取組のきっかけを教えてください。
市民生活に身近なもので効果発揮へ
兵庫県加古川市企画部情報政策課情報政策係の担当者
加古川市では「総合計画」「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、情報通信技術によるまちづくりを進めており、平成29年度からは見守りカメラや見守りサービスの導入、防災アプリの導入等、ICTやデータを活用した安全・安心の事業に取り組んでいます。これまでも、安全・安心の取組についてはホームページなどを活用し情報発信をしてきましたが、よりきめ細やかな情報発信を行うためICTやデータの活用について検討を行ってきました。その取組のひとつとして、さまざまな情報を地図上で重ねて表示できる「行政情報ダッシュボード」を構築しました。
どのような計画を立てましたか?
データを「地図化」、一元把握を可能に
緊急情報、見守りカメラの設置場所等、V-ALERT*3といった安全・安心にかかる情報をインターネット上で誰もが確認できる情報掲示版のような形にしたいと考え、市民の方が身近に感じることのできる「地図」をイメージして作り始めました。加古川市がオープンデータとして提供している公共施設やAED設置施設などの位置情報に加えて、地域経済分析システム「RESAS*4」などの国の統計情報や、ひょうご防犯ネットより発信される「防犯情報」、V-ALERTなどの「防災情報」などの安全・安心にかかる情報を地図に重ねる状態で重層的に表示し、各地域の状況を一元的に把握できる機能を構築していきました。
どのようにしてデータの収集を行いましたか?
市のオープンデータやe-Stat等を活用
加古川市オープンデータカタログサイトや政府統計の総合窓口e-Stat等でAPIで提供されているデータなどを活用しました。
どのようにしてデータの分析を行いましたか?
外部業者や兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科の研究に応用
兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科が行った、加古川市内の保育園のアクセシビリティやコミュニティバス等の交通関連データの地域分析・研究等に活用されました。
工夫した点や難しかった点は?
「地図」ゆえに緯度経度などに苦戦
安心して子育てを行う環境の整備や高齢化社会に対応するため、地域総がかりで見守る地域コミュニティの強化に注力しました。市民にとっての有効性と利便性を考え、地図上で重ねて誰もが簡単に確認できるように工夫したことです。また、緯度経度を持たないため地図に結びつけることができない「安全・安心メール」や「防災情報」については、文字情報として表示させるように工夫しました。
結果としてどのような政策に結びつきましたか?
「見守りカメラ」で犯罪防止へ
国や市が保有する様々な分野の情報を地図上で重ね合わせて表示することにより、住民自身が自分たちの暮らす地域に対する理解を深めることができるようになりました。また平成30年度に、見守りタグ検知器を同梱した見守りカメラを市内1,475箇所に設置し、その見守りカメラの設置箇所を行政情報ダッシュボードにおいて地図上で表示させていますので、犯罪抑止効果につながっています。
加古川市ダッシュボード・見守りカメラのある場所
今後の展望をお聞かせください。
民間のデータを検討し、オープンガバメントの実現図る
今後、より暮らしに身近な情報を行政情報ダッシュボード上で表示できるよう人々の安全・安心につながるデータから優先的に掘り起こし、情報収集をし、民間や市民団体が作成したデータ等も検討することで、オープンガバメントの実現を図り、新たな創造性を探っていきたいと考えています。
脚注
*1 e-Stat:
政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できるなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイト。
*2 API:
API(アプリケーションプログラムインターフェイス)の頭文字を取った言葉。自社システムと他社システムの連携などのことをAPI連携と言う。
*3 V-ALERT:
「V-ALERT」は、2016年に放送を開始したV-Lowマルチメディア放送「i-dio」(アイディオ)の放送波を使って、自治体が直接大切な情報を住民に届けることができるシステム。
*4 RESAS:
地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約し、可視化するシステム。