第71回 日本統計年鑑
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第23章 社会保障 この章は,社会保障費用,社会保険及び社会福祉で構成されている。 社会保障費用には,社会保障給付費,社会支出及び社会保障財源に関する統計を掲載している。 社会保険には,医療保険,年金保険,雇用保険,介護保険及び労働者災害補償保険に関する統計を掲載している。 社会福祉には,社会福祉行政業務,高齢者保健(医療)福祉,福祉サービス,生活保護及び社会福祉施設に関する統計を掲載している。 なお,公衆衛生及び医療は「第24章 保健衛生」,労働災害は「第29章 災害・事故」を参照のこと。 社会保障費用統計(基幹統計) 社会保障費用統計は,国際機関が定める費用統計であるILO(国際労働機関) 基準の社会保障給付費及びOECD(経済協力開発機構)基準の社会支出を総称したもので,国立社会保障・人口問題研究所が取りまとめている。 社会保障給付費 社会保障給付費は,ILOが国際比較上定めた基準に基づき,国内の社会保障各制度の給付費について,毎年度の決算等を基に推計したものである。下記のILOの基準に従えば,国内の社会保障の制度として,社会保険制度(雇用保険や労働者災害補償保険を含む),家族手当制度,公務員に対する特別制度,公衆衛生サービス,公的扶助,社会福祉制度,戦争犠牲者に対する給付などが含まれる。 ILOでは,以下の3基準を満たすものを社会保障制度と定義している。 <1> 制度の目的が,次のリスクやニーズのいずれかに対する給付を提供するもの。 (1) 高齢 (2)遺族 (3)障害 (4)労働災害 (5)保健医療 (6)家族 (7)失業 (8)住宅 (9)生活保護その他 <2> 制度が法律によって定められ,それによって特定の権利が付与され,あるいは公的,準公的又は独立の機関によって責任が課せられるものであること。 <3> 制度が法律によって定められた公的,準公的又は独立の機関によって管理されていること。あるいは法的に定められた責務の実行を委任された民間の機関であること。 社会支出 OECD基準の社会支出の範囲は,人々の厚生水準が極端に低下した場合にそれを補うために個人や世帯に対して財政支援や給付をする公的あるいは私的供給とされている。ただし,制度による支出のみとし,人々の直接の財やサービスの購入,個人単位の契約や世帯間の助け合いなどの移転は含まない。 当該制度が「社会的」と判断することが含まれる条件は,その給付に一つ又は複数の社会的目的(政策9分野:「高齢」,「遺族」,「障害・業務災害・傷病」,「保健」,「家族」,「積極的労働市場政策」,「失業」,「住宅」,「他の政策分野」)があり,制度が個人間の所得再分配に寄与しているか,又は公的な強制力をもってその制度が存在しているかである。 「社会保障給付費」に比べて,その範囲が広く,施設整備費など直接個人には移転されない費用も計上されるという違いがある。社会保障費用を諸外国と比較するという観点から,重要な指標となる。 社会保険 社会保険は,日本の社会保障制度の中心であり,医療保険,年金保険,雇用保険,介護保険,労働者災害補償保険からなる。保険の仕組みを利用し,加入者である国民が支払う保険料を財源として,病気や失業などのリスクに備える「共助」の仕組みである。 保険者(保険を運営する者)は,国,地方自治体あるいは公的な団体である。被保険者(加入者)については,一定の要件に該当した者は全て強制的に加入する義務を課される。 医療保険 疾病,負傷,死亡,出産などの短期的な経済的損失について保険給付する制度である。医療保険には,職域・地域,年齢に応じて次の種類がある。 538 23 社会保障

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