第75回 日本統計年鑑
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118 4 通貨・資金循環通貨流通高 通貨流通高は、日本銀行から市中に払い出された通貨の総量で、日本銀行券の発行高と貨幣の流通高を合計したものである。 資金循環 資金循環統計 資金循環統計は、我が国における金融機関、法人、家計といった各部門の金融資産・負債の推移などを、預金や貸出といった金融商品ごとに記録した統計であり、日本銀行が公表している。統計の公表は四半期を一つの期間とし、当該四半期の約3か月後に速報が、約6か月後に確報が公表されている。また、原則として年1回、計数の遡及改定を実施しており、本章では年度計数について掲載している。 資金循環統計では、資金の動きを各経済主体を列、金融資産・負債を行とする表(マトリックス)上に展開して示している。 マトリックスは、3種類の表で成り立っている。ある期間の資金の流れについて、経済主体別に金融取引によって生じた資産・負債の増減を記録したものを「金融取引表」(フロー表)と呼んでいる。このフロー表により、ある期間の経済主体の資金調達や運用の動きが分かる。 これに対し、取引の結果として保有される資産・負債の残高を経済主体別に示したマトリックスを、「金融資産・負債残高表」(ストック表)と呼んでいる。ストック表は、フローの取引の累積になるが、実際の統計では、期末時点での残高を原則として時価評価した上で記録している。 したがって、株式や債券などについては、期中に価格変化が生じると、期初と期末のストック表の差額が、この間のフローの金額に一致しないことになる。そこで、これら二つのマトリックスの乖離分を記録した「調整表」を設けている。「調整表」には、フロー表とストック表との間の計数を整合させるための調整額という側面があるが、この表は、価格変化などによって生じたある期間の金融資産の保有損益の推定にも利用することができる。 資金循環統計では、各マトリックスにおいて、経済主体を分類した列の項目を「部門」と呼んでいる。ここでは、大きく金融機関、非金融法人企業、一般政府、家計、対家計民間非営利団体、海外に分けており、さらにその内訳部門を設けている。 一方、金融商品(取引あるいは資産・負債の内容)を分類した行の項目は、「取引項目」と呼ばれ、現金・預金、貸出、債務証券、株式等・投資信託受益証券、保険・年金・定型保証などがある。これについても、さらに、預金や証券の種類に応じた内訳項目を設けている。 これらの部門、取引項目は、法的な制度や従来の慣行にとらわれることなく、経済機能や実態を重視した分類となっている。 個別計数の推計に当たっては日本銀行作成の「資金循環統計の作成方法」を基礎にしている。 本章の用語については、用語の解説を参照

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