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統計Today No.93
世界に羽ばたく日本の統計技術
総務省統計局総務課長 井上 卓
総務省統計局は、統計に関する様々な国際会議を開催し、また、各国で開催される国際会議に参加することで、国際的な統計技術の議論に積極的に参画するとともに、二国間交流やODA(政府開発援助)、開発途上国からの専門家や研修生の受入れを通じ、各国の統計技術の向上に貢献しています。
2014年度の主要な国際交流について御説明します。特に大きな取組としては、11月5日〜7日に東京で開催した第27回人口センサス会議と、ベトナム統計総局との間の協力の覚書の締結が挙げられます。
第27回人口センサス会議
人口センサスは日本語で言うと国勢調査に当たる、各国でも最も重視される統計調査です。2015年は日本でも国勢調査が行われます。その意味で、タイムリーな開催であったということができます。
この会議には、アメリカを始めとする18か国と4つの国際機関等から約60名が参加しました。
会議では、「2010年ラウンドセンサスの評価と次回ラウンドセンサスの計画」をテーマに、8つのセッションが設けられ、延べ22か国が自らの取組について発表し、熱心な討議が行われました。
(画像をクリックすると拡大します。)
[各セッションにおける発表内容]
セッション1 フランク・ヴィトラノANCSDAAP※会長講演 ※ANCSDAAP:Association of National Census and Statistics Directors of America, Asia and the Pacific (アメリカ・アジア・太平洋統計局長会議) |
セッション2 「2010年ラウンドセンサスの概観及び経験(1)」 カンボジア -カンボジアにおける最新の2008年センサスから学んだ教訓 日本 -2010年国勢調査の概要 中国 -中国における2010年人口センサス |
セッション3 「2010年ラウンドセンサスの概観及び経験(2)」 バングラデシュ -バングラデシュにおける2011年人口・住宅センサスの経験 ミャンマー -ミャンマーにおける2014年人口・住宅センサス ラオス -ラオスにおける2015年人口・住宅センサス ベトナム -2014年中間人口調査の報告 |
セッション4 「センサス結果の分析」 インド -センサス結果の分析 日本 -小地域集計を使用した人口動態の時空間解析 フィジー -より低い地理的レベルでの貧困の推計を行うためのセンサスデータの利用 |
セッション5 「データ収集及び処理」 アメリカ -センサス・ミクロデータの品質計測のための一貫性: IPUMS-Internationalの経験 アメリカ -最新版CSPro(センサス及び調査処理システム)について シンガポール -2010年センサスにおける多重モード収集の実施及び将来への可能性 |
セッション6 「次回ラウンドセンサスに向けた計画」 モンゴル -モンゴル国における2015年中間年センサスに向けた計画及び準備 イラン -イランにおける2016年人口・住宅センサス 香港 -香港における2016年中間年人口センサスの計画 ブータン -人口・住宅センサスの準備―調査区の画定 |
セッション7 「センサスの新たな実施方法」 韓国 -韓国におけるレジスターベースセンサスの準備 タイ -レジスターベースの人口センサス: タイの潜在力に関する研究 |
セッション8 「次回ラウンドセンサスに向けた新技術」 日本 -2015年国勢調査の実施に向けて オーストラリア -実査における携帯端末使用-2016年オーストラリアセンサス計画 アメリカ -アメリカセンサス局による2020年フィールドワーク改善計画 |
(第27回人口センサス会議の開催)
http://www.stat.go.jp/info/meetings/census27.htm
ベトナム統計総局との協力の覚書の締結
2015年1月14日、ベトナムのグエン・ビック・ラム統計総局長が総務省統計局を訪れ、総務省統計局長との間で、協力の覚書を交わしました。
総務省統計局はこれまでも、ベトナムから多くの研修生、訪日調査団を受け入れてきました。1996年以降に限っても、26回にわたり約90人の研修生、訪日調査団を受け入れ、日本の統計制度、統計局の業務、個別の調査の方法等について意見交換をしてきました。
これまでの両国の友好の歴史を踏まえつつ、2015年度以降は、この覚書にのっとり、より緊密に協力を図っていく予定です。
[協力の覚書(抄)]
1 目的 統計分野及び相互に関心のあるほかの関連分野における両機関の緊密な協力の基盤を確立することを目的とする。 2 協力方法 (a) 下記の方法を含む様々な形式で行われる。
(b) 両機関は下記の分野を始めとする相互に関心のある分野での連携を促進し、強化することを決意する。
(c) 協力する分野や詳細な活動については、両機関のそれぞれの能力と関心に応じて、年ごとに、同意の上決定する。 |
(ベトナム統計総局との協力の覚書の署名(2015年1月))
http://www.stat.go.jp/info/meetings/receiving/vietnam2014.htm
本年度主催国際会議
2015年5月19日〜22日に千葉県(舞浜)にて第14回オタワグループ会合を開催するための準備を進めているところです。オタワグループ会合は、各国の政府統計関係者が、消費者物価指数等の物価の変動を計測する統計において、概念、定義の確立と情報交換を目的に2年に1回開催される会議で、国際連合関連各種専門家会合の一つです。
この会議を日本で開催するのは、今回が初めてとなります。
2014年度のその他の主な国際交流
項目 | 内容 |
---|---|
統計技術支援(ODA) | 【カンボジア】 2005年から、JICA((独)国際協力機構)を通じて「カンボジア政府統計能力向上計画」プロジェクトを実施しています。統計局では、カンボジア計画省統計局(NIS)、地方統計職員及び各省庁統計職員を対象とした、統計能力の向上のための支援や、2008年人口センサス(国勢調査)、2009年全国事業所リスティング、2011年経済センサス(事業所の国勢調査)等に対する技術協力の支援を行ってきました。 2014年度には、統計局職員を4回にわたって短期派遣し、2014年中間年経済調査に対する技術支援等を行っています。 【エジプト】 2015年1月、JICAによるエジプト・アラブ共和国「中央動員統計局における統計情報の質向上プロジェクトに関する情報収集調査」調査団に、統計局職員を派遣し、技術協力に関する情報の収集・整理を行いました。 |
二国間交流 | 【中国】 1980年以降、相互に職員の派遣・受入れを行う交流を毎年行っています。また、この交流を通じて、中国の統計職員を統計研修所の研修生として受け入れてきました。 2014年度は、11月17日〜22日の日程で、盛 来運 中国国家統計局綜合司司長を団長とする第29回中国統計視察団が来日しました。視察団は統計局のデータ公表、世論のモニタリング、より良い公表・解釈のためのITの利用法、統計データベースの維持管理等について意見交換を行いました。また、視察団は兵庫県庁を訪問し、地方における統計活動について意見交換を行いました。 【韓国】 1982年以降、相互に職員の派遣・受入れを行う交流を毎年行っています。また、この交流を通じて、韓国統計庁職員を統計研修所の研修課程の聴講生や、韓国統計庁の上級職員を研究員として受け入れてきました。 2014年度は、11月3日〜8日の日程で、統計局及び統計センターから4名が、韓国統計庁及び東南地方統計庁を訪問し、人口センサス等統計調査における最近の取組、統計分類(特に生産物分類、産業分類)、最近の製表業務への取組、地方における統計活動について意見交換を行いました。 【ベトナム】 2015年1月に協力の覚書の締結を行い、相互協力を行うこととなりました。(詳細は、上述のとおり) |
各国統計関係者の訪問受入れ | 統計技術に関する意見交換及び研修を目的とした各国政府統計職員の訪問を受け入れています。来訪者との交流を通じて、各国の実情の把握、我が国の統計制度への理解向上を図っています。 2014年度は、約30か国、約70名の各国政府統計職員が来局しました。 【アフガニスタン】 2014年8月4日〜6日には、アフガニスタン中央統計局からシャー・モハメッド・ジャミサダ局長を始めとする3名が、我が国における国勢調査や、統計制度の仕組み等について情報収集を行うため来局し、統計局から国勢調査の概要、地理情報システム、統計におけるオープンデータの高度化、人口動態統計等について説明を行いました。 【モンゴル】 2006年から毎年、モンゴル国家統計局職員が、情報収集・意見交換のため来局しています。2014年12月16日及び18日に、デュガスーレン・オルホン県統計課長を始め3名が来局し、日本の統計制度等について、情報収集・意見交換を行いました。 【JICAや国際機関の研修員】 2014年4月には、JICAの研修員、2014年6月、10月及び2015年3月には、国連アジア太平洋統計研修所の研修員が来局し、統計局から業務説明等を行いました。 (2014年度に職員等が統計局へ来局した国等:アフガニスタン、イタリア、イラン、インドネシア、ガーナ、カメルーン、クック諸島、コソボ、コロンビア、スリランカ、タイ、トンガ、ナイジェリア、ニウエ、ネパール、パプアニューギニア、バングラデシュ、東ティモール、フィジー、ブータン、ベトナム、マケドニア旧ユーゴスラビア 、南スーダン、ミャンマー、モンゴル、ラオス、ルワンダ、レソト) |
統計局の主な技術協力・相互交流の実績(イメージ図)(PDF:1,153KB)
(詳しくは画像をクリックしてください。)
おわりに
統計局は、1871年に創設され、140年を越える歴史を有し、統計行政を通じ日本の近代化に大きく貢献してまいりました。その経験と実績を生かし、従来から開発途上国への技術協力や、各国との統計に関する情報交換・意見交換など、国際交流に力を注いでまいりました。世界有数の政府統計機関として、世界の統計の発展にも積極的に貢献していきたいと考えております。
(平成27年4月17日)