ここから本文です。
リサーチペーパー 第24号
タイトル
『労働力調査』を用いた離職者の再就職行動に関する実証的研究
著者 (原稿執筆時の所属)
永瀬 伸子 (お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授)
縄田 和満 (東京大学大学院工学系研究科教授)
水落 正明 (三重大学人文学部准教授)
刊行年月
2011年1月
要旨
本稿では、分析Iにおいて2002年1月から2008年12月までの『労働力調査』特定調査票の個票データを用いて、男女の過去3年の離職から就職までの生存時間分析を行った。 主に以下のことが分かった。@2002から2008年の県別有効求人倍率に表わされる労働需給の効果について、仕事探しの期間に応じて説明変数が変化する推計方法を用いた場合、女性については、有効求人倍率が高いほど就職ハザードが上がりサーチが短期になるが、男性については、逆に就職ハザードは下がり、より時間をかけてジョブ・サーチをする効果が見出された。A学歴の効果も性で異なり、男性及び無配偶女性については就職ハザードを引き上げるが、有配偶女性では非有意か負であった。B男性は家族がいること、無配偶女性は一人暮らしであること、有配偶女性は子ども年齢が高いことが、就職ハザードを引き上げる。C前職が派遣やその他雇用である離職者は、パート・アルバイトに比べて就職ハザードが高い。また前職正社員の効果は、男性高卒者の就職ハザードを上げる効果を持つが、男性大卒者のサーチ期間は長期化させる。
また分析Uにおいては、同じ変数を用い、Cox比例ハザードモデルによる1988年から2008年を対象とした離職から就職、あるいは正社員就職の生存時間分析を行った。データは2001年までは2月実施の『労働力特別調査』を用い、その後は『労働力調査』特定調査票2月につなげた。男性の再就職ハザードがどの年齢層でも1990年代に比べて2000年代で落ちていること、特に高卒男性では、2003年がボトムで若干その後に改善傾向が見られるが、「正社員就職」に限定すれば、2000年代に何ら改善が見られなかったこと、有配偶女性は30歳代に同様の傾向が見られるが、全般には男性ほど離職から再就職にかかる期間の長期化が起きていないことが示された。なお就職した月の有効求人倍率の効果は、全時期を通じれば男女ともに有意に正であった。しかし2004-2008年を取り出すと、男性は有意負、女性は非有意に負であることが示されている。
キーワード:ジョブ・サーチ理論、失業、非自発的失業、有効求人倍率、地域、サバイバ