近代日本を築いた統計
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ふうむわかった雑誌でこの手紙に回答しましょう森先生、…というわけなんですが…やれやれ「『医学統計論』の序文で、スタチスチックに触れず、統計という語を用いているのはどういうわけか? なぜスタチスチックと言わない    のか」だと?匿名の手紙か何だろうエステルレン著、呉くれ秀しゅう三ぞう訳の『医学統計論』ですね序文を書きますよ杉亨二らがおこした表記学社は、このころ、スタチスチック社と名乗っていた。杉の弟子にあたる今いま井い武たけ夫おは、森の回答をスタチスチック社への攻撃と受け止めた。私は、『医学統計論』の序文を呉秀三くんに書いてほしいと頼まれたから書いたに過ぎない。だが、「統計」という語がよくないと思えば使わなかっただろう。「統計」は、「物を計り之これを統すべる」という意味を持つのであるから。「スタチスチック」の訳語として悪くはない。「スタチスチック」をそのまま使うべしとは愚劣な考えだ。しばらくして編集部に手紙が届く。「統計」を巡る訳字論争が起こったのは、1889(明治22)年のことだった。なんだ、この言いようは!森林太郎が、呉秀三から依頼されて『医学統計論』に序文を書き、刊行される。34

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