Japan Statistical Yearbook 2023
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第17章 環境 398 17 環境 この章は、温室効果ガス、廃棄物処理、大気汚染、水環境及び公害に関する統計を掲載している。 環境 経済協力開発機構(OECD)や国連持続可能な開発委員会(UNCSD)等において環境指標の検討が進められ、OECDが開発した下記の「PSRモデル」は、他の国際機関や各国等が環境指標を開発する際の基礎として広く用いられている。環境省が環境に関する幅広いデータを取りまとめ平成14年から刊行している「環境統計集」も主にそれを踏まえたものとなっている。 PSRモデル OECDでは、環境情報を体系的に整理し、指標化していくための概念的枠組として、「PSRモデル」が開発されている。これは、人間活動と環境の関係を「環境への負荷(pressure)」、「それによる環境の状態(state)」、「これに対する社会的な対策(response)」という一連の流れ(PSR)の中で包括的に捉えようとするものである。このPSRモデルに基づき、OECDでは、「コアセット指標」、「部門別環境指標」及び「デカップリング環境指標」などの指標群が作成され、人間活動と環境との関係性などの把握に用いられている。 PSRモデルの各要素は次のとおりとなっている。 <1> 環境への負荷(pressure) 環境への負荷を表す指標は、天然資源を含めた環境への人間の活動による負荷を表す。ここでいう「負荷」とは、直接的負荷(資源利用、汚染物や廃棄物の排出等)と同様に潜在的あるいは間接的な負荷(活動そのものや環境の変動傾向等)を網羅している。 <2> 環境の状態(state) 環境の状態を表す指標は、環境の質及び天然資源の質と量に関係し、環境政策の究極的目的を反映する。さらに環境の状態の指標は、環境の全体的な状況と時間の経過に伴う変化を示すよう策定されている。例としては、汚染物の濃度、野生生物及び天然資源の現状等がある。 <3> 社会による対応(response) 社会による対策を表す指標は、社会が環境面の課題事項に対策する程度を示す。例としては、環境への支出、環境に関する税及び補助金、廃棄物のリサイクル率等が挙げられる。 温室効果ガスの排出量 環境省が行政資料として取りまとめている「温室効果ガス排出量」による。18世紀半ばの産業革命の開始以降、人間活動による化石燃料の使用や森林の減少などにより、大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン類等)の濃度は急激に上昇した。この急激に増加した温室効果ガスにより、大気の温室効果が強まったことが、地球温暖化の原因と考えられている。我が国が排出する温室効果ガスのうち、二酸化炭素の排出が全体の約91%(令和2年度)を占めている。平成4年5月に大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを究極的な目的とした国連気候変動枠組条約が採択され、6年3月に同条約は発効した。9年12月、京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、京都議定書が採択され、17年2月に発効した。本議定書では先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数量化された約束を設定するとともに、約束達成のための国際的仕組みを導入することなどが規定された。さらに、27年12月にフランス・パリで開催されたCOP21において、気候変動に関する2020年以降の新たな国際枠組みである「パリ協定」(Paris Agreement)が採択され、28年11月に発効した。パリ協定には、世界共通の長期目標として「2℃目標」(世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること)の設定等が位置づけられた。 令和3年10月から11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26ではパリ協定第6条に基づく市場メカニズムの実施指針等の重要議題で合意に至り、パリルールブックが完成した。

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