岐阜県では、学習指導要領に統計の内容が盛り込まれたことを契機に、平成23年度から、統計に慣れ親しむ機会として、「データ活用講座(出前授業)」を実施していますが、年間10校程度が限界のため、より多くの児童に統計に親しむ機会を提供したいと考えていました。また、学校現場からは、算数科や社会科、ふるさと学習などで活用できる市町村別データやランキング集があればとの要望をいただいていました。そこで、ふるさと岐阜県に愛着をもってもらうとともに、統計データを活用する力の向上や、統計データの重要性を児童のうちから正しく理解してもらうこと(統計リテラシー)などを目的に、統計学習副読本を作成することにしました。
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小学4・5・6年生のための統計学習副読本
岐阜県 環境生活部 統計課
岐阜県 特別賞 子育て・教育 広報PR 公的統計データ 2018
概要
統計データを用いてふるさと岐阜県の魅力や特徴を楽しく学ぶことができ、アンケート調査を用いた課題解決プロセスの学習ができる学習指導要領に沿った補助教材を教育委員会と連携して作成しています。具体的な活用方法を手引きとしてまとめ、学校の先生方へ積極的に情報発信しています。
導入費・運用費
導入費 約2,000千円(印刷製本費として。その他、発送費など)
運用費 −
受賞
- 「第3回 地方公共団体における統計利活用表彰 特別賞」(2018)
取組の流れ
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児童に、統計に慣れ親しみ、ふるさと岐阜県に愛着をもってもらう機会を提供したい
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小学校高学年向けに統計データを活用した副読本を作成
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学校側に必要なデータをヒアリングし、職員が収集・集計
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岐阜県の特色あふれるデータや、データ分析による気づき・発見の場を提供
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教科横断的・総合的な活用がされ、データから見た岐阜県の強みを、自信をもって言える子が増えている
ヒアリング・ここが知りたい!
取組のきっかけを教えてください。
児童が、統計に慣れ親しみ、ふるさと岐阜県に愛着をもつ機会を
どのような計画を立てましたか?
学習指導要領に準拠し、児童の学習段階にあった補助教材を企画

副読本の内容については、授業で活用していただきやすいように、学習指導要領や教科書に準拠したものとしました。副読本の対象は小学校高学年とし、社会科では市町村や県、日本全体の事を、算数科では大きな数や割合、平均、グラフなどを学ぶ時期であり、児童の学習段階に合わせてご活用いただける補助教材を目指しました。
また、児童が使用するため、大きさは教科書や資料集と同じB5ワイド版、表紙は水に強い加工、綴じ方は糸がかりとするなど、使いやすくて丈夫な仕様とすることにもこだわりました。
データはどのように収集しましたか?
学校現場で必要な情報を、e-Stat*1などの公的データから抽出
副読本に掲載したデータは、総務省をはじめとする各府省庁が公表しているデータを、e-Statや冊子等で収集したほか、岐阜県の各課が公表しているデータも活用しました。収集に当たっては、学校現場から必要なデータをヒアリングし、私たちが収集・集計することで、先生方が授業の教材作成のためにデータ収集に煩わされるといった負担の軽減も狙っています。
どのような分析を行いましたか?
児童にデータ分析のコツをつかんでもらいたい
まずは、教科書に掲載されているデータやグラフについて、県・市町村のデータを調べました。岐阜県は製造業が盛んで、出荷額等シェアが全国1位の製造品が数多くあります。そういった、児童が興味を引くような岐阜県の特色あふれるデータを盛り込んだほか、県のデータに限らず、児童にとってより身近で生活実感のある市町村別データや圏域別データについても分析を行いました。
また、児童にデータ分析のコツをつかんでもらうことにも重点を置いています。例えば、実数と割合ではランキングが異なることがあるなど、児童の気づきや発見の場を設けられるようにしたほか、新学習指導要領に「統計的探究プロセス」(PPDACサイクル)が明記されたことにより、統計を活用した課題解決の手法について解説するページも作成しました。

工夫した点や難しかった点は?
データのみでなく、演習ページやコラムも用意
統計データ集のみで終わらせず、算数科で習ったグラフを使って自分が暮らす市町村のデータをグラフ化してみる演習ページや、児童が自主的に取り組めるコラムも用意しました。コラムでは、データをもとに岐阜県の未来を考えられる子どもの育成のための「岐阜県の30年後の人口は?〜人口減少社会への挑戦」、統計調査に対する理解につなげるための「統計調査員さんのお仕事〜統計調査に協力しよう」などがあります。
また、児童に興味をもってもらえるよう、表紙やタイトル、配色なども工夫し、本の中では、岐阜県統計課のマスコットキャラクター“テルミー”がポイントを解説しています。
結果としてどのような政策に結びつきましたか?
教育委員会からも高評価、複数の教科で横断的・総合的に活用される
学習指導要領や現場の要望に沿った副読本としたことで、社会科や算数科以外にも、国語科や理科、家庭科などまで、教科横断的・総合的に活用いただけています。教育委員会からも高い評価をいただき、現場での活用促進のため、積極的なご支援をいただいています。
今後の展望をお聞かせください。
子どもが、データから、岐阜県の「魅力」や「強み」を感じる

副読本を活用した出前授業を行った際には、児童から、「岐阜県には1位のものがたくさんあってすごい、嬉しい」といった感想をもらえるなど、データをもとにした岐阜県の強みを、自信をもって言える子が増えつつあると感じています。また、一般の方から個人用を希望するお問い合わせや、児童センターから数冊欲しいという要望があるなど、統計の普及啓発やふるさと学習として相応の効果があると感じています。
今後も毎年発行・配布を続けていくことで、さらに現場に定着させ、統計に慣れ親しみ、ふるさと岐阜県に愛着がもてる機会を提供できればと考えています。
脚注
*1 e-Stat:
政府統計の総合窓口(e-Stat)は各府省等が公表する統計データを一つにまとめ、統計データを検索したり、地図上に表示できるなど、統計を利用する上で、たくさんの便利な機能を備えた政府統計のポータルサイト。