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統計研修所への高まる期待
総務省統計研修所長 福井 武弘 (肩書は掲載当時のもの)
総務省統計研修所は、国・地方の全ての職員を対象とした統計専門の研修機関で、職員の統計知識の向上及び公的統計を支える人材の育成を担っています。具体的な役割は、3点挙げられます。1点目は、統計リテラシーの向上です。統計の有用性の理解、統計データを利活用する能力など、公務員が備えるべき統計的素養を習得する場を提供することです。2点目は、統計調査の企画・実施・集計を担う人材の育成、3点目は的確な行政運営のために専門的に統計データの収集・加工・分析を行う人材の育成です。最近、これらの役割を担う統計研修所に対する期待が高まっていることを痛感しています。
情報化社会においては、インターネットなど情報通信技術の発展により、爆発的に増大した多量のデータから有用な情報を抽出し、分かりやすくまとめ上げ見える化を行うなど、統計的なものの考え方や統計分析の必要性が高まっています。統計データを効率的に収集し、有用な統計情報を抽出し、それに基づいて科学的な意思決定を行うことは、民間、公務を問わずあらゆる分野において必要不可欠なものとなっています。
また、公的統計は、政策判断や評価のための基礎的情報にとどまらず、国民生活や企業活動などの様々な場面での意思決定に不可欠な「社会の情報基盤」として、重要な役割を担っています。世界的金融経済危機、自然災害等、変動の激しい現代社会において、東日本大震災からの復興、デフレ対策などの重要な課題に直面する今、公的統計に対する社会の期待がますます高まっています。このような社会からの期待・要請に対応するために、公的統計を整備し、活用できる人材(statistician)の育成は、国・地方における喫緊の課題であります。
さらに、教育分野においても、「課題発見・解決能力」の重要性がうたわれており、そのための統計教育がクローズアップされつつあります。実際、平成22年度から実施されている学習指導要領においては、小学校では“数量関係”の項目の中で、中学校では“資料の活用”の項目の中で、統計の学習を行うことが規定されており、高等学校では必修科目の「数学I」に“データの分析”が規定されるなど、統計教育の強化が図られています。小・中・高等学校で統計教育が拡充されるのに合わせて、それを担う公立学校教員も統計研修所に積極的に受け入れることとしています。
今後とも、ニーズに合った研修カリキュラム、研修形態などの改善、拡充に努力してまいりますので、各機関におかれましても、一人でも多くの職員を統計研修所に派遣していただき、職員の統計能力の向上に役立てていただければ幸いです。
統計調査ニュース 平成25年2月号より
(2013.02.20掲載)