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統計Today No.50
カンボジアの経済発展を支える統計 − 2011年経済センサス結果の公表
総務省統計局総務課長 會田 雅人
2012年3月13日,カンボジア政府は,2011年3月に実施した経済センサスの最終結果を公表しました。この経済センサスは,カンボジア史上初めてのものであり,同国政府はこれを記念して,首都プノンペンの首相府のホールでセレモニーを開催し,その場を通じて結果を公表しました。総務省統計局では,2005年以来,カンボジア政府の統計能力向上を支援するJICAプロジェクトを通じて,カンボジアの国勢調査,経済センサスを支援してきました。このセレモニーでは,これまでのプロジェクトへの貢献から,川崎茂前統計局長,総務省統計研修所の西文彦教官始め4人の日本人に勲章が授与されました。以下,セレモニーの出席者からの報告に基づき,その概要を紹介します。
このセレモニーは,当初からフン・セン首相の主宰で準備が進められていたとのことですが,首相に緊急の日程が入ったため,ケアッ・チョン副首相が代理を務めました。セレモニーは,各国大使、各省幹部を含む内外の要人約600人が招待され,外国人向けにはクメール語・英語の同時通訳が用意されるなど,大変盛大なものだったとのことです。
セレモニーでは,最初に,統計行政の担当大臣であるチャイ・タン計画大臣から,開会の辞が述べられ,経済センサスの企画,実施,結果の集計・分析までの一連の経緯が紹介されました。また,日本政府とJICAが2005年からカンボジアの統計改善支援のための国際協力プロジェクトを行っており,その一環としてこの経済センサスへの支援が行われていることに触れ,日本政府に対し深い感謝の意が表されました。
次に,ケアッ・チョン副首相から挨拶がありました。副首相は,この度の経済センサスがカンボジア史上初めての画期的なものであり,この調査結果が今後の国の計画作りに役立てられるとともに,海外からの投資を呼び込むなど経済の活性化にも役立つ意義深いものであることを述べ,調査の関係者に謝意を表されました。
続いて,在カンボジア日本大使館の河村公使から,カンボジア政府が経済センサスを成功裏に実施し,結果を順調に公表する運びとなったことに対してお祝いの言葉がありました。同公使は,統計の整備はカンボジアの社会経済の発展にとって重要であること,経済センサスを始め統計に対する日本政府からの支援がカンボジアの今後の発展と両国の更なる友好関係の強化に役立つことを願っていることなどを述べました。
その後,ケアッ・チョン副首相自らが,経済センサスの調査結果について発表を行い,次のような点が紹介されました。カンボジアには約50万の事業所があり,そのうち従業者1人のものが約22万,2人のものが約17万と,小規模なものが圧倒的多数を占めています。逆に,大規模な事業所としては,100人以上のものは僅か787,そのうち1,000人以上のものは119とごく少数となっています。代表者がカンボジア人である事業所の割合は98.9%,また,女性である割合は65.1%でした。このほか,年間の売上高の(単純)合計は約1.2億ドル,1事業所当たりの平均は約20万ドルとなっています。これらの統計数字は,これまでカンボジアにはなかった,まさに初公開のものであり,カンボジア国内でもニュース報道を通じて注目を集めたとのことでした。
セレモニーの最後に,関係者の表彰が行われました。まず,経済センサスの指揮に当たったサンシータン統計局長を始め,カンボジア計画省統計局の幹部にシハモニ・カンボジア国王からの勲章が授与されました。続いて外国人の叙勲として,最初にポール・チョン国連統計部長に勲章が贈られた後,日本のプロジェクト関係者のうち4名にも勲章が贈られました。日本側で受章したのは,この官民合同のプロジェクトで一貫してチーフアドバイザーを務めてきた統計研修所の西文彦教官,プロジェクトの創設及び基礎作りに貢献した川崎茂前統計局長,民間機関側の総括責任者の伊藤彰彦氏,経済センサスを主として指導した石田保夫氏でした。以上がセレモニーの紹介です。
プロジェクト関係者に贈られた勲章
カンボジア政府が日本の関係者に対してこのような表彰を行ったことは,このプロジェクトに対する高い評価の表れであり,個人に対するものであると同時に,日本政府と日本国民に対して感謝の意を表したものとして意義深いものと思います。
開発途上国に対する統計の国際協力プロジェクトは,相手国の政治・行政の基準となる統計の整備を進めることを通じて,その国の効率的かつ公平な政治・行政や経済発展に貢献するものであると思います。特にカンボジアでは,1990年代初頭まで続いた内戦により,行政機能は破壊され,公的統計が欠落した時期が長く続いていたため,カンボジア政府の統計能力を回復・向上させることは,国造りに欠かせない重要課題とされていました。この度のプロジェクトを通じて,日本がカンボジアの国造りの一端に寄与することができたことは喜ばしいことだと思います。
このプロジェクトは,この後約3年続く計画であり,業務の内容は,経済センサスの結果の活用,センサス以外の年における標本人口調査の企画など,よりきめ細かな統計業務に進んでいきます。この事業を通じて,カンボジア政府が自力で統計を整備する能力を獲得し,統計が同国の発展を支えるとともに,日本とカンボジアの信頼と友好の関係が強化されることを願っています。
開発途上国には自力で統計を整備する能力が不十分な国がまだ多くみられます。相手国の条件が整うならば,カンボジアと同様に他の国においても統計に対する支援が更に展開されることを期待しています。
カンボジアの経済センサスの結果に関するより詳しい情報については,こちらを御覧ください。
(平成24年4月6日)