会津若松市では東日本大震災を契機に、主に防災目的のために市民部主導でGIS(地理空間情報システム)を導入し、住民基本台帳に基づく住民の方の居住場所をGIS上でポイント(点)として管理しています。このポイント(以下「住民ポイント」という)は日々の住基異動を受けて毎日更新しており、常に最新の状態が保たれています。
地理空間上で様々な情報を管理・分析できるGISの機能と、地域住民の最新の居住位置が分かる住民ポイントデータの価値を最大限に活かすことを目指し、庁内横断的な研究体制として平成25年度より「統合GIS活用検討チーム」を構成しました。
ここから本文です。
住基空間情報を軸としたGIS利活用
福島県 会津若松市 企画政策部 情報統計課
福島県会津若松市 統計局長賞 防災・危機管理 情報政策 行政データ 2019
概要
主に防災目的のため市民部主導でGIS*1を導入し、住民基本台帳に基づく住民の居住場所をGIS上でポイント(点)として管理しています。このポイント(以下「住民ポイント」という)は日々の住基異動を受け毎日更新しており、常に最新の状態が保たれています。住民ポイントは当初の目的どおり、防災訓練等において役立てられているほか、各所属の業務の高度化・効率化のため様々な形で活用を行っています。
導入費・運用費
導入費 −
運用費 −
受賞
- 「第4回 地方公共団体における統計利活用表彰 統計局長賞」(2019)
取組の流れ
-
防災目的で整備した住民ポイントのさらなる利活用
-
バス路線再編、空き家抽出など各課の課題に合わせた活用を計画
-
住民ポイントデータと庁内データを活用
-
住民ポイントデータとGISの突き合わせ
-
業務の大幅な効率化と人件費削減などに成功
ヒアリング・ここが知りたい!
どのような課題がありましたか?
防災目的で整備した住民ポイントのさらなる利活用へ
エビデンス(データ)収集のために、どのような計画を立てましたか?
バス路線再編、空き家抽出など各課の課題に合わせた活用
複数課の職員で構成した「統合GIS活用検討チーム」のミーティングで、各課の課題や取組状況を共有しました。既に取組を進めていた防災訓練における活用の他に、次のような切り口でGISや住民ポイントの活用を図りました。
1. 市内のゴミステーションの位置をGIS上で管理
2. バス路線再編のための分析基礎データとして活用
3. 空き家の可能性がある建物の簡易抽出
4. 町内会や敬老会など、地域ごとの様々な組織やイベントでの対象者抽出
5. 50mメッシュで区切り集計した人口統計(年齢3区分)をオープンデータとして公開
データの収集はどのように行いましたか?
住民ポイントデータと庁内データ
基本的には住民ポイントデータと、必要に応じて各種庁内データを活用しました。(活用した統計データ:会津若松市保有データ)
どのような分析を行いましたか?
効果的な可視化や分析により、政策検討のアウトプットを導出
それぞれの事例によって異なるのですが、公共交通網形成計画については、住民ポイントデータとGISを突き合わせ、「人口集中・利便施設集中地域」「バス沿線だが利用者が少ない地域」「交通空白・生活不便地域」に分類しました。さらに、各箇所の人口・単身女性高齢者・高校生層を地図上に可視化しました。そのデータをもとに、地域住民と検討会を行い、地域ごとのバスの必要性を確認しました。
また、空き家の可能性がある建物を簡易抽出するにあたっては、住民ポイントデータとGIS上の建物を突き合わせることで、「住宅利用かつ住民ポイントなし」の建物を空き家の可能性が高いものとして抽出しました。そこから、抽出した空き家をグーグルストリートビュー上で巡回調査できるアプリを職員が開発し、現地に行く前段階で空き家の外観を確認できるようにしました。
(活用したツール等:Excelなどの表計算ソフト、GISなどの地理情報ソフト)
結果としてどのような政策に結びつきましたか?
業務効率化に加えて、人件費の大幅削減も
各取組に、「業務効率の大幅改善」「情報の一元化」「問い合わせ対応の効率化」などの効果が得られました。例えば「空き家の可能性がある建物の簡易抽出」などは、概数ではあるものの空き家状況の把握を素早く行うことができ、時間・人件費の大幅削減に繋がりました。
データ利活用(収集や分析)において工夫した点や難しかった点について教えてください。
研修などで随時、職員に啓発
会津若松市では、住民異動情報を窓口職員が毎日更新しているため、常に最新の状態を保つことができております。この作業は一定程度負担がかかりますが、データを活用している職員が、整備の必要性を研修などで説明し、理解を得るようにしています。
その政策によって、どのような効果が現れましたか?
また、今後どのような改善点や展望をお考えでしょうか?
住民ポイントデータで行政事務が効率化・高度化
検討チームで共有された取組を担当者が各所属に持ち帰り、業務で応用するとともに、毎年庁内でのGIS活用事例報告会を開催することで、庁内におけるGIS と住民ポイントデータの認知と活用は年々進んでおります。
元々は防災目的として導入した経過にありますが、全庁的に活用が進むことで横断的に様々な所属のデータが活用できるようになり、その結果として、災害時要支援者名簿の効率的な作成に繋がるなど、防災分野への活用もより効果的になっております。
引き続き、庁内検討チームや活用事例報告会等でのグッドプラクティスの共有等を通じて、GISの普及や利活用の促進を図り、業務の課題解決や効率化に取り組んでいきたいと思います。
脚注
*1 GIS:
Geographic Information System の略称。日本語では「地理情報システム」と訳されている。
地理情報をコンピューターの地図上に可視化して、情報の関係性やパターン、傾向を示した。