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統計Today No.119
最近の研究者数の国際比較と企業の研究者数の動向
総務省統計局統計調査部 経済統計課元主任研究官 齋藤 敏雄
(共同執筆者)
同課科学・研究担当課長補佐 齊藤 宣哉
平成28年科学技術研究調査の結果から、最近の研究者数の国際比較と企業の研究者数の動向について御紹介します。
平成28(2016)年の日本の研究者数は84万7100人で、同じく10年前の平成18(2006)年の研究者数81万9900人と比較すると、2万7200人(3.3%)増加しています。
日本の科学技術研究を10年前と比較すると、テレビ、パソコン、スマートフォン、自動車等の身近な製品において、より高性能で省エネルギーのものが続々と発売されていることからも、日本の科学技術は進歩し続けている印象を受けるのではないかと思います。
では、こうした日本の科学技術研究を担っている研究者数は、外国と比較するとどのくらいの位置にいるのか見てみましょう。
我が国の研究者数は、主要国中第3位
研究者数の把握方法は、国により異なることから単純な比較は、非常に困難です。しかし、国際比較に関しては、OECD(経済協力開発機構)が科学技術研究関連の様々なデータをまとめているデータベースである「Main Science and Technology Indicators」において採用されている専従換算値にすることで、国際比較ができるようになります。
この専従換算に基づき、各国のデータがそろう平成25(2013)年度で研究者数をみると、日本の研究者数は66万2000人で、中国、アメリカに次いで第3位となっています。
日本の研究者数は、ここ数年、横ばいとなっていますが、一方で中国の伸びは大きくなっており、中国の国際比較が可能となった平成21(2009)年度以降でみると、平成22(2010)年度から中国がアメリカを抜いて第1位となり、中国の躍進がめざましいものとなっています。(図1)
※「専従換算値」について
研究に従事している実働時間で研究者数等を換算した値のことで、例えば、総実働時間のうち研究に専念している割合が40%の場合、研究者であれば0.4人として集計します。
図1 G8、中国及び韓国の研究者数(専従換算値)の推移
(資料)日本以外は、OECD「Main Science and Technology Indicators」
企業の研究者数は、情報通信機械器具や自動車・同附属品関連の製造業で多い
次に、我が国の研究者数について研究主体別にみると、企業が48万6200人(研究者数全体に占める割合57.4%)、大学等が32万2100人(同38.0%)、非営利団体・公的機関が3万8800人(同4.6%)と、企業が約6割を占め、我が国の研究は企業が重要な牽(けん)引力を担っています。
企業の研究者数を産業別にみると、「製造業」が42万8700人(企業の研究者全体に占める割合88.2%)と最も多くなっています。その「製造業」の中では、テレビ、パソコン、携帯電話等の「情報通信機械器具製造業」の研究者数が、7万8100人(同16.1%)と最も多くなっています。ただし、同産業の研究者数の増減数の推移をみると、平成25年以降減少に転じ、特に28年は9600人(11.0%)と大幅な減少となっています。(図2)
図2 主な産業別研究者数の推移(製造業及び上位3産業)
また、「製造業」の中で、「情報通信機械器具製造業」に次いで、研究者が多いのは、「自動車・同附属品製造業」で7万4100人(同15.2%)となっています。同様に、研究者数の増減数の推移をみると、平成27年は1万3300人(22.1%)の増加、28年は800人(1.1%)の増加だったことから、増加幅が大幅に縮少しているものの、自動車の自動運転等の研究が非常に盛んで、最近は増加傾向となっています。(図2)
研究者の業務が多様化、兼務者がますます増加
次に企業の研究者数について、「専ら研究に従事する者」と「研究を兼務する者」の別に見てみます。
専ら研究に従事する者は44万8300人(企業の研究者数に占める割合92.2%)で、前年と比較すると2万4700人 (5.2%)の減少となっています。研究者に占める割合も1.2ポイント低下しています。
一方、兼務者(「研究者のうち、他の業務を兼務する者」をいう。)は3万7900人(企業の研究者数に占める割合7.8%)で、4700人(14.2%)の増加となっています。研究者に占める割合も1.2ポイント上昇しています。時系列で見ても、兼務者数が増加傾向であり、研究者の業務の多様化の現れと考えられます。(図3)
図3 企業の「専ら研究に従事する者」、「兼務者」数の推移
先ほどの「情報通信機械器具製造業」の研究者数について、職種別にみると、専ら研究に従事する者は7万6100人で、前年と比較すると1万100人(11.7%)減少し、研究者に占める割合も0.7ポイント低下しています。
一方、兼務者は2000人で、400人(25.0%)増加し、研究者に占める割合も0.7ポイント上昇しています。
さらに、「自動車・同附属品製造業」の研究者数について、職種別にみると、専ら研究に従事する者は7万200人で、前年と比較すると300人(0.4%)減少し、研究者に占める割合も1.4ポイント低下しています。
一方、兼務者は3900人で、1100人(38.0% )増加し、研究者に占める割合も1.4ポイント上昇しています。(図4)
図4 企業の「専ら研究に従事する者」、「兼務者」数の推移(上位2産業)
以上のことから、我が国の「製造業」の主要産業である「情報通信機械器具製造業」及び「自動車・同附属品製造業」においても、兼務者数が増加傾向であり、研究者の業務の多様化の現れがみられます。
ここまで御紹介したのは科学技術研究調査結果のごく一部ですので、是非詳細な調査結果を御覧ください。(http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/index.htm)
今回、科学技術研究調査の結果から、最近の企業における研究費及び研究者数の動向を見てみました。このように、科学技術研究調査を利用して、企業における研究活動について詳細に分析することで、最近の動向を把握するヒントが得られるかもしれません。引き続き科学技術研究調査への御理解と御協力をよろしくお願いします。
(平成29年4月5日)