和歌山県は、全都道府県中で7番目に人口減少期へ転じた過疎先進県であり、県内全域で人口減少や高齢化が進行しています。
特に過疎地域では、進学先が少ないため、高校進学時から地域外に転出せざる得ない状況で、若年層の流出による高齢化・過疎化の進行が深刻です。
そのため、移住定住や集落の維持・活性化を図るための効果的な施策を検討する上で、それぞれの地域の将来の姿を客観的に把握するためのデータが必要でした。
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和歌山県の過疎地域における集落の維持・活性化と再編
和歌山県 企画部 地域振興局 移住定住推進課
和歌山県 人口問題 住民生活・安全 公的統計データ 2019
概要
過疎地域においては、人口減少や少子高齢化の進行が著しく、集落の維持・活性化が課題となっている。一方、近年はエビデンスに基づく行政の推進が必要性を増している。そこで、各種統計データ(国勢調査等)のコーホート分析*1により、明治行政村単位での将来人口や集落維持のコストを推計することで、過疎地域での各種施策を検討する時の参考にする。
導入費・運用費
導入費 −
運用費 2,000千円(委託料)
取組の流れ
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過疎地域での施策の効率化
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集落単位での人口動態、男女比等を把握
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e-Stat*2、GIS*3を活用して集落単位のデータ収集
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「将来の人口推計」など明治行政村単位でコーホート分析
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データ化することで過疎地域の課題を再認識
ヒアリング・ここが知りたい!
どのような課題がありましたか?
過疎地域の将来像を客観的に把握
エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?
過疎化の進行を詳細に把握
過疎化の進行を詳細に把握する上での最適な単位設定を検討し、その結果に基づき、過去の国勢調査のデータを分析するとともに、直近の国勢調査の人口動態に基づく将来の人口推計値の算出を行うこととしました。
データの収集はどのように行いましたか?
e-Stat、GISで集落単位のデータ収集
e-Stat、GISを用いて集落単位のデータを収集しました。(研究委託先:大阪市立大学研究チーム 代表 水内俊雄教授)
(活用した統計データ:e-Stat、GIS)
どのような分析を行いましたか?
明治行政村単位でコーホート分析
各集落の人口データを最適な単位である明治行政村単位に置き換え、その後、明治行政村単位でのコーホート分析による「将来人口の推計」「人口動態のマッピング」「社会インフラ維持にかかるコスト推計」等の分析を行いました。
(活用したツール等:e-Stat、Excelなどの表計算ソフト、GISなどの地理情報ソフト)

結果としてどのような政策に結びつきましたか?
人口推計を把握したことで生活圏の維持に関心
ふるさと生活圏(明治行政村)単位の人口推移を把握したことで、生活圏の維持について考える機会を市町村に提供することができました。
データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。
集落単位でのデータ収集に苦戦
集落単位のデータ収集を行う上で、e-Statの仕様上、一部集落のデータが秘匿されている等の制約があり、個別に申請してデータを取得したり、過去の合併編入履歴(平成や昭和の市町村合併等に伴う行政区の異動)の確認をしたりしなければならなかったことが苦労した点です。
その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?
データ把握で危機感を再認識
明治行政村単位の人口の推移や将来の姿をデータとして把握することができた結果、これまで以上にスピード感を持って過疎対策を行う必要があるという危機感が、市町村にも県にも生まれたことが最大の効果でした。
今後も、統計学的エビデンスに基づいた施策支援のツールとして活用するため、今回得られたデータベースを利用するためのセミナーなどにより、県職員・市町村職員の情報解析力の強化を図る予定です。
脚注
*1 コーホート分析:
同じ年(または同じ期間)に生まれた人々の集団(コーホート)について、年代を経てどのように変化していくかを見る方法。人口推計等で利用される。
*2 e-Stat:
政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できたりするなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイト。
*3 GIS:
Geographic Information Systemの略称。日本語では「地理情報システム」と訳されている。地理情報をコンピューターの地図上に可視化して、情報の関係性やパターン、傾向を示した。