく、地元に仕事が乏しいことが、若者の流出や出生率低下、移住の障壁になるといった様々な問題を引き起こしていました。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

3C分析*3で糸島を客観視。分析を深めて地域課題を明確化

 観光・地域資源、強み・弱み、近隣自治体との比較などの観点で3C分析を行い、糸島市を客観視しました。次に商工業、農業、漁業、観光業の産業分類別に、さらにその中の細分化した業態別に3C分析からデータを分解してきました。その際に売上額、付加価値額などのデータを収集するといったように、大から小へ分解していく計画をたてました。

3C分析の考え方
3C分析の考え方

データの収集はどのように行いましたか?

e-Stat、RESASなど公的統計データと、独自のアンケートやインタビューも実施

 主にe-StatやRESASなどの公的統計データと糸島市統計白書を利用し、3C分析と、その後のマーケティング支援に必要なデータを収集しました。不足する部分は、アンケートやインタビューも実施しました。
(活用した統計データ:e-Stat、RESAS、糸島市統計白書、グーグル・スカラー、CINIIの論文など)

どのような分析を行いましたか?

対象を絞る方向で分析。経営課題に関するアンケートも実施

 注目分野を見つける段階では、対象を絞る方向で分析しました。平均の比較、回帰分析、相関係数、折れ線グラフを並べて見比べるなどして、ポイントを絞っていきました。小規模事業者の課題については、従業員5人未満の事業者とそれ以外の事業者を比較して分析しました。統計データの分析に加えて、食分野の事業者に経営課題を聞くアンケートも実施しました。これにより、小規模事業者が、マーケット情報や広告宣伝など主にマーケティングに関して課題を感じていることが確認できました。
(活用したツール等:e-Stat、RESAS、Excel、jSTAT MAP*4など)

対象を絞って分析することにより、注目分野を見つける
対象を絞って分析することにより、注目分野を見つける

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

福岡都市圏をターゲットに、食分野の小規模事業者のマーケティング支援

高校生による「もずく収穫体験」
高校生による「もずく収穫体験」

 分析の結果、「食」分野の付加価値が高く、主要なマーケットである福岡市内におけるシェアも高いことがわかりました。そこで、マーケティングを支援するために、食品産業に関わる事業者で結成された協議会と連携しました。
 会員企業から募集した商品を、福岡市内の消費者やバイヤーの目線に立ってブラッシュアップし、販路開拓や宣伝活動を行いました。
 第1弾商材は糸島産ふともずくです。商品開発では糸島漁業協同組合と、販路開拓や宣伝活動では福岡市のビジネス科を持つ高校と連携し、市場リサーチ、デザインリニューアルなどを含め、共同でマーティング活動を進めました。

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

わかりやすく見せることを意識

 方向性を見失わないように、フレームワークやインタビューなどで仮説のストーリーをイメージし、データで裏付けを取っていきました。
 分析においては、分解と比較を重視しました。専門的な難しい分析は必要ありません。政策立案へのデータ活用を広く職員に普及させたいと考えていたので、グラフの並べ方や見せ方を工夫するなど、わかりやすく見せることを意識しました。

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

糸島産ふともずくは1年半で売上6倍に

 糸島産ふともずくは、1年半で売上が6倍になりました。取組は様々な表彰も受け、広く糸島市の資源を知ってもらう機会となりました。活動は続いており、第2弾の糸島産天然真鯛だし、第3弾の博多バリメン*5も売上アップしています。
 この取組の一番の効果は、当事者である事業者の意欲とマーケティング意識が向上したことです。スタートから3年が経過し、今では民間主導の取組に移行しました。移行後に、第4弾として糸島鯛味噌*6の取組も始まっています。次の課題は、このマーケティングスキルをさらに多くの市内の事業者へと広めていくことだと考えています。次の課題は、このマーケティングスキルをさらに多くの市内の事業者へと広めていくことだと考えています。

脚注

 *1 e-Stat:
 政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できたりするなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイト。

 *2 RESAS:
 地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化するシステム。

 *3 3C分析:
 Customer(顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの視点で市場環境を分析し、課題解決や戦略策定につなげるフレームワーク

 *4 jSTAT MAP:
 地図で見る統計(jSTAT MAP)は、地理情報システム。統計地図を作成するなど、利用者のニーズに沿った地域分析を可能にする様々な機能を提供している。

 *5 博多バリメン:
 糸島産メンマを使った新感覚スナック

 *6 糸島鯛味噌:
 糸島天然真鯛をたっぷり入れた鯛味噌。ゆず、バター、トリュフの3種類の風味で展開

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