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基礎自治体で前例のないクリエイティブ産業実態調査を用いた地域特性を生かしたまちのにぎわい創出策の展開
〜港区におけるクリエイティブ産業実態調査〜

東京都 港区 政策創造研究所 企画経営部企画課

東京都港区 特別賞 産業振興 公的統計データ 新規に調査

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概要

 港区には、多くのクリエイティブ産業に関連した事業所・人材が集積しています。平成26年度に東京都が実施した「クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」では、同産業は港区における産業の「強み」の一つであることが示唆されました。
 本調査は、区内のクリエイティブ産業関連事業所に、実施状況や課題、事業環境としての港区の特徴、必要な行政サービス等について調査を実施。振興するために必要な課題、施策を明らかにすることで、区の産業振興施策、地域振興施策に結び付けていくことを目的としています。

導入費・運用費

導入費 −
運用費 −

受賞

  • 「第4回 地方公共団体における統計利活用表彰 特別賞」(2019)

取組の流れ

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    港区の産業にクリエイティビティが欠かせないが、実態を把握できていなかった

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    都調査を参考に独自の分類でクリエイティブ産業・企業を調査

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    港区のクリエイティブ企業へ調査票を送付

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    クロス集計と多変量解析を活用し、クリエイティブ産業・企業の特徴・傾向を把握

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    中小企業の活性化を通して、他産業の業績も向上

ヒアリング・ここが知りたい!

どのような課題がありましたか?

産業活性化にはクリエイティビティが不可欠、実態調査へ

クリエイティブ産業の実態調査

 港区の産業、企業活動では、「クリエイティブ産業」「クリエイティビティ」が不可欠な要素になってきたと認識しています。ですが、既存の調査などでは、「クリエイティブ産業」の実態を深く知ることはできません。
 そもそも日本標準産業分類のような既存の産業分類には「クリエイティブ産業」は存在していません。そこで、港区政策創造研究所では、区独自の調査として「クリエイティブ産業」の実態を把握し、区としての支援策のあり方を検討することを考えました。

エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?

産業視点と企業視点の双方から

 まず、「クリエイティブ産業」の範囲として平成26年度東京都調査を参考に設定しました。クリエイティブ産業全体としてだけでなく、個々の企業のクリエイティブ活動に視点を当てて考察を行うことも同様に重要視しました。このように、産業、企業という2つの視点からクリエイティブ産業の実態を明らかにし、どのような施策が必要なのか検討を進めました。
 調査項目は、港区内に数多く集積している「飲食業」もクリエイティブ産業として調査対象に含めたので、調査票の分量を節約するため「飲食業」向けと「飲食業以外」向けの2種類の調査票を用意しました。

データの収集はどのように行いましたか?

都調査の対象に準じた7600企業へ調査票を送付

 平成30年5月1日現在のタウンページデータベースに掲載されている港区内にある全事業所のうち、東京都労働局が平成26年度に実施した「クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」において調査対象とされていた業種に準じて、該当する対象すべてを抽出した約7600件に、研究所の研究員が設計した調査票を送付しました。回収数は1506事業所、有効配布数に対する回収率は20.8%でした。
(活用した統計データ:総務省「平成24年経済センサス−活動調査」「平成26年経済センサス−基礎調査」「平成28年経済センサス−活動調査(速報値)」、総務省「平成26年経済センサス−基礎調査」調査票情報、東京都産業労働局「平成21年度政策調査 クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」「平成26年度政策調査 クリエイティブ産業の実態と課題に関する調査」)

約7600件への調査結果

どのような分析を行いましたか?

クロス集計分析と多変量解析

 最初に基本集計分析を、次いでクロス集計分析を行いました。特筆すべき分析手法として、指定の設問中で「企画・提案力」や「商品・サービス・技術の開発力」等の4つの項目に回答した個数を「クリエイティブ度」(「1個該当事業所」や「該当なし事業所」など)として再集計、クロス集計することで、クリエイティブ度に応じた特徴を明らかにしました。また、クロス集計とは異なる視点で分析するため、多変量解析を実施し、クラスタ分析等による各グループの傾向等を明らかにしました。
(活用したツール等:e-Stat*1、Excelなどの表計算ソフト、SPSS、SAS、Stata などの分析ソフト)

結果としてどのような政策に結びつきましたか?

新たな中小企業支援

 調査結果に基づき、以下の2つの事業が、令和2年度の新規及びレベルアップ事業として予算計上されています。

・オープンイノベーション創出支援事業
 多様な企業、人材等が集積する港区ならではの優位性を生かしながら、オープンイノベーション(外部との連携による新製品の開発等)の手法を積極的に取り入れ新製品・新技術開発を行う中小企業者を支援するため、マッチング会を開催するとともに、大学等との共同研究に係る経費の一部を補助します。

・知的財産活用支援
 区内中小企業者等に対し、産業財産権を取得する際の経費の一部を補助することによって、新たな開発や事業創出等を支援し製品開発力や競争力の強化を図ります。令和2年度は、産業財産権の取得や戦略等に係る派遣相談を新たに実施します。

データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。

クリエイティブは地域ごとに異なるため、仮説の設定が困難

 難しかった点は、自地域のクリエイティブ産業の実態について、地域におけるクリエイティブ産業の特徴はそれぞれ異なることから、経済センサスを活用し状況を把握したうえで、調査の仮説を形成しなくてはいけなかったことです。経済センサスでは「クリエイティブ産業」という分類はないので、本調査においては独自に再分類しました。前例の少ない同産業の調査では、調査開始前に業種を選択することが重要でした。

その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?

クリエイティブ起点に他産業も盛り上げたい

 「オープンイノベーション創出支援事業」では、区内の中小企業と大学等の研究機関とのマッチング数を増やし、新製品・新技術の開発促進支援を図っていきたいと思います。
 「知的財産活用支援」では、提携弁理士の派遣相談を通じて、中小企業に対して特許出願前から取得後のアフターフォローまで支援します。また、弁理士と港区において情報共有することにより、中小企業支援の強化とサービス向上を進めていきたいと思います。
 両事業ともに、令和2年度に効果検証を繰り返し行い、令和3年度に向けてさらに拡大していくと同時に、このようなクリエイティブ産業支援を通じて、他の既存企業のクリエイティビティを引き出し、区全体の産業のレベルアップにも繋げていきたいと思います。

脚注

 *1 e-Stat:
 政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できたりするなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイト。

参考サイト

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