この章は、国民経済計算、県民経済計算及び産業連関表に関する統計を掲載している。 国民経済計算(基幹統計) 国民経済計算は、我が国の経済の全体像を国際比較可能な形で体系的に記録することを目的とし、国際連合で採択された国際基準(SNA)に準拠しつつ、国民経済計算の作成基準及び作成方法に基づき内閣府経済社会総合研究所が作成している。 我が国の国民経済計算(日本のSNAと言う意味でJSNAと呼ぶ。)が準拠してきた国際基準は、平成12年以降、1993SNA(平成5年(1993年)に国際連合で採択)であったが、28年に約16年ぶりに最新の国際基準である2008SNA(平成21年(2009年)に国際連合で採択)へと移行した。 2008SNAは、1993SNAに立脚した上で、各種の概念・記録方法の明確化とともに、従来の無形固定資産に「研究・開発(R&D)」を含む範囲に拡張した「知的財産生産物」の導入、「雇用者ストックオプション」の雇用者報酬や金融資産への記録、雇用関係をベースとした年金制度に係る発生主義に基づく記録の徹底等が盛り込まれた(1993SNAからの変更・明確化事項は60超に上る。)。 令和2年には最新の産業連関表である「平成27年産業連関表」を取り込んだ「平成27年基準改定」が実施され、2008SNAへの対応として残っていた課題として、「公的統計の整備に関する基本的な計画(令和2年6月2日閣議決定)」も踏まえ、娯楽作品原本の資本化等の対応が行われた。 国民経済計算の推計には、四半期別GDP速報(QE)及び国民経済計算年次推計がある。国民経済計算年次推計は、毎年、最新年(度)の数値が第一次年次推計として公表されるが、その後も新たに利用可能となった基礎統計を反映させるため、1年遡って再推計を行い、第二次年次推計として、さらに、2年遡った年の計数について、供給・使用表(SUT)の枠組みを活用して統計上の不突合を縮減させるための再推計を行い、第三次年次推計として公表される。 また、産業連関表や国勢統計など、約5年に一度作成・公表される詳細かつ大規模な基礎統計を取り込み、過去の計数全体を再推計・改定する基準改定が約5年おきの周期で実施される。 2008SNAに基づく国民経済計算は、1993SNA同様、フロー編とストック編とに大別され、更に勘定(統合及び制度部門別)、主要系列表(フロー)、付表及び参考表(ストック)に区分され表章されている。 勘定体系 統合勘定は、我が国全体の経済循環を総括した基本表である。フローの統合勘定は、モノ(財貨・サービス)の取引とカネ(所得及び金融資産・負債)の流れの結果を記録するものであって、一定期間における一国の経済活動の結果を総括したものである。勘定表には、国内総生産勘定、国民可処分所得と使用勘定、資本勘定・金融勘定及び海外勘定がある。一方、ストックの統合勘定は、国民経済全体の資産・負債の一時点の量を表す勘定である。期首貸借対照表勘定に、期中の資本取引を表す資本勘定・金融勘定及び価格変化による再評価等を表す調整勘定を加えると、期末貸借対照表勘定に一致する。 制度部門別分類は、所得の受取や処分、資金の調達や資産の運用についての意思決定を行う主体の分類で、非金融法人企業、金融機関、一般政府、家計(個人企業を含む)及び対家計民間非営利団体をいう。なお、財貨・サービスの生産についての意思決定を行う主体の分類としては、経済活動別分類がある。 国内総生産(GDP) 国内総生産(支出側)は、国内総生産に対する支出であり、国内の生産活動によって生み出された財貨・サービス(付加価値)が、輸出入を含めて、どのように消費、投資されたかを、最終需要面からとらえたものである。一方、国内総生産(生産側)は、国内の生産活動による財貨・サービスの産出から原材料などの中間投入を控除した付加価値の総計である。したがって、国内総生産(生産側)と国内総生産(支出側)は、理論上は一致すべきものであるが、統計上は両者における推計方法や基礎資料の差84 3 国民経済計算 第3章 国民経済計算
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