どのような課題がありましたか?
環境が変化する中で高度化・多様化するニーズの把握に課題
人口減少の進展など自治体を取り巻く環境が大きく変化する中で、地方公共団体においても、限られた資源を有効に活用し更なる業務効率化を図ることが求められています。特に姫路市では、平成の大合併により広域化し、都市部から自然豊かな地域まで混在することになり、新たな行政課題や高度化・多様化する市民ニーズに対応するためには、客観的事実(データ)から地域の特性や課題を把握する必要がありました。
しかしながら、庁内の各部署が保有するデータを効率的かつ横断的に分析する仕組みがなく、地域ごとの特性や課題・ニーズを高い精度で適時に把握することができずにいました。
人口・住民異動分析
エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?
「統合データベース」を構築、日々の業務に応用へ
姫路市の情報システム最適化事業の一環として、マルチベンダー*1環境である各部署の業務システム(住民基本台帳、介護保険システム、保育所システムなど)のデータ連携基盤として、「統合データベース」を構築する中、このデータベースを活用し、各部署の職員一人ひとりが日々の業務で分析利用できる環境を実現できないかと検討を進めました。
データの収集はどのように行いましたか?
各部署の保有データを抽象化
「統合データベース」から一見して個人を識別できないように抽象化して連携することで、分析用ビッグデータとして適正かつ安全に管理することを可能にしました。
(活用した統計データ:RESAS*2(人口増減、市区町村)、e-Stat*3(医療施設調査)、住民基本台帳、子ども子育て情報(児童名簿、保育所認定情報、待機児童情報)、国民健康保険の特定健診情報、介護保険情報など)
行政情報分析ダッシュボード
どのような分析を行いましたか?
人口・住民異動分析や子ども・子育て分析など
人口・住民異動分析、世帯異動分析、出先機関行政窓口の利用状況分析、子ども・子育て分析、保育所適正配置計画関係分析、国民健康保険の特定健診分析、マイナンバーカード取得状況分析などを実施しました。
(活用したツール等:独自のツール(行政情報分析基盤、MS社 SQL Server Enterprise)
結果としてどのような政策に結びつきましたか?
子ども子育て計画や国保特定検診の受診勧奨事業の推進
子ども・子育て分析の結果を「子ども・子育て支援事業計画」の基礎資料として活用、生活習慣病の低減を目的とした国保特定健診受診率を高める業務の効率化などが推進されています。
データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。
業務で広く活用できるように安全かつ使い易いインターフェースに
個人情報を含むデータを元データとするため、抽象化処理の手法等、個人情報の取扱いの考え方については、有識者の意見を踏まえて整理しました。また、各部署の職員一人ひとりが日々の業務で当たり前に活用できるようにするためには直感的で使い易い分析インターフェースが必要でした。そのため当部署の独りよがりでなく、各部署の現場と相談しながらアジャイル型で分析機能を構築していくこととしました。
その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?
交通政策や福祉施設の最適化など課題は山積、さらなる分析へ
行政情報分析基盤を利用している職員の行政マネジメント力は確実に向上しております。しかしながら、まだまだ全部署・全職員に浸透しているわけではないため、さらなる理解促進を進めていく地道な努力が必要です。
また、庁内では、交通政策(公共交通機関網の最適配置)分野や、福祉施設(介護施設、公園など)の立地最適化、空き家対策、貧困対策分野など、まだまだ潜在的な分析ニーズは多数ありますので、所管課と調整しながら、さらに活用データや分析機能を増やして多面的な深い分析につなげていきたいと考えています。
データを活用して政策立案につなげた
脚注
*1 マルチベンダー:
製造元の異なる複数の製品を組み合わせてシステムを構築する手法。特定のメーカーに縛られず、多種多様な製品を組み合わせることで、コストや性能、機能などニーズに応じて柔軟にシステムを構築することができる。
*2 RESAS:
地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化するシステム。
*3 e-Stat:
政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できたりするなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイト。